Google Apps移行記 知的生産性はどうなった?最強フレームワーカーへの道

個人ではGoogleやTwitterなど今どきのサービスを使ったとしても、会社という組織の中では従来型の社内システムを使わざるを得ない。筆者の会社もそうだったのだが、今回全面的にGoogle Appsへ移行した。システムの移行で感じた日米における働き方の違いについて紹介しよう。

» 2010年04月12日 18時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]
定番グループウェア「desknet's」のスケジュール画面

 個人ではGoogleやTwitterなど今どきのサービスを使ったとしても、会社という組織の中では従来型の社内システムを使わざるを得ないケースというものは多いはずだ。かくいうわが社も、長らく某大手プロバイダのメールサービスと「desknet's」という国内ではポピュラーなグループウェアを使ってきた。


従来型のグループウェアからGoogleAppsへ

 しかし、今年の4月に全面的にGoogle Appsへ移行。Googleの個人向けサービスに比べて、情報の少ないGoogle Appsだが、システムの移行で感じた日米における働き方の違いについて紹介したい。

 Google Appsは、企業や学校などの組織内で利用されるコミュニケーションパッケージ。Gmail、Google Talks、Googleカレンダー、Googleドキュメントなどを含んでいる。これらのアプリケーションは個人向けには無償で提供しているが、Appsではドメインとユーザーアカウント情報を管理できるコントロールパネルや拡張APIなどをパッケージ化し、企業の独自ドメインで利用可能になっている。

Gmailは個人用と同様の使いやすさだが、移行には注意

 Gmailのインタフェースの優秀さは言うまでもない。さらに、Googleならでは検索スピードの速さと特殊記号を使った高度な検索機能などは、個人用のGmailと変りはない。もちろんAppsのアカウントで個人のGmailへ来たメールをとることもできる(ただし、設定にコツが要る。最終的にうまくいった設定はこちら)。

 Apps版Gmailでもラベル、キーボードショートカットやGmail Labsの追加機能などで、生産性の高いインタフェースを構築できる。

個人用Gmailと同様の使いやすいUIが魅力のGoogleApps。検索スピードやラベリング機能、拡張性は秀逸だ(画面は英語表記だが、設定で日本語表記に切り替え可能)

スケジュールの入力ステップ数が半減

 スケジュール画面に関しては、慣れればGoogleカレンダーの入力の方が断然速い。実際に、社内のスタッフと会議室で行うアポイントを予約するためのステップ数を計算すると、以前使っていたグループウェアの半分で済んだ。

 これは入力すべき項目数が少ないのではなく、Googleが多くの画面でAjaxを利用しており、画面遷移せずに入力できることが影響している。

 しかも、英語版にすると左上に「Quick Add」というリンクが現れる。これは、入力フィールドに「永田さんと食事 @7pm-9pm Friday」などと入れれば、スケジュールの詳細画面を開かず、直接スケジュールに予約できる優れものだ。「Remember The Milk」などの記法を使っている人であれば、この機能は大変便利でありがたい。

スケジュール予約のステップ数比較(画面遷移しない入力を除く)
スケジューラー ステップ クリック数
従来のスケジューラー
(desknet's)
登録ボタン→スケジュール登録→利用設備→会議室の選択→スケジュール登録→登録先の選択→表示→追加→OK→OK 10クリック
Googleカレンダー 登録ボタン→詳細→チェックゲスト→詳細→OK 5クリック
Googleカレンダーでスケジュール予約を行う。ほかの人や設備を一緒に予約する場合は、詳細画面へ
空きスケジュールや設備予約を行う画面
Googleカレンダーで誰かがほかの人の予約をすると、招待状が送られる。予約時間の前後の予定を合わせて表示してくれるので、参加するかしないかを判断しやすい
ほかの人のスケジュールを確認しなくてもいいアポであれば、「QuickAdd」が便利。「永田さんと食事 @7pm-9pm Friday」と入れれば予約完了だ

拡張性が楽しい!

Labsの拡張機能を追加すると、カレンダ画面の右に追加情報を表示可能。

 このほか、右上の緑色フラスコアイコンをクリックすることでアクセスできるGoogle Labsでは、多彩な拡張機能を用意している。カレンダーであれば、NextMeeting(次の予定までの時間)、SmartRescheduler(リスケするときに自動で参加者の空いている時間を推薦してくれる)、Free or busy(指定した人が今空いているかどうかをチェック)――など便利な機能が満載だ。ウィジェットもコードを貼り付ければ実装できるので、わたしはサードパーティのタスク管理リストを表示させている。

 また、Marketplaceと呼ばれるサードパーティシステムを導入することで、標準では使いづらいAppsの補強もできる。Marketplaceには、SFA(Sales Force Automation)、CRM(Customer Relationship Management)、Communication、Accountなどいろんな目的に合わせて、多彩なアドオンソフトをラインアップしている。


SFA、CRMなどさまざまな拡張機能をサードパーティが提供している。無料アプリもあり

個人が主役の米国的ワークスタイルになじむ必要性アリ

 良いことばかり書いたが、いくつか課題もある。1つは細かいバグが結構目立つという点。これは後に解消されることを期待したい。もう1つ気になることは、ワークスタイルの根本的な考え方が日本と米国で違うということだ。

 例えば、国産グループウェアはほとんど「会社」→「組織」→「個人」というヒエラルキーを意識した作りになっている。そのため事業部ごとのスケジュールや、全社の共有情報などを重視する設計だ。また、管理者がガチガチに利用方法を制限することもできる。

 一方、GoogleCalenderは個人が主役。フリーのエンジニアが大勢集まって、いろんなプロジェクトに参加する――そんなワークスタイルにはまる設計なのだ。各個人で組織に関係なく、プロジェクトごとに必要なグループリストを作ったり、スケジュールの共有を行うという考え方である。これを日本的組織で利用するためには、ちょっと考え方の転換も必要だ。

 平たく言えば、国産のグループウェアは「組織から個人へ」、GoogleAppsは「個人と、そのほかの人たち」という関係性だと考えればよい。そこには、特定の組織や全社という意識は希薄だ。そうしたものよりは、個々人のプロフェッショナリズムを重視するという米国らしいモノの考え方が見え隠れする。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

Twitterアカウント:@nagatameister


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