“生きた教育”を実践――デンマークの『生のための学校』藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー

デンマークでは、サラリーマンは夕方4時に帰宅し、自分や家族の充実を重視する。教育費・医療費は無料で、年金も手厚い。確かに税金は重いが人々に納得感があり、「幸福度世界一」と評価される。そうした独特の社会観はどのように形成されたのであろうか。

» 2010年06月04日 11時42分 公開
[藤沢烈,Business Media 誠]
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 デンマークでは、サラリーマンは夕方4時に帰宅し、自分や家族の充実を重視する。教育費・医療費は無料で、年金も手厚い。確かに税金は重いが人々に納得感があり、「幸福度世界一」と評価される。そうした独特の社会観には、思想家グルントヴィと彼が構想した「生のための学校」(フォルケホイスコーレ)が影響したという。デンマーク独特のこの教育機関について日本人による目線で編集されたのが『生のための学校』だ。


「生のための学校」とは何か

 17歳半以上であれば誰でも入学できる。期間も2〜3週間と短期から、半年までとさまざま。教師も含めて共同生活を送るのが特徴であり、物価の高いデンマークにも関わらず(街中ならサンドイッチとコーヒーで1000円近くかかる)、3食・宿泊費込みで月10万円の学費だけで入学できる。

 というのも、学校運営費の約75%は国が負担するからだ。日本含めた世界の学生が集い英語で授業を行う「インターナショナル・ホイスコーレ」や、4カ月程アフリカでNGO活動に従事する「旅するフォルケホイスコーレ」といった独特なタイプもある。

学校思想が社会をつくる

 こうした世界にもユニークな学校は、18世紀に活躍した思想家グルントヴィが構想した。彼は知識中心の死んだ学問ではなく、人々の対話による生きた教育を構想した。その思想が生のための学校や公立学校教育に生かされ、民主主義と社会福祉につながっていった。

 日本では参議院選挙が近く、国のあり方が日々議論されている。日本におけるグルントヴィは誰かを考え、歴史・文化背景をおさえた上での社会像も考えてみたい。

著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)

 RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1200冊超。


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