アンダーソン氏はWired誌の編集長として、また『ロングテール』や『フリー』の著者として有名なので、わたしは、もの作りというよりはどちらかというとWebの世界の方だと勝手に考えていたのだが、実は違っていた。氏は、もの作りにおいても一流で、3D RoboticsというラジコンヘリコプターとそのDIY部品を製造販売する会社の経営者でもある。本書ではその経験もあわせて綴られているので、さらに説得力が増している。
いずれにしても、久しぶりにわくわく感のある話である。
80年代のデスクトップパブリシングの話もその1つだが、あのころから90年代にかけて、パソコンの登場からインターネットの普及まで、たくさんの夢が現実になっていったのを思い出した。このところ、もの作り企業の元気がない日本ではあるが、もっと技術の進歩による夢の実現に賭けてもいいんじゃないかと思う。現在の日本はあまりに夢を語らなくなりすぎていると思う。80年代、日本はもの作りで世界を席巻した国だったはずだ。
そしてもう1つの大事なポイントは、今後もの作りのビジネスを考える際には、大企業に依存するだけではなく、小さな会社でも成功可能ということだ。もちろん、知恵とタイミングが必要だろう。これまでの常識にとらわれないやり方で「メーカー」になれる道がありそうだ。
今後のもの作りには「クリエイター」の仕事がますます重要になると感じている。ここでいう「クリエイター」とは、「どんなものを、どんなシナリオでお客様に使ってもらい、そして喜んでもらえるか」を考える力を持った人たちだ。Webだけではない、例えば工業デザイナーと呼ばれている人たちだ。「ユーザーエクスペリエンスデザイン」という分野があるが、まさにそんな分野が重要だ。
Web制作だけがクリエイターの道ではない。「もの作り」に興味を持つ若い人が減っていることが危惧される昨今、80年代を知らない若い世代も、夢のない大人のいうことを聞くよりは、この本を読んで夢を現実にしてほしいと思う。
本当にそんな夢を考えさせてくれる1冊である。もの作りをずっと考えてきたベテランには、もう1度「もの作り」を考えるよい機会になる本であるが、それよりも、特にもの作りを考える若いクリエイター志望の学生たちに、ぜひ読んでいただきたい本である。
※この記事は、誠ブログの「kei_1のモバイル・クラウド・言いたい放題:「MAKERS」を読んで」より転載、編集しています。
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