「そう言われても、うまくできなさそう……」という人もいるかもしれません。いったんクセ付けされてしまった自分の行動は、そう簡単には方向転換できませんよね。
でも、解決策はあります。その1つが、アサーション・トレーニング。自分の意見を冷静に伝え、かつ相手側の立場をも考慮したコミュニケーションを体得するための、心理学を使った方法です。
アサーション・トレーニングをするにあたっては、人間の対応パターンを「攻撃的」「受け身的」「アサーティブ」という3つに分けて考えることから始まります。そして、この中でも「アサーティブ」にあたる態度をとることができるように練習するのが、アサーション・トレーニングなのです。
例えば、身に覚えのないことで怒られたりして嫌な思いをしたとしましょう。このとき「逆切れ」をして、怒っている相手に怒鳴り返すのは「攻撃的」な態度となります。もしくは口をつぐんで、本当は自分は何の罪もないのに「ごめんなさい……」と謝ってしまうのは「受け身的」となります。
では、あまり聞きなれない「アサーティブ」にあたる態度とは、どんなものなのでしょうか? これは「私はそのようなことをした覚えがないのですけど、あなたからはそのように思われているので、とっても悲しいです」などと言うことで、相手を責めもしなければ、自分を卑屈にすることもないことを指します。つまり、自分の素直な気持ちを伝えるのです。
「『あなた』がそんなことを思うなんて」とか「『あなた』はどうしてそんなふうに思うのですか?」などの言い方をせず、「『私』はそんなふうに思われて悲しい」というように、あくまで『私』を主語にする言い方に徹するのが秘訣です。少し練習が必要ですが「アサーティブ」な態度をとるクセを、ぜひつけてみてください。
アサーション・トレーニングをすることで、さわやかに主張できるようになります。そして、不当に扱われたり、人に利用されたりすることが減ります。また、怒りをぶつけて相手との関係を悪くしてしまうとか、腹が立ってストレスをためこんでしまうという状況も、未然に防げるようになります。
別に、相手を議論で打ち負かさなくてもいいのです。肩書きや業績で勝つ必要もまったくありません。
ただ、相手の言うことにしっかりと耳を傾けながらも、笑顔を絶やさず、自分の主張は曲げない。言葉で書くと簡単ですが、実は意外と難しいこと。でも、少しずつ練習してみてください。誰でもできるようになっていきますから。
それだけで、あなたのペースに巻き込まれて味方になってくれる人が倍増します。不思議なことですが、だまされたと思ってやってみてください。その効果に驚くことは間違いありません!
(次回は、「自分と相手の得を考える」について)
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