ネット通販で「肌ざわり」をいかに伝えるか「売らない」から売れる!

リアル店舗を持たないネットショップが、商品の良さを伝えるにはどうしたらよいか? お客さんが潜在的に望んでいることに応えるためには?

» 2013年12月09日 12時41分 公開
[寺田元,Business Media 誠]

連載『「売らない」から売れる!』について

 小さな会社でも「新規性」「話題性」「社会性」の3つがあれば、ブランドを作れる!

 著者は自ら動き、学び、実践した結果、ブランド構築に必要なものは、「新規性」「話題性」「社会性」の3つという答えにたどり着きました。本書ではその真意とともに、独自の「マーケティング哲学」、すなわち、

  • 「インターネットはモノを売る場ではない」というセミナー講師の言葉から学んだエッセンス
  • 「私に似合うタオルって何ですか?」という1通のメールで悟った商売の本質
  • タオルを生産している工場に行って初めて分かった「三方よし」という考えの大切さ
  • ネット通販で「肌ざわり」まで伝える方法や、お客様が感動する梱包のやり方など具体的なノウハウ

 などなど、どの商売にも通じる「売ろうとしなくとも、売れる」法則を公開しています。

 この記事は2013年11月14日に発売された日本実業出版社の『「売らない」から売れる! どこにでも売っている商品を「ここにしかない」に変える5つの法則』(寺田元著、単行本)から抜粋、再編集したものです。


 そもそも、お客さんがインターネットでタオルを買うのと、リアル店舗でタオルを買うのと、違いはどこにあるのでしょうか。

 リアル店舗でタオルを買う場合、「お店に入る」→「商品を見る」→「デザインなどを確認する」→「さわる」→「価格を見る」→「買う」となります。インターネットでは、この中で絶対できないことがあります。それは「さわる」ことです。インターネットの場合は「サイトにたどりつく」→「商品を見る」→「価格を見る」→「買う」となります。

 だからこそサイトを見た人に、まず信頼してもらうように努めなければいけません。そのために、タオルソムリエの寺田がいるわけです。そして、タオルの使い方、タオルの製造過程とともに生産者たちの思いがつづってあります。さらに、購入されたお客さんの声も取り上げています。

 つまり「サイトにたどりつく」の次に、「タオルの使い方を知る」「タオルソムリエが生産者を紹介する」「買われたお客さんの声を知る」という3つの要素を加えたのです。

 サイトを信頼してもらったうえで、「商品を見る」→「価格を見る」→「買う」となるわけです。お客さんから信頼を得る前に、「売ろう、売ろう」としても、お客さんの心は動きません。

 信頼してもらうという意味でも、サイトのトップページには、人の温度を感じていただきたいと、タオルソムリエである自分が、「これでもか」というぐらい出ています。

 そして先述したように、タオルがどのようにしてできているのかが分かるように、生産工程もトップページから伝えています。タオルを買おうと思って検索して、うちのサイトにたどり着く人ばかりではないからです。

 例えばタオルに関する検索で多い言葉の組み合わせは「タオル くさい」というものです。このように、ネットで検索する人は、まず商品に関する知識を求めているのです。そういう情報は、やっぱり無料で得たいと思っているわけです。

 そのお客さんの知りたいことに応えられるサイトであればあるほど、安心していただけると思っています。言ってみれば、当社のサイトは、お客さんが商品と出会う場なのです。

 そのための1つの方法として、個人情報はきちんと保護したうえで、「どんな人が、いくらくらい買ったか」という情報をお客さんがリアルタイムでつかめるようにしています。

 単に商品の情報だけでなく、ほかの人がどれくらいの金額の商品を購入しているのかということや、買った人の出入りも分かるようにしてあります。お店を知って、信頼をしていただくうえで、お客さんの参考になる要素を少しでも増やしたいという思いからです。

 インターネットの通販サイトの多くが、「いらっしゃいませ。こちらの商品は○○円になります!」と、売ろう売ろうとしています。しかし、それは本当にお客さんが求めていることなのか、考えてみる必要があるのではないかと思います。インターネットは本質的には「情報を無料で得られるツール」なのです。そこで売ろうとすればするほど、売れません。

 昔の自分をふくめて、ネット通販に携わる人の多くは、「お客さんは買うためにサイトに来ている」と思っています。そうではなく「お客さんは情報を得るためにサイトに来ている」のです。この誤解に気が付かないと、いつまで経っても、セールだ、ポイントだとなるわけです。

 「売ろうとしないから、売れる」というのは、一見矛盾しているようですが、商売を通して、身をもって感じ取った真実です。

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