タオルソムリエの私はお客さんに合ったタオルを選んで提供するのが自分の仕事だということを、ずっと心にとどめています。「知ってもらう」ことが、実は1番の「売れる」近道になるのです。
小さな会社でも「新規性」「話題性」「社会性」の3つがあれば、ブランドを作れる!
著者は自ら動き、学び、実践した結果、ブランド構築に必要なものは、「新規性」「話題性」「社会性」の3つという答えにたどり着きました。本書ではその真意とともに、独自の「マーケティング哲学」、すなわち、
などなど、どの商売にも通じる「売ろうとしなくとも、売れる」法則を公開しています。
この記事は2013年11月14日に発売された日本実業出版社の『「売らない」から売れる! どこにでも売っている商品を「ここにしかない」に変える5つの法則』(寺田元著、単行本)から抜粋、再編集したものです。
2010年からインターンシップの学生を招くようになり、付き合いのある大学の紹介で、「くまモン」のブランディングなどをはじめとした多くのプロジェクトを手掛けているクリエイティブ・ディレクター、水野学さんの講演を聞く機会がありました。
講演の中で水野さんは、「商品には『キャンペーン型』と『ブランド型』がある」という話をしていました。
キャンペーン型とは、例えばテレビコマーシャルをするとか、Yahoo!や楽天市場など多くの人が訪れるサイトにバンバン広告を出すとか、いわば集中的な広告戦略によって商品を知ってもらうものです。商品が一気に広まり、バーンと売れる可能性もありますが、広告をしないとその逆の結果を招きかねません。
一方ブランド型は、ブランド力を磨いていった結果、商品が広まっていくというものです。ただし、例えいい商品だとしても、誰にも伝わらなければ存在しないのと同じということにもなりかねません。
この話を聞いた帰りの電車の中で、私は「これを自分の商売に置き換えたらどうなのか?」とふと思いました。タオルを販売するサイトとしては、キャンペーン型のほうが売上が増えるかもしれない。でも、ブランド型のほうがやっていて1つ1つの作業が楽しいと思いました。
インターネットで販売するサイトで、安さばかりをうたい文句にしているお店がキャンペーン型のように思えてきたからです。そういった安さを売りにしたサイトは、最終的に経費を差し引いたら利益が出ているのかというと、やっぱり出ていないところが多いことにも気が付きました。
「モールサイトに10年間出店できているお店が5%に満たない」という現実も、あながち関連がない話とは思えませんでした。思い起こすと、「Eビジネス道場」の講師の方も次のように話していました。
「インターネットは、モノを売る場とは違う」と。それらを自分なりに落とし込んだ結果、たどりついたのは、インターネットとは、「商品を知ってもらう場所」だということです。「商品を売ろう売ろう」とするのではなく、「商品を知ってもらおう」と心に決めたのでした。
とは言いつつも、その後も何度も失敗していますし、耳の痛いご指摘をたくさんいただいています。気に入った1つのタオルを選んで、「タオルソムリエおすすめのタオル」をサイトで大きく紹介していたところ、それを見たタオルソムリエの試験に携わっておられる、ある社長さんから「押し付けるのではなく、ニーズに応じたタオルを提案するのがタオルソムリエの仕事だよ」とご指摘をいただきました。
「売ろうとしない」という商売の本質をつかんだつもりでしたが、まだまだ大事なことを分かっていませんでした。それからは、私はお客さんにヒアリングが可能なときは、できるかぎり、「どのような家族構成か」はもちろん、「どんな洗濯機を使っているか」までうかがったうえで、最適な1枚のタオルをおすすめする提案スタイルを実践するようになりました。
また買い物をするときよく迷ってしまう自分の経験から、お客様のアンケートや質問の内容を参考にカテゴリー分けをして、お客様が悩みを解消しながらタオルを選べるサイト作りを心掛けるようにしました。
人間、誰しも選択肢がありすぎると迷ってしまいます。だから、単品のバラエティに富んだタオルだけでなく、まとめて購入したいという方へのお試しセットも用意しました。これによって実際に販売数も伸びていきました。
このようにさまざまな経験を経て、今の私はいます。お客さんに合ったタオルを選んでさしあげるのが自分の仕事だということを、ずっと心にとどめています。「知っていただく」ことが、実は1番の「売れる」近道になるのです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.