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コロナショックで悲鳴上げる中小企業とフリーランス 弁護士が語る「経営者が使うべき政府の支援策」資金繰りの苦悩(3/3 ページ)

» 2020年03月31日 05時00分 公開
[安藤哲朗ITmedia]
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(2)雇用維持支援

 次に、従業員に対し、業績悪化により休業などをせざるを得なくなり休業補償を支払った場合や、小学校などの臨時休業により年次有給休暇とは別に休暇を取得させた場合に助成金が支払われる制度があります。

(1)雇用調整助成金(厚生労働省)

 雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練または出向を行い、労働者の雇用維持を図った場合に、休業手当、賃金などの一部を助成するものです。

 助成率は中小企業が3分の2で(大企業が2分の1)、1年間で100日(3年間で150日)が支給限度日数となっています(地方公共団体が活動自粛を要請する旨の宣言を発出している地域・期間では助成率の引き上げなどの特例措置があります)。

 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、休業等計画届の事後提出(2020年5月31日まで)が可能などの特例措置があり、日本人観光客の減少を受ける観光関連産業や、部品の調達・供給などの停滞といった影響を受ける製造業なども幅広く対象となるとされています。

(2)小学校などの臨時休業に伴う保護者の休暇取得制度

 新型コロナウイルス感染症に関する対応として、小学校などが臨時休業した場合などに、その小学校などに通う子どもの保護者である労働者の休職に伴う所得の減少に対応するため、正規・非正規問わず、労働基準法上の年次有給休暇とは別途、有給の休暇を取得させた企業に対する助成金が創設されています。

 2020年2月27日〜3月31日の間に取得した休暇が適用となり、休暇中に支払った賃金相当額×10/10が支給額となります(大企業、中小企業ともに8330 円が日額上限)。類似の制度として、委託を受けて個人で仕事をする方が小学校などの臨時休業によって就業できなかった日について、1日あたり4100円(定額)支給するものもあります。

(3)設備投資・販路開拓支援

 新型コロナウイルス感染症により、業態の変化を迫られ、新たな設備の導入や販路の拡大のためのサービスの利用などにより費用を要した場合に、活用しうる補助金があります。

(1)ものづくり・商業・サービス補助

 中小企業・小規模事業者などを対象に、新製品・サービス開発や生産プロセス改善などのため設備投資などが支援されます。3月10日より公募が開始され、補助上限は原則1000万円で、補助率は中小企業で2分の1、小規模事業者で3分の2となっています。部品の調達が困難となり、自社で部品の内製化を図るため設備投資を行う例が想定されています。

(2)持続化補助

 小規模事業者などを対象に、販路開拓などのための取り組みが支援されます。3月10日より公募が開始され、補助額は50万円まで、補助率は3分の2となっています。小売店が、インバウンド需要の減少を踏まえ、店舗販売の縮小を補うべく、インターネット販売を強化するなど、ビジネスモデル転換を図ったり、旅館が自動受付機を導入し、省人化したりする例が想定されています。

(3)IT導入補助

 中小企業・小規模事業者等を対象に、事業業継続性確保の観点から、ITツール導入による業務効率化等が支援されています。3月13日より公募が開始され、30〜450万円が補助額で、補助率は2分の1となっています。在宅勤務制度を新たに導入するため、業務効率化ツールと共に、テレワークツールを導入する例が想定されています。

(4)税・保険料の支援

 新型コロナウイルス感染症の影響により財産の喪失や、売り上げの急減により資力が低下している経営者は税や保険料について納付の猶予等が認められる場合があります。

(1)税務申告・納付期限の延長

 2019年分申告所得税、個人事業者の消費税及び贈与税の申告・納付期限が2020年4月16日まで延期されました。

(2)税・厚生年金保険料等の猶予

 また、一定の要件のもと、国税庁では国税の納税・換価の猶予、地方公共団体では地方税の徴収・換価の猶予、年金事務所では厚生年金保険料の納付や換価の猶予が認められる場合があります。

風評被害によってさらなる業績悪化も

 以上見てきたように、政府などにより中小企業・小規模事業の経営者に向けの支援策が整備されつつあるので、危機的状況にある経営者は活用を検討してください。また、現在は経営を維持できている経営者も新型コロナウイルス感染症の影響により、業界に風評被害などが生じれば、急激かつ甚大な業績悪化が生じることも懸念されますので、支援策の活用を念頭においておくと良いと思います。

 持続可能な事業継続のため、中小企業・小規模事業向けの給付金制度の創設や民間の金融機関からも実質的に無利子で融資を受けることができる制度の拡大が望まれます。

著者プロフィール

安藤哲朗(あんどうてつろう)

東京神田法律事務所/弁護士。早稲田大学大学院法務研究科修了。裁判所勤務を経て、2016年弁護士登録。東京神田法律事務所所属。交通事故事件を中心に、破産、労働、刑事および家事事件などの法人・個人案件を幅広く手掛ける。


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