「出会い系からの脱皮」図るTinder メインユーザー「Z世代」を巻き込むために必要な施策とは?AIが24時間監視(1/4 ページ)

» 2021年10月26日 17時10分 公開
[武田信晃ITmedia]

 新型コロナウイルスの感染対策として挙げられる「非接触」――。「人と人との出会い」を提供するマッチングサービスのビジネスモデルを根底から覆す概念だ。そんな厳しい状況にありながらあえてオンラインによるコミュニケーションに力を入れることで収益を伸ばしている企業がある。米国発祥の「Tinder」だ。

Tinderのブランドアンバサダーを務める水原希子氏(撮影:小澤俊一)

コロナ禍2年目の2021年も増益

 ソーシャル系マッチングアプリは乱立している。その最大手Tinderは米Match Groupが運営するブランドの1つで、2012年に米国大学のキャンパスで誕生した。190カ国、40言語以上に対応し、ダウンロード数は4億5000万回、マッチ成立件数は650億以上、1週間のデート件数は150万件で、18〜25歳のZ世代が利用者の50%を占めている。

 Tinder自体は長らく日本でもサービスを提供していた。19年に日本での事業拡大のため、日本法人を設立し、同年夏からこの法人配下でTinder Japanの運営を開始している。

 事業モデルとしては、有料メンバーによる会費収入が全体売り上げの95%を占めていて、広告収入は5%のみ。景気の動向に左右されやすい広告収入には頼らず、安定した収益源を持つビジネスモデルだ。有料メンバーは、一定時間内にLIKEの上限数が増えたり、一定時間、自身のプロフィールを他のメンバーに優先表示させたりすることができ、マッチングする確率が上がるようにした。メンバーは「プラス」「ゴールド」「プラチナム」の3種類に分け、受けられるサービスを変えている。

 Tinderを含む親会社Match Group全体の21年6月期(第2四半期)の決算を見てみると、売り上げは前年比27%増の7億776万米ドル(808億円)で、増収を実現した。20年6月期も19年と比べて12%増を記録していて、新型コロナの感染拡大は2年目を迎えているものの、しっかりと結果を残している。地域別でみると日本を含む「アジアパシフィック・その他の地域」では、前年比31%増の1億2339万米ドル(141億円)と、世界全体の伸びを上回った。

Match Group全体の21年6月期(第2四半期)の決算(以下Match GroupのIR情報より)
21年第2四半期の収益は対前年同期比で26%増となり、コロナ発生以来、最高の増加率となった

 また、1人当たりの売り上げを見てみると、前年の14.01米ドル(1600円)から10%増加して15.46米ドル(1770円)となった。“客単価”が上がったことからも分かるように、コロナ禍で直接会ったり、新しい出会いそのものがなくなったたりしたため、大勢の消費者がマッチングアプリを通して何とか新しい出会いを求めたことの証左といえる。

 また、感染拡大下では、(相手に好きな気持ちを伝えて、相手に通知も入る)Super Likeや、(地域のトッププロフィールとして30分間表示する機能)ブーストを単発で購入できるアラカルトの売り上げも上がった。感染拡大が深刻化した20年3月から月ごとの売り上げを見ると、一部に落ち込みはあるものの全体的には右肩上がりが続く。

 感染の大きかった21年1月には大きく売り上げを伸ばし2月はそのリバウンドで下がったものの、それ以降はまた右肩上がりとなっている。つまり、コロナ禍2年目のほうが1年目よりも、ユーザーが使うようになっていて、売り上げ向上に寄与した格好だ。

アラカルト収益
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