「S Work車両」の指定席券は駅の窓口などでは販売せず、JR東海の会員制のインターネット切符予約サービス「エクスプレス予約」「スマートEX」の専用商品として販売している。このため、一般の乗客が間違って「S Work車両」を予約することを防いでおり、ビジネスパーソン向け車両としての質を保っている。
また、車内のインターネット環境の拡充も進めている。N700系以降の車内では、無料で使えるWi-Fiサービスとして「Shinkansen Free Wi-Fi」を設置しているものの、限られる通信容量を分け合うため、1回の接続あたりの利用時間が30分と限られていた。そのため、Wi-Fiのみによって車内でオンライン会議などをしようとしても、なかなか難しいところがあった。
そこで、N700Sの7号車とグリーン車の8号車で、新たな無料Wi-Fiサービス「S Wi-Fi for Biz」を10月以降順次導入している。「Shinkansen Free Wi-Fi」にあった1回あたり30分という時間制限を撤廃した。また、これまで1両につき1台だったWi-Fiのアクセスポイントの設置台数を、7号車と8号車に限り2台増やし、より多くの通信容量を確保している。
通信方法も「WPA2-PSK」方式という認証プログラムを導入しており、通信回線の暗号化にも配慮している。このため、例えば東京〜新大阪駅間の2時間30分の移動中の車内でオンライン会議をすることも十分に可能だ。
東阪間で競合する公共交通手段としては飛行機があり、ANAやJALの機内では機内Wi-Fiサービスも導入されている。だが、飛行機の場合、衛星通信回線を使用する仕様上、大容量通信が困難であり、機内で動画の視聴すらままならない現状だ。
飛行機での出張の場合、地上のラウンジなどで取引先訪問前の最終的な作業を済ませ、機内移動中は移動に専念するか、最小限の確認タスクに限られることになる。この点、新幹線であれば、貴重な労働時間を最大限有効に生かせる強みがある。
このような「S Work車両」や「S Wi-Fi for Biz」を新たに導入した狙いは何か。本企画を推進したJR東海の新幹線鉄道事業本部・運輸営業部の中西康裕課長代理はこう話す。
「新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、テレワークやウェブ会議が急速に普及し、働く場所や時間を選ばない新しい働き方が広がっています。そうした中、新幹線車内で仕事を進めたいお客さまからは周囲の声が気になるといった声や、逆に仕事をされている周囲のお客さまからはパソコンの操作音が大きいなどといったご意見も一定数いただく状況でした」
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