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4KはBDの感動を4倍以上にする? CEATEC総括麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/2 ページ)

» 2011年10月25日 15時24分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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シャープブースの「ICC 4K 液晶テレビ」

麻倉氏: シャープは2段階の展示をしていましたね。1つはブース内の明るい場所。そこではちょっと分かりにくいので整理券を配り、会議室のほうに移動して、じっくり見てもらうという手法です。

 改めて眺めると、やはりICCのすごさが分かります。現実はこうであるに違いないと思わせる情報量や質感が出てくる。しかもIFAのときよりも調整がうまくなっていましたね。前回、民生用の業務用モニターと異なり、テレビではコントラストに帯する考えが重要だと言いましたが、今回はまさに民生用テレビを考えた画作りだった思います。前回と同じ高輪プリンスホテルで撮影された映像も見ることができましたが、例えば池を映したシーンでは光の反射やフレーム内にある物の距離感までしっかりと感じさせ、再現生が向上していると思いました。製品化は来年の年央ということですが、とても楽しみです。

――4K以外の話題はいかがでしょう

三菱電機はレーザーを液晶テレビのバックライトに使用した試作機を展示

麻倉氏: 色再現性に対する革命的なメソッドがありました。三菱電機ブースのレーザーテレビです。色再現生に関しては、これまでもRGBのLEDバックライトなどで改善するといったアプローチがありましたが、コストが高くて今は白色LEDが広く普及しています。一方でシャープがRGB+Yの4原色パネルを開発するなど、地道に取り組んでいるといった状況です。

 三菱電機はRGBのレーザーを使用したリアプロジェクションテレビを出していますが、今回はそのうちR(レッド)のみをレーザーでやり、それ以外はLEDを使うというハイブリッドタイプです。レーザーは特定の波長を狙って取り出せることが特長で、人間の目は赤に対する感受性が高いので、こういった形にしたのでしょう。試作機の映像にはまだ不自然さもありましたが、ハイブリッド化でNTSCの色域を140%カバーできるそうです。通常のハイビジョンの色域(ITUのBT.709)はNTSCの70%程度という点を考えれば、すごいことが分かると思います。あそこまで色の情報量を増やせる手段はなかなかありません。将来のSHV化に向けて、基礎的なパワーになるのではないかと思いました。来場者も素直に反応して、三菱ブースは人気でした。

 

 ほかに3Dやスマートテレビという話題もあります。まずスマートテレビについては、パナソニックが「ビエラ・コネクト」を発表してアプリのダウンロードなどを見せていましたが、海外のイベントと比べてスケールが小さかったと思います。まるで「アクトビラ」をアイコン化したようなもので、展示スペースも狭い。国内メーカーは“スマートテレビ”に対しては及び腰だと感じました。そもそもパナソニックの展示は全体に力を抜いた印象でした。

 ただ、日本的なスマート化の流れという点では、東芝の「レグザサーバー」が発表されたことで面白くなりましたね。“全録”で放送コンテンツをため込み、ホームネットワークを介してテレビはもちろん、PCやタブレットなどでも視聴できます。また10月19日にはバッファローも全録対応の「DVR-Z8」を発表しています。こちらはネットワーク関連の機能は搭載していませんが、今後はさまざまなメーカーが参入してくるのではないでしょうか。

東芝の「レグザサーバー」(左)とCEATEC後に発表されたバッファローの全録マシン「DVR-Z8」(右)

 一方の3Dについては、ソニーのヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」や東芝「55X3」など注目の製品はあったものの、イベントのメインではなくなりました。東芝も昨年は「グラスレス3D」がメインで、4K×2Kパネルはバックグラウンドだと言っていたのに、今年は4Kがメインで裸眼立体視はおまけのようになっていました。ほかには日立コンシューマエレクトロニクスが遅ればせながら参入するといったトピックもありますが、このあたりが“落としどころ”と思います。3Dは、あれば楽しいけれど、常時使うものではありません。食事でいえば、あくまでも“おかず”であって“ご飯”ではないのです。

 ただし、3Dがご飯になる製品が1つあります。それはプロジェクター。実用品でもあるテレビと、あくまで趣味の製品であるプロジェクターは求められる機能は大きく違います。趣味の世界なら3Dも十分に本流になり得る。事実、3Dの画質に対して念入りに調整している製品もプロジェクターばかりで、例えばソニーの「VPL-VW95ES」は、昨年比輝度が2倍でクロストークは1/2くらいですね。

 話は変わりますが、今年のソニーブースはとても面白かったと思います。昨年は最低でしたが、今年は「HMZ-T1」や「VPL-VW1000ES」のようにソニーらしい製品が出てきましたし、ブース内で行われた機器連携のプレゼンテーションも演出が非常にうまかったと思います。

ソニーブースで「HMZ-T1」を装着する麻倉氏(左)。メインステージも分かりやすくて好印象だった模様(右)

――では、今年のCEATECで一番面白かったのはソニーブースということで、よろしいでしょうか?

麻倉氏: いえ、今年の“ユニーク大賞”はパイオニアの鏡ですね。

 パイオニアは有機ELパネルを使った照明器具に力を入れていますが、その中に「自分の肌が一番きれいに見えるよう、調節できる鏡」がありました。鏡の周囲に有機ELパネルを組み込み、調光や調色に対応した鏡台です。これがあれば、お化粧が終わったとき、「自分が一番きれい」と思えるでしょう。

 LEDや有機ELなど新しい照明器具がいろいろと登場していますが、パイオニアのようにデバイスの特性を生かして付加価値のある照明器具を作ろうというアプローチはすばらしいですし、非常に面白いと思いました。

パイオニアが三菱化学と共同開発した有機ELパネル(左)。こちらが「自分の肌が一番きれいに見えるよう、調節できる鏡」(右)

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