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3万円という価格差の意味は? ヤマハのAVアンプ「RX-V575」「RX-V775」を徹底比較(2/2 ページ)

» 2013年06月03日 10時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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BD映画でサラウンドをチェック

 Blu-ray Discの映画でサラウンドを検証する前に、自動音場補正機能の違いに触れておこう。というのも、RX-V775には「YPAO-R.S.C.」という上位機「AVENTAGE」(アベンタージュ)シリーズの機能が採用されているからだ。R.S.Cとは、「Reflected Sound Control」の略で、最大8カ所のマルチポイント計測で精度を高めつつ、部屋の固有初期反射音を従来のYPAOよりもダイナミックに制御する。

 ちなみに、メニュー画面はRX-V775がカラーのGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)なのに対し、RX-V575はシンプルなOSD(オンスクリーンディスプレイ)となっており、OSDでは音場調整の結果など詳細を見ることができないのが残念。ただし、通常の操作をアプリの「AV CONTROLLER」で行うのであれば、ユーザーインタフェースの違いはあまり気にする必要はないだろう。

RX-V775のスピーカー設定。YPAO-R.S.C.の設定したカーブは従来機よりも大胆に上下している(左)。RX-V575のOSDメニュー。とってもシンプル(右)

 さて、両モデルとも定評のあるヤマハ独自の音場創生技術「シネマDSP<3Dモード>」をサポートしている。実際に映画BD「ファイトクラブ」をDTS-HD MAのストレートデコードとシネマDSPの『ドラマ』モードで比較試聴してみよう。

 ストレートデコードが“あっさり”に思えるほど濃密な音場に軽く驚かされる。シネマDSP 3Dモードはこれまでにも何度か体験しているが、改めてその効果を確認した次第。例えば主人公が工場の中を歩くシーンでは反響音がリアリティーが増し、その場の空気感をより感じとれる。また飛行機と飛行機が衝突する迫力のシーンでは、音のつながりが良くなったためか、機内に流れ込んだ風が自分の周囲を回るように感じられた。もっとも、これはRX-V575とRX-V775の共通機能である。

 一方で違いを感じたのは、スピーカーアサインを変えたときだ。RX-V575では、サラウンドバック用の2chをフロントバイアンプ駆動に使用することはできるが、RX-V775ではさらにフロントプレゼンスに割り当てることも可能になっている。また、セリフの定位を上下方向で調整できる「ダイアログリフト」機能もRX-V775だけ。RX-V575も「VPS」(バーチャル・プレゼンス・スピーカー)機能でフロントプレゼンスを仮想的に利用できるものの、ダイアログリフト機能はない。

 そこで、RX-V775にリアルなフロントプレゼンスを割り当て、ダイアログリフトでセリフを2段階引き上げて同じシーンを試聴してみた。セリフが画面中央にぴったりと収まり、さらに前方の奥行き感が増したイメージ。画面の奥に音場に広がったようだ。通常の映画も良いが、Blu-ray 3D再生時にはとくにハマりそう。またダイアログリフトの安定感もなかなかいい。スイートスポットが狭くなる傾向があるので、スピーカー設置で対処できる部屋なら使う必要はないが、そうでなければ積極的に使っていいと思う。

ハイレゾ音源でネットワークオーディオをチェック

 次に、ネットワークオーディオ機能で192kHz/24bit音源を試聴する。両モデルのアンプは基本的に同じ構造のはずだが、やはりRX-V775のほうが1枚上手だ。情報量と解像感の高いハイレゾならではの部分は共通でも、RX-V775はさらにワイドレンジで楽器の音1つ1つでリアリティーが増す。同じ曲で横並び比較しないと分からないレベルの違いだが、実際にRX-V775のほうが「気持ちいい」のは確かだ。

 同じディスクリート構成の7chアンプを使用しているはずなのに、一体何が違うのか。実は製品発表記事でも触れているが、この2機種はプラットフォーム自体が明確に異なる。RX-V575は、下位モデルの「RX-V475」とメインパーツを共有して一部に高品位パーツを使った、いわば“チューンドRX-V475”。一方のRX-V775は新しいDACを採用するなど根本的に設計を見直したニューモデルと思っていい。

RX-V775には「PCM5101」を“5個使い”(左)。トランスの周囲がすっきりして見えるのは、サブ基板がないから(右)

 例えばDACの構成。RX-V575は2012年モデルと同じバーブラウンの8ch DAC「PCM1681」1基だが、RX-V775は新世代の2ch DAC「PCM5101」を“5個使い”している。またRX-V775の電源はアナログ回路とデジタル回路向けのトランスを個別に用意し、さらにアナログ回路向け電源はサブ基板を排除して一次側の入力が直接トランスに入る(いわゆる直出し)など、スピーカーの駆動力に直結するローインピーダンス化が図られている。このように、プリ部と電源周りの違いが、音に現れたといえそうだ。


 実際のところ、今回の検証を最初に企画したときは、両機の違いが少ないと思っていた(だから企画した)。しかし、掘り下げてみると音はもちろん、機能やハードウェアの作り込みとった複数の面で意外なほど多くの差異があった。やはり、エントリークラスであっても製品選びを甘く見てはいけない。そんな思いを強くした検証だった。

型番 RX-V575 RX-V775
定格出力(2ch駆動時) 80ワット+80ワット 95ワット+95ワット
実用最大出力 135ワット/ch 160ワット/ch
シネマDSP 3Dモード VPS対応 ○(フロントプレゼンスSP対応)
ダイアログリフト
自動音場設定機能 YPAO YPAO-R.S.C.
オーディオプリアウト 2 11
HDMI入力/出力 5/1 6/2(同時出力可能)
4Kパススルー/アップスケール ○/ー ○/○
オンスクリーンメニュー 日本語OSD GUI
サイズ 435(幅)×161(高さ)×315(奥行き)ミリ 435(幅)×171(高さ)×365(奥行き)ミリ
重量 8.2キログラム 10.5キログラム
希望小売価格(税込み) 6万3000円 9万2400円
発売日 4月上旬 5月下旬
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