アイリスオーヤマは、生活家電、日用雑貨品、ペット・園芸用品、食品など、1万5000点以上もの多様な商品を展開する総合メーカーだ。特に2009年に始めたLED照明事業が好調で、東日本大震災による節電需要を受けて売上を伸ばしている。2014年のグループ全体の売上高は過去最高となる3030億円を突破した。
近年はコードレスのスティック型掃除機やふとん掃除機など、家電製品も売上をけん引する主力商品になっており、同社広報によると「アイリスオーヤマ単体での売上の40%を家電製品が占める(LED含む)」という。大手家電メーカーが軒並み経営に苦しむ中、同社はどのようにして売上を伸ばしてきたのか。アイリスオーヤマの中核工場である宮城県・角田市の角田I.T.P.(インダストリアル・テクノ・パーク)でその裏側を見学してきた。
ユーザー目線の商品開発やお手頃な価格が同社の特徴で、特筆すべきは年間1000点以上の新商品を発売する「スピード感」だ。アイリスオーヤマ 常務取締役研究開発本部長の大山繁生氏は「企画から発売までの速さは大手の2倍」と胸を張る。その速さを実現する手段の1つが、週1回開催される「新商品開発会議」だ。
大山健太郎社長を始めとする経営陣や各部署の関係者約50人が角田I.T.Pの会議室に集結。各部署の担当者が新商品をプレゼンして社長の決裁を仰ぎ、OKが出ればすぐに商品開発に着手できる。会議は毎週月曜の9時40分から17時ごろまで続き、重要な案件のときには東京や大阪から担当者が出向いてくることもある。多いときは1回の会議で60件もの新商品案が提示される。
広報担当に「かなり緊迫した空気で、ときには議論が白熱することもあります」と聞かされていたように、4月20日の取材当日も前のプレゼンが押して予定時間の30分を過ぎても取材予定の提案が始まらないという事態に遭遇した。プレゼン中は大山健太郎社長や繁生常務などから容赦なく厳しい質問が飛び、常に緊張感のある空気が張り詰めていた。
スピード感のある開発を実現する2つ目の手段は、「伴走方式」の開発方法だ。通常は、開発→生産→営業という順番に商品を渡していく「バトンリレー方式」が一般的だが、伴走方式では、商品開発、知的財産、応用研究、品質管理、生産技術などの各部署が同時に走り出すのでよりスピーディーに商品を発売できる。これにより、GOサインが出た商品が半年という短いスパンで世に出ていくことになる。
最後に注目したいのが、同社独自の社内コミュニケーションだ。国内外にある拠点と密に連絡を取るためにテレビ会議を活用しているほか、社内の至るところに円卓が置かれている。立ったまま打ち合わせをすることで無駄な会話を省けるほか、重役とも肩を並べて近い距離感で情報共有できることがメリットだという。
2014年8月1日から本格稼働している大阪R&Dセンターは、家電製品の開発拠点となっている。ここでは、大手家電メーカーを退職した優秀な技術者を積極的に採用し、家電部門の強化や開発のスピードアップを図っている。現時点で30人ほどの技術者が中途入社した。
これまでアイデアはあるが実現できなかったという商品の開発をしたり、製品の安全を保証する上で分からないことを元大手家電メーカーの社員に聞いてみたりと、その恩恵は大きいという。
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