50代以上の人なら「Aurex」(オーレックス)というオーディオブランドを憶えているかもしれない。1975年から1990年まで東芝のHi-Fiオーディオ製品に使用されたブランドで、プリアンプの「Λ(ラムダ)シリーズ」やノイズリダクションシステムなどは当時のオーディオファンから高く評価されていた。1980年代には総合オーディオブランドに成長し、CMキャラクターに原田知世さんや本田美奈子さんといった人気女性タレントを起用して注目を集める。そのAurexが、東芝子会社の東芝エルイートレーディングから26年ぶりに復活した。
懐かしい「Aurex」ロゴを与えられた製品は、ハイレゾ再生に対応したポータブルCDラジオ「TY-AH1000」だ。同社はCDラジオやCDラジカセの分野では市場シェア50.4%を誇るトップメーカーだが、これまでは低価格商品がメインだった。ハイレゾ音源の登場で盛り上がるオーディオ市場に向け、新たに“ハイエンドCDラジオ”を投入するにあたり、「音にかける意気込みを示すため、Aurexブランドを復活させた」。新製品のターゲットはずばり、かつてAurexブランドに親しんだ50代以上の男性だ。CDラジオという手軽なスタイルにすることでハードルを下げ、再び音楽に親しんでもらうのが狙いだという。
「TY-AH1000」では、96kHz/24bitまでのリニアPCM音源(WAV/FLAC)を再生できる。再生方法も複数用意しており、USBメモリーやSDカードといった物理メディアから直接再生する方法に加え、背面のMicro USB端子でPCと接続し、外部DAC兼アクティブスピーカーとして使うこともできる。
懐かしい仕掛けも用意した。例えば楽曲を再生すると、前面ディスプレイに派手めのレベルメーターが表示され、音に合わせて動く。さらにハイレゾ再生時には黄色い「ハイレゾサイン」が点灯。「視覚的にも分かりやすく、“良い音”を感じてもらえる」(同社)。
音響面にも力が入っている。搭載ユニットは、新開発のシルクドームツイーターと60mm径ウーファーの2Way。各ユニットを専用アンプで駆動するバイアンプ方式を採用している。開発を担当したのは、液晶テレビ「レグザ」のスピーカー開発でも知られる桑原光孝氏。スペースの限られた製品で音質を追求するプロフェッショナルで、生粋のオーディオマニアでもある。
「ツイーターは繊細な高域とボーカルを心地よく聴かせるためにシルクドームを採用した。4分の3インチ径ながら、2kHz〜100kHzという余裕のあるワイドレンジ再生が可能だ。磁気回路には、磁束密度8000ガウスの大きなマグネットを搭載しており、高域がよく伸びる」と桑原氏。
一方のウーファーについても「オーソドックスなパルプコーンながら100Hz〜9kHzというフルレンジとしても使える広い再生周波数特性を持ち、ツイーターとのクロス自由度を高めている。9000ガウスの磁束密度を誇る磁気回路で高い駆動力も確保した」と話す。なお、ネットワークは回路の大型化を避けるために採用せず、低域と高域にそれぞれフィルターをかけてカットする手法を採用した。アンプの出力は低域が各15W、高域が10Wだ。
もちろんCDラジオとしての機能もカバー。ワイドFM対応のチューナーを備え、ラジオ番組のタイマー録音が可能だ。語学学習などに便利な再生速度を遅くする機能もある。上部には持ち運びに便利な大きめのハンドルを備えるなどCDラジオならではの使い勝手にも配慮した。
本体サイズは400(幅)×135(高さ)×205(奥行き)mm。重量は約3.2kg。価格はオープンプライスで、店頭では3万3000円前後になる見込みだ。3月下旬の発売を予定している。
東芝エルイートレーディングでは、Aurexブランドの製品を継続的に展開していく方針だ。同社の松本健一郎社長は、「初のハイレゾ対応ポータブルCDラジオを送り出すにあたり、高音質の代名詞であったAurexを復活させる決心をした。音楽を聴く環境は変わり、多様性が求められている。マニア向けの高スペック商品ではなく、誰でも気軽に高音質に触れられるブランドとしてAurexを位置付けていきたい」と話している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR