ソニーは6月1日、「東京おもちゃショー」で全く新しいコンセプトの玩具「toio」(トイオ)を発表した。一見、カートリッジ式コンソールの据え置き型ゲーム機だが、テレビやディスプレイには接続していない。プレーヤーの視線の先にあるのは、2つの小さなキューブ型ロボットだ。
toioは、同社の新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」(以下、SAP)の新しい成果だ。2つの車輪で自由に動き回るロボット2台と小さなモノクロ液晶パネルを備えた本体「toioコンソール」にリング状のコントローラー2つをセットにしたもので、コンソールに挿すカートリッジでタイトルを供給する。
ソニー、新規事業プラットフォーム新規事業創出部の田中章愛統括課長は、「toioは、toy(玩具)とI/Oを組み合わせたネーミング。また“t”が手に、“oio”が顔に見えることから、体感して楽しむものという意味も込めた」という。主なターゲットは小学生で、既に200人以上のユーザーテストを繰り返して洗練させてきたという。
キューブにはトルクのあるモーターが2つ内蔵されており、2つの車輪が独立して動くため、その場で回転するなど動きは自由自在。また加速度センサーと光学センサー、上から押されたことが分かるスイッチなどを搭載し、状況に応じて動きを変える。
そして最も特徴的なのが、「絶対位置センサー」と呼ばれる仕組みだ。実は付属の専用マットには人の目に見えにくいインクでパターンが描かれており、それをキューブの光学センサーが読み取ることで、コンソールは各キューブの位置と向きを把握する。カメラなどはなくても、まるで見ているように動かせる。
キューブの動きは、交換式のカートリッジ提供されるプログラム次第。カートリッジによってキューブは対戦したり、協調して動作したり、あるいは「何か別のものの物理特性をシミュレーションすることもできる」(田中氏)。
例えば磁石の物理特性をシミュレーションしたプログラムなら、2つのキューブを近づけると反発するか、逆にくっついてくることになる。ロボットというとロボット同士の対戦を思い浮かべがちだが、子どもがロボットに物理的に干渉して楽しめる。
また「toio COLLECTION」(ソニー)というカートリッジに含まれる「クラフトファイター」は、2つのキューブで戦うバトル物。プレーヤーはリング形状のコントローラーでキューブを操り、「落ちたら負け」の相撲を繰り広げる。ユニークなのは、前後左右の動きだけではなく、その場で回転し始めるなどの“必殺技”を持っていること。「コントローラーにも加速度センサーが入っていて、振ると技が出たりします」(同氏)
キューブの上面にある凹凸はレゴブロックを取り付けられるマウントのようなものになっており、ここにブロックを重ねてオリジナルのファイターを作ることができる。そのためにキューブの内蔵モーターは200gまでの重量を載せても支障なく動き回る、強力なものを選んだ。「子こどもたちにユーザーテストを行うと、本当にいろいろなものを作ってくれます。ブロックで変化を加えるとゲームバランスが変わる。どう改善すればいいのか子どもたちは考えだします」(同氏)。toioは、子ども達の“工夫する心”を刺激するプラットフォームなのだという。
一方、子ども達を驚かせそうなタイトルもある。「ピタゴラスイッチ」(NHK)のピタゴラ装置開発などで知られるユーフラテスが提供したのは、「工作生物ゲズンロイド」。ゲズンロイドは、紙工作とロボットを組み合わせたタイトルで、紙でキューブ同士をつなぐとシャクトリムシのように動き出す「シャクトリー」や、1個のキューブを動かすと、目玉をつけたキューブがそちらを見続ける「めだま生物」など、toioのティーザー動画に登場した変なロボットたちを作ることができる。いずれも絶対位置と向きを常時把握できるtoioだからこそ実現した“変な生き物”。ゲズンロイドには、このような工作生物が15種類も入っている。
toioは12月1日に発売予定で、価格は実売2万円前後(オープン)。カセットは実売4000〜5000円になる見込みだ。またソニーではSAPのクラウドファンディングサイト「First Flight」で6月1日から30日まで先行予約販売を行う。初回限定セットとして、レゴやタイトル2本が付いてくる「全部セット」(税込2万5855円)などを用意する。
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