DDIポケットがタイでの国際ローミングを始めた(2003年12月19日の記事参照)ことを受け、AirH"PHONE「AH-J3001V」(2003年4月の記事参照)を持ってタイに出かけてみた。
タイではPHSという名称ではなく「PCT(Personal Communication Telephone)」と呼ばれている。AirH"PHONEの国際ローミングでは、このPCTのサービスを利用するのだが、サービスエリアは首都バンコクのみ。そのため現地ではエリアの広い携帯電話を使う人が圧倒的に多く、PCT利用者は限られているという。
現地を案内してくれたガイド氏も「携帯は2つ持っているが、PCTにはあまり興味がない」と言っていたほどで、事業者はビジネス的にも厳しい状況にあるらしい。ただ筆者が今回のローミングサービスを実際に使ってみた限りでは、携帯電話と遜色ないどころか、日本の3G携帯やauのグローバルパスポート機を持ち込むより、よっぽど便利な印象を受けた。
台湾でのレビュー(2003年4月の記事参照)同様、市内観光を兼ねてエリアチェックをしてみることにした。
屋外 | 屋内 | 立ち寄り先 |
---|---|---|
○ | ○ | あかつきの寺院(ワット・アルン) |
○ | ○ | チャオプラヤー川支流の土産店 |
△ | − | 王宮 |
△ | − | エメラルド寺院(ワット・プラケオ) |
○ | ○ | 涅槃寺(ワット・ポー) |
○ | ○ | ワールドトレードセンター |
基本的に、どの場所でもPCTは問題なく利用できるが、エメラルド寺院の周辺は建物の影になるとアンテナ表示も消え、使えない場所が目立つようになってくる。こうしたときには確かに携帯電話のほうが便利だ。
ワールドトレードセンターの免税店を最後に市内観光ツアー一行と別れ、アンテナウォッチをすることにした。それというのも、ツアーの移動はほとんどが舟と歩きで、ゆっくりビルの屋上を眺めているヒマがなかったのだ。ちなみに、筆者が乗ったロングテイルボートは、映画のロケで以前ジェームズボンドが使ったタイプらしく、スリルと迫力に満ちあふれていた。
町の中を歩いても、日本、そして台湾で見慣れているはずのアンテナがあまり見当たらない。だが、液晶画面を見ている限りでは電波の穴もなく、快適に使えるようだ。そこでビルの屋上ではなく、もっと低い位置に視線を移すと、なんとそこにPCTの文字。都内ではアステルがよくこうした基地局を電柱に付けていたが、DDIポケットのものとは違うのだろうか。
さて、日も暮れてきたので近くで食事を済ませ、タクシーを使ってホテルに戻ることにした。筆者の宿泊先は、日本大使館の近くにあるクラシックプレイスホテル。ツアーにも組み込まれており、日本人旅行者も多いようだ。ロビーにはインターネットを利用できるPCも置いてある。
部屋も設備もそう悪くはないのだが、割り当てられたのが内向きのプールに面した部屋。そのせいかPCTの電波が弱いという状況になってしまった。アンテナ表示はおおむね0本〜1本。場合によっては圏外になるというありさまだ。さすがに部屋を替えてもらうほどではないものの、町の中の充実ぶりと比べるとショックも大きい。仕方なく、部屋の中で最良のポイントを探しながらメールの送受信などを行った。もっともPIAFSの安定性からいえば、動いてしまえば後は安心というところだろうか。
今回の旅ではAirH"PHONEと一緒に、FOMAカードを入れたGSM携帯と、VGS端末「V801SA」、グローバルパスポート端末「A1303SA」も持参した。まさに完全装備だったわけだが、これらの間で通話テストをする際にPHSの便利さを実感した。それは電話の発信時のかけ方だ。
例えば、Air"PHONEからFOMAカードのGSM端末に電話をかけるには、日本の携帯電話にかけることになるため、国際電話をかけなければならない。これはau、Vodafone端末もいずれも同じだ。つまり、日本からタイに観光旅行に来た友達同士が連絡を取り合う場合に、わざわざ日本を経由して電話をかけなければならないのである。電話帳データにも国際番号の追加が必要だ。
AirH"PHONE同士であれば、こうした配慮は必要ない。お互いにタイの電話番号を持っていることで、日本を経由することなく電話をかけたり受けたりできる。そしてこのことは、タイの人にとっても実は重要な意味を持つ。
タイのガイド氏によれば、「日本からのお客さんに連絡を取るための電話代が、ばかにならない」という。理由は単純で、日本から持ってきた電話でも、国際電話による発信を強いられるからだ。これがAirH"PHONEなら、タイ国内の通話料で済んでしまう。タイの人の懐にもやさしいAirH"PHONE、これからタイ旅行に行く人たちの必需品となるだろうか。
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