地上デジタルラジオと電話が連携すると?

» 2004年03月03日 23時17分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 KDDI、エフエム東京、バイテックの3社は3月3日、地上デジタルラジオ受信機の新しいプロトタイプを公表した。受信機はPDA一体型で、Air H"による通信も可能だ。これを用い、3社は“放送と通信の連携による新しいアプリケーションの実証実験を4日から行う。

photo 左からバイテックの白井舜一社長、エフエム東京の園城博康常務、KDDIの村上仁己技術開発本部長。バイテックは受信機の開発を、KDDIはPDA向けソフトの開発を担当した
photo 地上デジタルラジオのPDA一体型受信機(プロトタイプ)上面のCFスロットには通信用のAir H"端末を装着済み

 日本の地上デジタル放送は、従来のアナログ放送1チャンネル分にあたる6MHz幅の周波数帯を13のセグメントに分けて電波利用の効率化を図っている(1月の記事を参照)。昨年10月から実用化試験放送を行っている地上デジタルラジオも同様で、VHF帯の1チャンネル(7ch)を13のセグメントに分け、うち8つのセグメントで実験放送中だ。エフエム東京は、ニッポン放送およびジャパンエフエムネットワークと共同で、3つのセグメントを使う「デジタルラジオ東京98ch」を運営しており、今回の実験でも実際にオンエア中の番組を利用するという。

 1セグメントの伝送能力は330Kbpsのため、“3セグメント放送”の帯域幅は1Mbps近い。これを生かし、「CD並み」の音声(MPEG-2 AACの128Kbps)とQVGAもしくはSQVAの簡易動画、BML(Broadcast Markup Language)によるデータ放送を提供する予定だ。なお、簡易動画に関しては、ライセンス問題が未解決ながらMEPG4を仮採用している。

 「3セグ放送は、音楽を中心として、情報、映像、静止画を組み合わせた高付加価値の放送になる。携帯電話もしくはPHSを介した通信は、その付加価値をさらに増すもの。auはFMラジオチューナーを搭載した携帯電話を販売しているが、デジタルラジオはその延長線上にある」(KDDI技術開発本部の猪澤伸悟次長)。

photo 実験のシステム構成。放送波と通信インフラ(今回はAir H")の連携により、チケット販売やラジオショッピング、アンケートやリクエスト送信など新しい使い方ができる(クリックで拡大)

 公開された受信機は、1/3セグメント対応の地上デジタルラジオ受信ユニットとWindows CE.NET搭載のPDAを一体化し、USB1.1で接続したもの。動画や音声を含むすべてのデータは受信機側で処理し、USBを介してPDAに伝送。KDDIが開発した専用アプリケーション「デジタルラジオプレーヤー」で再生する。側面には楽曲をダウンロードするためのメモリースティックスロットも備えている。

 また、受信機にもリチウムイオンバッテリーを内蔵したことで、150分の連続駆動が可能になった。ただし、サイズは80(幅)×169.5(高さ)×44(厚さ)ミリとちょっと大きめ。モバイル用途に適しているとは言い難いだろう。

photo 受信機の構成図。受信ユニットのコアコンポーネントは、英Alphamosaic製のDSP(Digital Signal Processor)チップ「Video Core」
photo デジタルプレーヤーの仕組み

通信連携で“できること”

 通信機能はシームレスに動作する。BMLで記述されたデータ放送の画面には、必要に応じてWebサイトへのリンクが張られており、ユーザーがクリックすると、「Internet Explorer」が起動して自動的にAir H"がダイヤルアップ接続を開始する仕組みだ。そのメリットは、「ユーザーと1対1の関係を作れること」(猪澤氏)。単なる情報の取得手段としてだけではなく、ECの認証・課金手段などにも利用できるという。

 たとえば、放送中のラジオ番組にリクエストを出したいとき。現在ならFAXやメールを使うが、通信連携の地上デジタルラジオでは、BMLで記述された専用フォームに曲名や“ラジオネーム”を記入し、送信ボタンをクリックするだけでいい。また、番組で流れた楽曲の詳細情報を入手したり、ECサイトでCDを購入したりといったことも可能だ。番組の中で気になるライブの情報が流れたら、その場で電子チケットを購入することもできる。

 そのほか、実証実験では下記の4つのアプリケーションを用意した。実験期間は3月4日から6日までと短く、既にモニターの募集も終了しているが、東京タワーの2階に設けられた特設会場に行けば、飛び入りでも地上デジタルラジオを体験できるという。

photo 放送と通信を利用した実証実験のアプリケーション
photo 左の画面はEPG。地上デジタルラジオの場合、EPGは10秒に一回のペースで放送されるが、1度に取得できるのは現在放送中の番組を含む10の番組までと限られたもの。しかし通信連携により、その先の番組データも取得できるようになる。右は、今回の実験で使われるアンケートフォーム。楽曲リクエストなどにも利用できる
photo 番組中に楽曲のダウンロードも可能(左)。ファイルフォーマットはWindows Media Audio(128Kbps)で、認証・課金は通信で行う。ただし、ダウンロード自体は通信ではなくデジタル放送のデータカルーセル方式のため、ダウンロードできるのは放送時間中に限られるという。実際にダウンロードしてみたところ、実演奏時間よりも多少短い時間で終了した(右)

携帯電話への搭載はいつ?

 KDDIは、デジタルラジオプレーヤーを他社へ技術供与することで、地上デジタルラジオの対応端末が2005-2006年には登場するとしている。ただし、自社ではPDA向けの製品を展開する予定はなく、あくまでも携帯電話への搭載を目指す方針だ。

 気になるのは端末の登場時期だが、まだまだ越えなければならないハードルは多い。プロトタイプ受信機の開発を担当したバイテックの白井舜一社長によると「採用したDSPは第1世代のもので、試作機はポケットに入れて持ち運ぶことはできない大きさだ。しかし、既に低消費電力の次世代/次次世代チップの開発が進んでいる。ゆくゆくは携帯電話の中に取り込んでいくことができるだろう」としている。

 また、KDDIの猪澤氏によると、「より大きな問題はチューナー部だ」という。地上デジタルラジオに使うOFDM方式のチューナーは、消費電力やサイズ、そしてアンテナ感度といった点で、まだまだ携帯電話に搭載できるレベルにではない。たとえばアンテナは、実用的な感度を維持しながら携帯電話と共用できることが前提。コスト面でも、携帯電話の価格が跳ね上がるようでは意味がない。猪澤氏は「研究開発は着々と進んでいるが、携帯電話への搭載時期は明言できない」と話している。

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