GSMに挑むCDMA 〜インド通信事情

» 2004年03月05日 20時44分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 10億人を超える人口を抱える大国、インド。将来的な市場規模は大きいと予想されるが、その通信インフラはどうなっているのだろうか?

 3月5日、KDDI総研が開催した勉強会で、調査部グループマネージャー、河村公一郎氏がインドの電気通信事情を紹介した。同氏は「インド電気通信業界概況 〜変貌する最後の巨大市場の動向〜」と題して、現地のモバイル/ブロードバンドインフラの普及度などをまとめた。

ブロードバンドインフラは、発展途上

 河村氏によれば、インドでは現在、ダイアルアップの通信サービスに約398万人が加入しているという。xDSLのサービスは、2003年3月時点で3万8049回線。CATV回線は、3万6380回線だ。公衆無線LANサービスは、バンガロー(Bangalore)で120ほどのホットスポットが設置されているという。

 「あまりパッとしない。もっとも、PCがあまり普及していないという、根本的な問題もある」。ちなみに、“映画大国”だけあってCATV加入者自体は約6000万回線と、比較的多いという。

 一方、モバイルの市場では、GSMサービスの加入者が、2004年1月時点で2337万加入を集めている。GPRSのサービスも登場している状況だ。

 実は、インドではここ2〜3年の間、このモバイル市場で異変があるのだという。

「固定のはずのCDMA」が携帯に進出

 従来、インドのモバイルサービスは、Bharti Tele-Venturesなどが提供する「GSM一色だった」(同氏)。しかし、米Qualcommの技術をベースにした、CDMA系のサービスを展開する事業者が現れ始め(記事参照)、今では約671万加入を集めているという。

 CDMA事業者が展開したサービスは、「CDMA-WLL(M)」(WLL:Wireless Local Loop)と呼ばれるもの。Mは、Mobileの略だ。SDCA(Short Distance Charging Area)と呼ばれる基地局を設置して、ラストワンマイルに無線を使うシステムで、当初は“固定電話サービス”として認可された。

 6社が参入しながら、最初の1年は低迷したが「Reliance Infocommが2002年末に本格サービスを展開してからは、市場が立ち上がった」(同氏)。既存網を活用し、通信料を安価に設定することで大衆に訴求したという。

 ただし、Relianceグループは“携帯電話ライクにする方針”をとり、ユーザーが複数の基地局に登録可能にするなどのサービスを提供した。

 CDMA-WLL(M)では無線を利用する以上、ある程度のモビリティはもともとある。具体的には、SDCAを中心に半径25キロ以内が、モバイルエリアとなる。基地局を多く設置し、ローミングを可能にすれば、「携帯電話」となるのは自明だ。このため、既存のGSM事業者からの反発を招いたという。

 「GSMには着信ユーザー課金があるが、“携帯もどきな固定電話”のCDMA-WLL(M)にはない。このため、接続料問題でもめたという事情もあった」

 携帯電話業界は2003年10月に、最高裁に対し「CDMA-WLL(M)は違法である」とする請願を行っている。その後、政府も事業者向けに固定・携帯の統合免許制を導入するなどの対策をとり、携帯キャリア側も最終的にこれを受け容れた。Reliance側は「罰金と追加免許料を支払うことで、統合免許を取得した」(河村氏)という。

KDDIはRelianceと提携する?

 現状、インド国内では「GSM陣営」と「CDMA陣営」がライバル関係にある状況。前者の代表がBharti Tele-Venturesで、後者の代表がReliance Infocommとなるようだ。

 河村氏は、「Relianceは目立つ存在。同じCDMAでもあるので、KDDIとしては今後、Relianceとローミングを検討する、という話になっていくのではないか」と話した。

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