3月11日から12日まで、名古屋の中小企業振興会館でインターネットITS協議会の「03合同実験発表会」が開催された。この中で、今後のモバイル通信インフラとして可能性を感じさせたのが、伊藤忠商事が展示・実験デモンストレーションをした「車車間通信技術 メッシュネットワーク」だ。
メッシュネットワークとは、データの「中継」を鍵にした柔軟なネットワーク構成を指す。図を参照してもらうと分かりやすいが、ユーザー端末(クライアントデバイス)とワイヤレスルータが中継局の機能を持ち、各ノードをP2P接続してメッシュ状のネットワークを構築する。インターネットには、アクセスポイントと呼ばれる基地局からつながることになる。
通信速度は最大3Mbps、実効で1〜1.5Mbps。技術的には、「QDMA」(Quadarature Division Multiple Access)方式を使う。
伊藤忠商事の宇宙・情報・マルチメディアカンパニー情報産業部門、ビジネスソリューション部の児玉考雄氏は、「メッシュネットワークでは、自己形成、自己修復、自動負荷分散の3つの機能を柱にしています」と話す。
自己形成の段階では、ユーザー端末とワイヤレスルータが自動的に周囲のメッシュネットワーク端末を探して、ネットワークを作っていく。インターネットに接続する場合は、出入り口となるアクセスポイントに「どこかの端末かワイヤレスルータがつながればいい」のがポイントだ。
自己修復は、メッシュネットワークの構成が変わった時に、瞬時に中継ルートを切り替える機能だ。モバイル端末によって構築されるメッシュネットワークでは、中継ルートになるユーザー端末や、ワイヤレスルータの移動が前提になる。そのため、自己修復機能により、リアルタイムで変わるネットワーク構成に対応する必要がある。
最後の自動負荷分散は、混雑したアクセスポイントがあった場合、そこに集中するデータを自動的に空いているアクセスポイントまで中継する機能だ。例えば携帯電話では、1基地局がカバーするエリアが厳密に存在するので、ユーザーから離れた場所に空いている基地局があっても「じゃあ、そちらから」というわけにはいかない。しかしメッシュネットワークでは、データが自動的に「混雑を避けて」P2P接続したネットワークを流れていくのだ。
車車間通信で行われたビデオチャット。実効で1Mbps程度がコンスタントにでており、走行しながらでも途切れずに利用できた(画像をクリックで動画再生)※ISMA準拠のMPEG-4ムービーです(253Kバイト)。再生できない方はこちらからQuickTime Playerがダウンロードできます
メッシュネットワークは、クルマ同士がつながる車車間通信を主なターゲットにしているが、必ずしもクルマだけのものではない。
「このメッシュネットワークは時速400キロでのハンドオーバー(基地局・中継局の切り替え)が可能です。これは、クルマ向けとして使えることを意味しますが、一方でメッシュネットワークは、ユーザー端末が多いほどエリア密度が上がりますので、マン(人)向けのデジタル機器に組み込まれる可能性もあります」(児玉氏)
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