携帯で痴漢を撃退できるか? 〜メルクの試み

» 2004年03月25日 12時33分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 世間では、何かと物騒な事件が続いている。やはり、用心のための防犯ブザーぐらいは用意したいもの。どうせなら、携帯電話を防犯ブザー代わりにしてはどうだろうか――。

 こう考えたのは、企業の防犯などを手がけるメルクだ。同社は、携帯向けアプリ開発のノウハウを持つ日本エンタープライズと協力して、EZweb向けの防犯サイト「安全安心生活倶楽部」をオープンした(3月5日の記事参照)。月額利用料は105円。同サイトでは、ユーザーに代わって緊急事態を周囲に通知するEZアプリをダウンロードできる。

 開発の経緯や、どの程度実用性があるのかなどを確認すべく、メルクの松木洋介社長と、日本エンタープライズのソリューションビジネス部、課長代理の前川享氏に話を聞いた。

Photo 左から、日本エンタープライズの前川氏、メルクの松木氏

半径5メートルに通知

 まずは、実際のアプリがどのようなものか見てみよう。安全安心生活倶楽部では、現在「痴漢撃退用ボタン」「急病発生ボタン」「防犯ブザーボタン」「救助要請ボタン」「海外急病用ボタン」の5種類が提供されている。

 たとえば、痴漢撃退用ボタンの場合、アプリを起動して「♯」キーを3回連続して押すと、「チカンがいます! 助けてください!」という音声が端末の最大音量で鳴る仕組み。同時に、携帯の画面に「チカンがいます」と表示され、「これを周囲に見せて、助けてもらうこともできる」(メルクの松木氏)。音は、「♯」キーを再び3回押すまで鳴りつづける。

Photo 2つの画面が、交互に切り替わって表示される。「痴漢は犯罪! 6カ月以上の懲役」という表示画面もあり、チカンに直接提示することも考えられる

 海外用急病ボタンの場合は、英語で「Help me! Somebody help me!」と音が鳴る。声が出せない状況でも、これを握り締めて倒れていれば、誰かが救急車を読んでくれるのでは、というわけだ。

 日本エンタープライズの前川氏によれば、音が届く範囲は半径5メートル。「携帯電話は、端末にもよるが60〜70デシベルの音量を出せる」。通常の防犯ブザーでは、100デシベル以上の音量を持つものが多いが(1月22日の記事参照)、液晶画面の表現力でカバーする考えだ。

 アプリを起動した際に、最大音量で鳴るようにプログラム側で設定を行う。もっとも、「機種によっては通常着信する音量で鳴る場合もある」とのこと。また、マナーモードに設定していると、音は出ない点も注意が必要だ。

 「痴漢の場合は、出勤の電車内など、被害に遭うタイミングがある程度予測できる。指定した時間にEZアプリを起動することも可能なため、電車に乗る時間に自動起動させて、マナーモードを解除しておくことが考えられる」(前川氏)

 なお、防犯ブザーボタンでは「GPS起動 110番通報」との表示を行うが、これはブラフ(はったり)。「文字で110番通報できるシステムなども運用されているようだが(1月13日の記事参照)、本格的な仕組みが警察庁、キャリアなどの間で構築されないうちは、対応を検討できない」(松木氏)。警察でなく、特定の連絡先に通知することなら、現状でも容易に対応できるという。

Photo 110番通報、と表示する。「警察にかけつけてもらうことも重要だが、その場で効果を上げるために、犯罪者を牽制することも大切」(松木氏)

高まる「防犯ブザー」のニーズ

 ユーザーの防犯に対する意識は、高まりつつある。最近では、東京都杉並区が、区内の5歳以上の園児、小中学校の児童全員、計約4万人に、防犯ブザーの貸与を決めた(杉並区からのお知らせ参照)。「実際に、連れ去られそうになって、防犯ブザーを鳴らしたところ容疑者が逃走したとの話も聞いている」(松木氏)。

 ひとくちに防犯ブザーといっても100円ショップで売っているものから、それなりの機能を備えたものまで、幅広い、と松木氏。「携帯電話は、外出時に忘れるということが少ないし、アプリを作りこめば多様な機能を実現できる」。上記のように、状況に応じてアプリを使い分けるなど、可能性を秘めているとした。

 サイト開設後、ユーザーの反応は「特にプロモーション活動を行わなかった割には、上々の反応。1週間で、5アプリ合計で194件のダウンロードがあった」(前川氏)という。

 今後の課題としては、やはり「もう少し音量があった方がいいか、検討する」(松木氏)。他キャリアでの同様のサービスも、今後1年以内に開始できるよう検討しているという。ユーザーからのリクエストに応じて、新サービスも開発したいとした。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年07月21日 更新
  1. ダイソーで330円の「人感・明暗センサーLEDバーライト(Type-C)」が意外と便利 1人暮らしの帰宅時や非常灯に便利  (2026年07月18日)
  2. なぜ「060」携帯番号は18カ月あっても延期になったのか? それでも「慌てる必要はない」現状 (2026年07月20日)
  3. 専用充電器はもう不要? 中韓スマホから国内勢まで巻き込む「USB PPS」急速充電の新常識 (2026年07月14日)
  4. 「Pixel 11」は何が変わる? メモリ減少で100ドル前後の値上げも? 出そろったうわさを整理する (2026年07月19日)
  5. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  6. ショップとAIで差別化を図る「ドコモの銀行」――住信SBIネット銀行ユーザーからは戸惑いも (2026年07月19日)
  7. 携帯番号に「060」が採用されるワケ 「電話番号とは何か」を歴史とともに振り返る (2024年10月09日)
  8. iPhoneやApple Watch一斉値上げ 17無印は14万2800円に、17eは10万円超え 加速する中古スマホ特需 (2026年07月18日)
  9. “特典終了”が続く「d払い」「dポイント」のお得さはどう変わるのか これからは「dカード」の利用が得策? (2026年07月17日)
  10. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」どちらが買いか? 2機種を使い込んで分かった“スペック表にない違い” (2026年04月29日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー