「運転中の携帯規制」のインパクト:モバイルクロスオーバー(2/2 ページ)

» 2004年06月08日 12時29分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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 しかし、「イヤホンマイク=運転中でも安全」かというと疑問も残る。筆者自身、運転中にイヤホンマイクを接続して携帯電話を使っていた時期があったが、ハンドル操作のじゃまになり、後退時に後ろを振り向くとイヤホンが耳から落ちることが相次いだ。その結果、ハンズフリーフォン機能を内蔵したカーナビの利用に切り替えた。これは安全性では最良の選択なのだが、一方で携帯電話を取り外し忘れるという失敗も時々してしまう。ドコモとau、ドコモ内でもムーバとFOMAでケーブルの仕様が違い、キャリア変更や機種変更をすると、接続ケーブルを買い換えなければならないのも、ケーブル接続の難点である。

 また900iシリーズ一部機種を含むFOMA端末の場合、自動車メーカーや市販メーカー製のカーナビ付属ハンズフリーフォン機能が利用できないモデルもある。

理想的なBluetooth製品〜将来はハンズフリーが有望

 運転中の利用を考えれば、理想的なのはBluetoothを使ったヘッドセットやハンズフリーフォンだろう。

 Bluetooth内蔵の携帯電話はauの「A5504T」が発売中(5月14日の記事参照)。ドコモの「F900iT」もまもなく発売される(6月1日の記事参照)。また、やや高価ではあるが、auとドコモはそれぞれ既存端末に接続してBluetoothを利用可能にするアダプタを発売している(、2003年11月13日の記事参照)。

 Bluetoothヘッドセットはイヤホンマイクの欠点を払拭するものとして十分に魅力的だ。NTTドコモがF900iT用のBluetoothヘッドセットを本体と同時発売する予定のほか、日本プラントロニクスがauのA5504Tで利用できるBluetoothヘッドセット「M3000」を6月下旬から発売する(予想店頭価格1万3440円)。

日本プラントロニクスが発売する「M3000」

 Bluetoothハンズフリーフォンは、トヨタ自動車が率先して純正カーナビとセットでオプションを設定している。現在、対応しているのはクラウンやプリウスなど先進的なハイテク車が中心だが、今後発売される新型車はすべてBluetooth対応カーナビがオプション設定されていきそうだ。他の自動車メーカーも同様に、Bluetoothハンズフリーフォン対応は早いと予想される。

 これには自動車メーカーの事情も影響している。従来のケーブル接続型のハンズフリーフォンだと各キャリアごとに接続ケーブルを調達・在庫しなければならず、これがメーカーの負担になっていた。しかしBluetoothなら標準規格にさえ合わせておけば、マルチキャリア対応が可能。接続ケーブルという物理的な在庫を抱える必要がない。さらにBluetoothハンズフリーフォンキットは、Bluetooth内蔵携帯電話の普及で日本の先を行く欧州や北米市場でも利用できる。グローバルで商品展開する自動車メーカーは、日本国内だけで各キャリアがバラバラな仕様を使うケーブルよりも、Bluetoothのほうが何かと都合がいいのだ。今後、改正道交法に対する自動車メーカーの対応は、「Bluetoothハンズフリーフォンキット」のオプション販売という形になっていきそうだ。

道交法改正はBluetoothケータイの追い風になるか

 一方、携帯電話キャリアはBluetooth内蔵端末のラインアップ拡大に対して、今のところ消極的だ。auはA5504T、ドコモはF900iTを出すものの、今回の夏モデルの主要機能として広がる気配はない。NTTドコモiモード事業本部iモード企画部サービス戦略マーケティング担当の増田智子主査は、

 「Bluetooth機能を内蔵すると本体の小型化が難しいのですが、今回、ハイエンド向けモデルとすることでBluetooth端末を提供できました。しかし、F900iTでBluetooth内蔵に対するユーザーニーズの高さが見られれば、将来、(900iの後継シリーズなど)スタンダードモデルまで広がる可能性はあります」と話す。

 運転中における携帯電話利用規制が厳しい欧州では、Bluetoothヘッドセットの普及や、自動車メーカーのBluetoothハンズフリーフォンキットのオプション設定が進んだ結果、Bluetooth内蔵携帯電話が普及した。日本でも同様に、罰則強化された改正道交法がBluetooth内蔵携帯電話の追い風になるのは間違いないだろう。あとはキャリア側の安全意識と責任感がどれだけ大きいかにかかっている。

 運転中は全く携帯電話を使わない、というのは現実問題としてもはや難しい。改正道交法施行後、しばらくはイヤホンマイクを利用するドライバーが増えると思うが、中長期的にみればワイヤレスのBluetoothヘッドセットやハンズフリーフォンのニーズが必ず高まる(4月5日の記事参照)。今回の改正道交法は、遅々として進まなかった携帯電話へのBluetooth内蔵を後押しする可能性が高いだろう。

神尾寿

通信・ITSジャーナリスト●IT専門誌記者、大手携帯電話会社での嘱託コンサルタント業務を経て独立。通信およびITS分野のビジネスおよびニーズ分析を専門にする。IT専門誌、ビジネス誌から一般誌まで幅広く連載を持つ。IRI-コマース&テクノロジー社客員研究員。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術委員。

▼携帯電話が財布になる日
料金代行徴収の拡大、非接触ICチップ、赤外線を使ったクレジットカード決済……。携帯電話を財布にしようとする試みは、大きくこの3つが進行中だ。それぞれ得手不得手があり、課題もそれぞれ異なる。現在の状況をまとめ、「携帯電話はどうやって財布になっていくのか」を考えていこう。

▼急接近する自動車とケータイ
携帯電話と自動車。一見すると異なる“業界”が互いに急接近している。両者のクロスオーバーがモバイル業界に与える影響は大きい。

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