Symbian、ライバルは「Microsoftではなく独自OS」

» 2004年10月12日 13時23分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 携帯電話のOSを開発・提供するためにNokiaなどの端末メーカーが集まって設立したSymbianは創業6年を迎えた(用語参照)。Symbianを搭載した最初の端末「R380」をEricssonが発表したのが2000年(2003年6月の記事参照)。この間、少しずつ標準のOSを搭載した携帯電話は増えているが、現在最大手の同社には市場の拡大、競合など課題は多い。

 同社マーケット・コミュニケーション担当部長のピーター・バンクロフト氏にスマートフォン市場の現状と、今後の戦略について聞いた。

 バンクロフト氏。最新の「Symbian 8.0」搭載端末は年内に登場する見込みだと話す

ITmedia スマートフォンについて、Symbianの定義を教えてください。

バンクロフト氏 明確な定義がないのが現状です。各社が好き勝手に“スマートフォン”といい、市場を混乱させているかもしれませんが、大きな枠では“音声通話以外の目的で用いられる携帯電話”はスマートフォンと総称できると思います。ブラウザ、アプリケーションなどです。

ITmedia デビッド・レビンCEOは、「4〜5年後、7億台出荷される携帯電話の中で2億台を狙う」という目標を明らかにしました(10月7日の記事参照)。Microsoftなどとの競争が予想されますが、どうやってこの目標を達成するのでしょう?

バンクロフト氏 大きな意味でのライバルはMicrosoftやLinuxではありません。本当のライバルは、NokiaやMotorolaなどの独自OSです。現在、市場に出回っている携帯電話のほとんどが端末メーカー独自のOSを搭載したもので、われわれが狙っている“中間層”では独自OS搭載機が圧倒的に多い。Motorolaには5〜6種類のプロプライエタリなOSがあり、Sony EricssonにはOSEというOSがあります。NokiaにはNokiaのOSがあり、SamsungもSamusung OSを持っています。これらをSymbianに変えることがわれわれの課題です。

 例えば、日本にはμITRONがあります。NTTドコモは3G端末のOSに、SymbianかLinuxを使うように奨励しており、これは歓迎すべき動きです。富士通がSymbian搭載モデルを6機種発表しているほか、シャープや三菱電機でも開発が進んでいます。

 Symbianにとって、日本市場は重要です。日本は携帯電話の利用が最も進んでいる市場で、業界全体が日本市場の経験から多くのことを学んでいます。

ITmedia Symbian OSを普及させるためには、ライセンス取得メーカーを満足させ、さらには増やすことが課題となります。

バンクロフト氏 まず、ライセンシーのニーズを満たすことにフォーカスしています。Symbian OSを使って、顧客であるオペレータの要求に合う携帯電話を構築できるようにすることです。日本では、富士通、Motorola、NokiaがNTTドコモやボーダフォンの要件を満たす端末を開発できるようにすることになります。

 Symbianの強みは、まず技術面の優位性です。最新の「Symbian 8.0」では、シングルプロセッサで通信とアプリケーションを処理できるようになりました。また、インストール数で見ても、最大のシェアを誇ります。

 ビジネス面でも、メーカーにメリットをもたらします。Symbianのライセンス料は公平です。SymbianはOSを開発する会社で、サーバ側の技術やコンテンツ、ブラウザには手をつけません。つまり、端末メーカーから見て信頼できるパートナーといえます。

ITmedia スマートフォンのキラーアプリケーションは何でしょうか?

バンクロフト氏 携帯電話は顧客セグメントに応じてさまざまな種類が提供されています。ゲーム端末の「N-Gage」では、キラーアプリケーションはゲームです。Sony Ericsoonの「P910」では、RIMの「Blackberry Connect」(10月7日の記事参照)のような電子メールクライアントでしょう。唯一共通しているアプリケーションは高品質な音声通話です。後は、デバイスの種類により異なります。英Vodafoneを見ると、音声通話を利用する顧客、電子メールを利用する顧客向けに異なる端末やサービスを用意し、コンテンツも異なります。

 Symbianが市場に望むのは、異なる顧客セグメント向けにさまざまな端末が登場することです。そのために、われわれは選択肢のあるユーザーインタフェースは重要だと考えており、これを実現するOSを提供します。

ITmedia 今年2月にPsionがSymbianの株式を売却した際にNokiaが全て買い取り、Nokiaの保有株式比率が6割を超えると予想されました。結局それは実現しませんでしたが、Nokiaの影響力は強いのでしょうか?

バンクロフト氏 Nokiaは、Psionの株式を他社と分け合うことを望んでいました。Psionの株式に関しては、他社がNokiaの買い占めを阻止したのではなく、Nokiaが他社の参加を望んだと見るべきです。Nokiaは業界全体でSymbianを支え、各社が資金供給してスマートフォン普及のための取り組みが展開できることを望んでいます。

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