Winny被害の実態とiPodケータイのススメ

» 2005年03月08日 02時30分 公開
[江戸川,ITmedia]

 ドコモ本社内に設置されたバーチャルな研究組織、「モバイル社会研究所」。そのシンポジウムでは、携帯電話と社会との関わりについて行われた学術的な研究成果が発表された。

 「著作権の最適保護水準を求めて」というテーマに取り組んだのは、慶應義塾大学経済学部助教授の田中辰雄氏。特に興味深いのが、題材としてファイル共有ソフトのWinnyを取り上げた点(2004年5月17日の記事参照)。Winnyの存在の是非をも占う意外な研究成果とは。

 田中氏は、ネット上の違法コピーによって、音楽CDや映画のDVDが本当に売れなくなってしまうのかを検証したかったという。そこで登場するのがファイル共有ソフトWinny。ソフト起動時に表示される参照数とバイト数を見ることで、ダウンロード数を想定できることに着目した。

 調査対象としたのは、オリコン30位に入っている音楽CDで、演歌などのダウンロード対象になりにくいものを外している。タイトルごとにCDの売り上げ枚数とダウンロード数を散布図に表したのがこちらだ。

右肩上がりの傾向は、人気のCDだからダウンロードが伸びているという状況に過ぎない。Winnyの影響を証明するなら、むしろダウンロードが多ければCDが売れないという、右肩下がりの分布が必要になる

 田中氏が導き出した答えは、“WinnyによってCD売り上げはむしろ伸びている”ということ。つまり視聴したことで購入につながるケースもある。したがって、携帯のiPOD化も、違法コピーを恐れるのではなく、どんどん商品化したらいいというのが結論だ。

 「そこにコピーがあるとしても、CDを買う人は買うし、買わない人は買わない」と歯切れが良い一方で、ディスカッションゲストの林氏から「もうちょっと法学の勉強をしていただきたい」と指摘されたり、大塚氏からは「CD売り上げではなく、合法ダウンロードビジネスに与える影響を調べたほうがいいのではないか」といったコメントも。研究を重ねる余地はまだあるようだ

左より、モバイル社会研究所副所長の山川隆氏(進行)、ソニー知的財産センターの大塚祐也氏(ゲスト)、法学者の林紘一郎氏(ゲスト)、田中氏

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