「フルブラウザ」商標登録が呼んだ波紋

» 2005年06月01日 17時37分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 既報のとおり、NTTドコモが「フルブラウザ」という単語を商標登録出願していることが分かった。フルブラウザとは、近年携帯向けに搭載が進む“PCサイトを閲覧できるブラウザ”を指す。認可されれば、フルブラウザ搭載端末をリリースする各社が自由に名称を使えなくなることは必至だ。

 関係各社の反応を探った。

商品説明にも神経をつかう?

 フルブラウザが商標登録された場合、関連商品を扱う事業者にさまざまな影響が生じてくる。単純に考えても、パンフレットなどにフルブラウザというワードを避けるよう、神経をつかわなければならない。

 フルブラウザを搭載した「AH-K3001V」をリリースしているウィルコムや、同じく「W21CA」を販売しているKDDIは、この問題をどうとらえているのか。両社の広報部に聞くと、冷静なコメントが返ってきた。

 「まだ商標を出願した段階。これからどうなるかは分からないので、今はなんともコメントできない」(KDDI広報部)。ウィルコムも、現段階では特に対応などを話せないという。

 少し変わったコメントをしているのが、携帯向けフルブラウザ「Scope」を開発しているプログラマーズファクトリだ。同社はScopeがJavaScriptに一部しか対応していないなど、「PCサイトを完全に閲覧できる」ものではないと考えている。このため“フル”ブラウザという表現は避けていたという。「製品リリース直後から、フルブラウザという言葉は一度も使っていないはず」(同社)

 ただ、広く業界関係者に意見を聞いてみると“個人的”な立場として、こうした商標出願を疑問視する見方も出ている。特に多いのが「フルブラウザは、既に一般用語化しているのではないか」という指摘だ。

 日常的に使っていた単語が、ある日突然商標だからと使えなくなる――。これはある種の言葉狩りのようなものだ。フルブラウザの分野では後発にあたるドコモが、この名称を独占する可能性があることも、問題をややこしくしている。

「ブラウザ」も商標登録出願されていた

 実は、ドコモは過去に似たような商標登録出願を行っている。2000年9月11日に、「BROWSER/ブラウザ」という商標登録を出願しているのだ。

 出願番号は「2000-099559」。特許電子図書館で、商標検索から「ブラウザ」と入力すると確認できる。呼称は、ブラウザ、ブラウザーの両方となっている。ただし、この商標は最終的に認められなかった。

 KDDIやウィルコムが静観を決め込むのは、今回も商標が認められない可能性が十分あることを知っているから……と推測することもできる。商標審査では、「自己の商品役務と他人の商品役務とを識別」できないものは拒否されるから、フルブラウザは一般用語だ、と商標が認められない可能性もある。

 一方で、意外な単語が商標になっている場合もある。有名なところでは、「着メロ」は商標登録だ(2002年7月4日の記事参照)。ただこのケースでも、着メロが明らかに一般用語化しており、特に商標の利用をめぐるトラブルが顕在化したことはないようだ。

 フルブラウザ開発を手がけるjig.jpは、今回のケースはフルブラウザの注目度がますます高まっていることの現れではないかと見る。

 「この商標登録出願によって、ドコモが今後『フルブラウザをやるぞ』という姿勢が見えた」(jig.jp)。フルブラウザに関わる人間としては、この分野のますますの発展を期待するとした。

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