「CHOKKA」不振で巨額負債――平成電電の経営破たん

» 2005年10月03日 22時11分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「すべては私の経営責任です。申し訳ありません」――1200億円の負債を抱えて経営破たんした平成電電の佐藤賢治会長は10月3日、都内で開いた会見でそう謝罪した。だがずさんな経営計画を見直すことなく事業を継続した理由については明確な説明を避けた(関連記事参照)

 経営が行き詰まった一番の要因は、直収型固定電話サービス「CHOKKA」の不振。来年1月末までに100万契約を獲得する計画だったが、9月末現在での開通ベースの契約者数はわずか14万5000にとどまった。

photo 「再建に向けて努力します」と佐藤会長

 CHOKKAは2003年7月に開始。有名俳優を起用した広告宣伝には月間約1億5000万円を投じた。しかし申し込み数は直近でも月間約2万にとどまり、100万契約という目標には到底届きそうになかった。

 「ユーザー数は順調に伸びていたし、あらゆる手を尽くし、100万契約を目指して経営努力を続けていた」と佐藤会長は話すが、記者からは「もっと早く経営計画を見直せたはず。理解できない」などという声が相次いだ。

 ユーザー獲得が思うように進まなかった理由として、同社は(1)他事業者の直収電話への参入や値下げで、競争が激化したこと、(2)CHOKKAに切り替えるためのNTT回線からの移行手続きが極めて煩雑だったこと――を挙げている。

 (1)については、昨年から日本テレコムやKDDIが相次いで直収型サービスに参入。低価格を打ち出して攻勢をかけていた。平成電電は、CHOKKAの営業秘密を日本テレコムの親会社・ソフトバンクに盗まれたとしてソフトバンクを提訴している。(2)について佐藤会長は「一言で言えないほどのことがあった」とし、詳細は別の機会に話すとした。

 CHOKKAや、ADSLサービス「電光石火」などのサービスは今後も継続する。「民事再生法適用を申請したのはサービスを継続するため。ユーザーには是非、サービスを使い続けていただきたい」。

 同社が出資するドリームテクノロジーズと共同で進める予定だったWiMAXとWi-Fiを組み合わせた全国向け高速データ通信サービスは、「スポンサーの意向に沿い、事業を継続したい」とした(関連記事参照)

負債1200億の“正体”

 負債総額の内訳は、CHOKKA設備のリース代金など計約900億円と、累積債務300億円。平成電電はCHOKKAの設備の大半を「平成電電システム」と「平成電電設備」という2社からリースで借り受けていたという。

 この2社は「平成電電」の名が付くものの、平成電電とは資本関係や役員の相互派遣などはない、まったくの別会社だという。

 2社は特別目的会社(SPC)として、資金調達目的とした匿名組合「平成電電匿名組合」を運営。資産を証券化し、「予定現金分配率10%相当」などと高利回りをうたった金融商品として売り出し、これまでに約1万9000人から計約490億円を調達してきたという。

photo 平成電電設備のWebサイト

 会見では、匿名組合の詳細や、2社と平成電電、佐藤会長との関係をただす質問が相次いだが、佐藤会長は「資本関係のない別の会社がやったことで、詳細は分からない」と述べるにとどまった。

 平成電電も1年ほど前まで、CHOKKAの利益の一部を分配する個人向け投資商品「平成電話パートナーシステム」を売り出し、約150人から計約20億円を調達していた。民事再生法の適用を受けた場合は契約上、返済義務がなくなるという。

 佐藤会長は「出資者に対しては責任を感じている。経営責任を果たすために営業は継続し、できる限り良いスポンサーを探して全力で事業を再建する」とコメント。再建後はスポンサーの意向に従って自身の去就を決めるとした。

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