携帯向けの放送事業や映像配信サービスが、世界各国で開始されている。中でも、技術的に優位性を持っているとうたうのが米Qualcommが提供する携帯放送サービス、MediaFLOだ(7月26日の記事参照)。同社エンジニアリング担当副社長のロブ・シャンドック氏に、MediaFLOの現状について聞いた。
ITmedia MediaFLOの商用化に向けて、現在はどのような状況でしょうか?
ロブ・シャンドック 来年10月の米国でのサービス開始に向け、フィールドテストは順調に行なわれています。ここにお見せするテスト端末ではQVGAサイズ、毎秒15フレームの動画をスムーズに受信可能ですが、現在は毎秒22フレームクラスの動画も問題なく受信できています。商業サービス開始時には予定通り、毎秒30フレームのでの配信を開始します。
技術的な面以外、たとえばコンテンツ供給会社との価格交渉や利用する周波数帯の移動交渉など、各関連企業や関連部署との交渉も並行して行っています。これらは新しいメディアを開始するときには必ずつきまとうものであり、事業計画の中に最初から想定していた問題です。よって、サービス開始への障害にはならないと考えています。
ITmedia 室内での受信感度や電池の持ちはどうでしょうか?
ロブ・シャンドック 放送受信ということで、家屋内などでは受信感度が弱いのではと心配されるかもしれませんが、MediaFLOは携帯電話の技術をベースに開発されています。携帯同様に室内でも高感度を保つことは、当初から開発の念頭においていました。そのため室内でも室外同様の感度で利用することが可能です。
消費電力が少ないのがMediaFLOの特徴の1つですが、このテスト機では標準バッテリで3時間、大容量バッテリで5時間前後の連続受信が可能です。たとえばドラマやスポーツ中継を見る際にも、途中でバッテリを交換する必要はないでしょう。商業サービス開始時に市場投入する端末でも同レベルのものを投入したいと考えています。
ITmedia 韓国や日本などででも携帯電話向けのテレビ放送が本格化していますが、MediaFLOが優れている点はどのあたりでしょうか?
ロブ・シャンドック MediaFLOの最大の特徴は、携帯電話向けに特化していることです。消費電力が少なく長時間駆動が可能なことはお話しした通りです。また消費電力が少なければ利用中のバッテリの発熱を抑えることもできます。テレビを見ていたら携帯電話のバッテリが熱を持ってきてしまう、ということもありません。
映像圧縮はH.264を利用していますが、これも携帯電話の視聴に最適化するよう、チューンナップを行っています。コンテンツの中身も重要ですが、流れるコンテンツの画質や音質も十分満足のできるものを提供することが可能です。
ITmedia CDMA2000以外の端末での利用は可能なのでしょうか?
ロブ・シャンドック MediaFLOは携帯電話に2種類のチップ――RFチップとOFDM復号化チップ――そして受信アンテナを組み込むことで受信可能になります。CDMA2000だけはなく、W-CDMAはもちろん2G端末でも搭載は可能です。ただし端末のビデオ処理能力は3G端末のほうが高速なため、3G端末での搭載が現実的でしょう。また当社以外のチップセットを利用した端末にもMedliaFLOのチップは搭載可能です。
ITmedia MediaFLOの今後の展開を教えてください
ロブ・シャンドック まずは来年、米国でサービスを開始することを第一目標においています。それと平行しながら各国へのサービス拡大を目指しています。もちろん利用する周波数の取得を最初に行う必要があるなど、すぐに事業展開できるものではありません。当社としては良いコンテンツを良い品質で、そして有料で配信することで通信事業者や放送業界にメリットがあることをアピールしながら、MediaFLOの採用を各国に働きかけていきたいと考えています。
ITmedia 将来、携帯電話でテレビを見るスタイルは定着すると思われますか?
ロブ・シャンドック 現時点ではまだ携帯電話で音楽を聴く事が少しずつ普及している段階で、テレビ放送を視聴する利用者はそれほど多くはないでしょう。しかし今では音楽専用プレーヤーなどを利用して音楽を聴くことは、あたりまえのことになってきています。将来は携帯電話とヘッドセットは必ず一緒に持ち運ぶものになり、どこでも気軽に映像を楽しむスタイルが定着するのではないでしょうか。
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