「D901i」(記事一覧参照)からハイエンドFOMAのボディ形状をスライドスタイルに変更した三菱電機。3代目となる「D902i」(記事一覧参照)では、2.8インチの大画面液晶を搭載しながら19.5ミリという薄さを実現し、新しさを印象づけた。
スライドボディの1つの完成形ともいえるD902iの開発背景や、技術的ハイライトについて、三菱電機デザイン研究所の谷田川智弘氏、三菱電機NTT事業部NTT事業部の荻田良平担当課長、同課長の谷田貝篤志氏ら開発陣に聞いた。
「スライドはFOMAで3モデル目。D902iは『ホップ、ステップ、ジャンプ!』のジャンプといえる存在にしたかった」──。三菱電機の荻田氏は、D902iの開発背景をこう表現する。これまでのスライド携帯の集大成ともいえる、強烈な存在感を持つ端末を開発したいという想いが開発陣の中にあったという。
「D902iの開発にあたっては、“片手で操作できる”“液晶画面が表に出ている”というスライド携帯のメリットを、どのように進化させるかがポイントだった。片手で操作できるという点では、サイズをとにかく小さく、薄くすることを目指し、液晶画面については2.8インチのワイドQVGAを搭載することで、進化した携帯であることが一目で分かるようにした」(荻田氏)
これだけ大きい画面を搭載してもコンパクトなサイズを維持できるという点で、スライドスタイルは大画面液晶との相性がいいと荻田氏。「大きな画面で大きなカラダになってしまってはダメ。D902iは、大きな画面でスリムなカラダにできた。目指したところはできたかな、と思っている」(荻田氏)
ボディの薄型化・小型化を実現するために、部品の小型化や内部構造の効率化を徹底的に行った。「部品を小型化するための見直しはもちろん、基板の配置方法を変え、実装密度を高める工夫をしている。これは3次元パズルを組み立てるように、隙間を見つけては埋めていった」(荻田氏)
さらに、小型化のための大きなアイデアがあったというのは、デザイン研究所の谷田川智弘氏。「D902iは、前の2モデルよりも、液晶画面が12ミリも縦に長くなっているが、ボディの全長(高さ)は1〜2ミリしか伸びていない。なぜかというと、カーソルキーと液晶の距離が非常に近いためだ」(谷田川氏)
液晶表示部の下に液晶を駆動させる基板を置き、さらにその下にカーソルキーと置くいうように、水平面上に並べるのが一般的なレイアウトだと谷田川氏。ただ液晶駆動用の基板はガラス上にあり、その基板の上にキーを載せることはできない。キーを押したらガラスが割れてしまう心配があるからだ。しかし、それを構造的に解決してカーソルキーを基板の上に載せ、押しても割れないようにしたのがD902iの構造面での技術的なハイライトだったという。
「それに一役買っているのがマグネシウム合金のケース。D902iのボディはモノコック構造で、ケースにマグネシウム合金を使っている。液晶のドライバ基板はカーソルキーのあたりまできているが、その基板の上に本体の上ケースがかぶっている。そして、そのケースの上にキーの基板が載っていて、一番上にキーがある、という構造だ。マグネシウム合金は強度が高く、キーを押しても下のガラスが割れる心配がない。ただ多層になったために、キー部分は厚みが増して少し盛り上がっている」(谷田川氏)
しかし、ただ薄く小さくすればいい、というわけではない。持ちやすさやデザイン性、コンパクトなサイズを両立させることを重視したと谷田川氏はいう。
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