KDDIとテレビ朝日、ワンセグで通信・放送融合の試験サービス

» 2006年03月23日 13時49分 公開
[ITmedia]

 KDDIとテレビ朝日は3日23日、4月に本放送を開始する「ワンセグ」で共同事業を検討すると発表した。携帯とテレビ放送を連動させたビジネスモデルやサービスモデルを確立すべく、4月から試験的にテレビ番組連動サービスを提供する。

 KDDIは、以前から携帯電話と放送を連携させる事業の構想を発表していたが(2月6日の記事参照)、テレビ朝日というパートナーを得て、いよいよ実証実験に入る。KDDIのコンテンツ・メディア事業本部 メディア本部 メディアビジネス部長の神山隆氏は、共同事業のねらいを「テレビと携帯の連携による新たな可能性を探ること」と話す。試験サービスの期間は4月から9月までの予定だ。

KDDIとテレビ朝日がそれぞれ今回の実証実験において検証したい点を説明した。今回は広告への付加価値、物販との連携、オンラインコンテンツ販売の3点を主に検証する

実証実験は4月1日からテレビ朝日の番組で実施

Photo テレビ朝日の事業局デジタルコンテンツセンター長、小西裕之氏

 4月から開始するテレビ番組連動サービスの実証実験では、

  • テレビ広告に付加価値を提供できるか/広告から購買行動へつなげることができるか
  • 通信販売番組とEコマースとの連携で従来より高い効果が得られるか
  • 携帯向けサイトなどのオンラインコンテンツビジネスにプラスの効果があるか

といった点を検証していくという。

 具体的には、テレビ朝日で平日の深夜に放送している音楽番組「オンタマ -音魂-」、月曜から木曜の深夜に放送しているショッピング番組「セレクションX」、4月から放送開始予定の情報番組情報番組「ちい散歩」のショッピングコーナー、そして木曜ドラマ「7人の女弁護士」などで、ワンセグのデータ放送を活用した連動コンテンツを流し、視聴者からの反響などを調べる。

 「オンタマ -音魂-」では、KDDIが同番組に1社のみで広告を出している関係もあり、データ放送でauのキャンペーン告知を行い、キャンペーン専用サイトへの誘導などを行う予定だ。広告視聴から情報ページへのアクセスや購買行動などのアクションを起こさせる、という広告展開を行うためのモデルケースにするという。そこでどの程度の人が告知を見てリンクをクリックするのか、従来の空メールを送る方法などと比べて、キャンペーンサイトへの誘導効果がどの程度違うか、応募者のプロフィール(年齢や性別などの属性)が変わるか、といった点を検証する。

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 「セレクションX」や「ちい散歩」のショッピングコーナーでは、データ放送で商品リストや注文方法などを表示する計画。商品説明等を見せた後は、「au Shopping Mall」上で展開する「tv asahi shopping」に誘導し、商品が購入できるようにする。番組内で商品販売用のURLを告知するような方法と比べ、購買動態が変わるかどうか、またau Shopping Mallを活用することで利用可能になる決済手法「まとめてau支払い」などの影響を分析する。

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 「7人の女弁護士」では、ドラマと連動したデータ放送を実施する。携帯サイトへの誘導だけでなく、「着うた」「着ボイス」などの公式コンテンツの販売、情報提供、視聴者参加型コンテンツや専用のオンラインコンテンツの提供などを企画しているという。こういったサイトがどう利用されるのか、どんなユーザーが利用するのかといった動向を調査する。

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 このほか、「奇跡の扉 TVのチカラ」「旅の香り」で番組内容の紹介などを行う計画や「三竹占い」で次回予告や内容紹介、公式サイトと連携した占いの案内などを行う予定がある。

 テレビ朝日の事業局 デジタルコンテンツセンター長の小西裕之氏は「ワンセグ放送は新しいサービスなので、収益を上げるためには既存のものとは異なる新しいビジネスモデルが必要」と話す。実際、地上デジタル放送をサイマルキャストするだけでは、放送事業者側にはあまりメリットがない。しかし、データ放送などと連携を図り、顕著な広告効果が得られることや物販による営業外収入の増加があることが確認できれば、収益拡大につながる。「いろいろなことを試し、どうすれば収益を上げていけるかを検証したい。」(小西氏)

KDDIの役目は裏方的なサービスを提供すること

Photo KDDIのコンテンツ・メディア事業本部メディア本部メディアビジネス部長、神山隆氏

 今回の試験サービスにおけるKDDIの役割は、まとめてau支払いのような料金の回収代行プラットフォームや、物販プラットフォームとなるau Shopping Mallの提供をする裏方的なもの。広告主に対して利用者属性を提供したり、ログに基づく効果を測定するサービスも行う。もちろんワンセグ対応端末の発売を通してプラットフォームを広げるという役割も担う。

 今回の実証実験で得たノウハウは、KDDIとテレビ朝日が独占的に利用するわけではない。「広く放送事業者全般で活用できる方法論として確立させたい」とテレビ朝日のデジタルコンテンツセンター プランニング・プロデューサーの西勇哉氏。KDDIとしても、特定の放送事業者とだけ手を組むつもりはなく、「実験はオープンな形で行っていく。テレビ朝日以外のテレビ局とも等距離でつきあっていく」(神山氏)という。

 なお、事業検証の段階では「両社の動きを縛ってしまう恐れがあるので」(神山氏)出資などの資本提携は行わない。実験中は応分の費用負担を両社で行っていくとのこと。試験サービス期間中であっても、商用化のめどが立てば早期に事業化することも検討する。

会場には「オンタマ -音魂-」の実際の放送時の様子が体験できる端末が用意されていた。映像の下に、BMLで書かれたデータが表示されている(左)。デモはKDDIのワンセグ対応端末「W33SA」(中)と「W41H」(右)

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