使いやすさと質感の高さへのこだわり──「W41SH」誕生秘話開発者に聞く「W41SH」(2/2 ページ)

» 2006年09月25日 20時23分 公開
[園部修,ITmedia]
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メインターゲットはスタイリッシュな大人の女性

Photo 通信システム事業本部 デザインセンター 主事の三好康彦氏

 デザイン面では、使いやすさを追求したのに加えて、従来auが得意としてきた若年層向けではなく、“大人の女性”をメインターゲットに据えているのも特徴だ。端末のデザインを担当した三好氏は次のように話す。

 「メインのターゲットユーザーは30代くらいの女性を想定しています。auが得意とする若年層ではなく、そこより少し上の層を狙うことで、今までと違うユーザー層への広がりが出ると考えました。少し年上の女性がW41SHを持ってくれることで、若い人もそれにあこがれてW41SHを持つようになってくれるのが理想です。もちろん、男性にも違和感なく持っていただけるデザインになっています」(三好氏)

 大人の女性は、上質な素材感や細部の仕上げ、スマートなフォルムなどにこだわりがあるとシャープでは分析している。そのため、十字キーを単なるプラスチックの板ではなく、立体的で奥行きのある、時計の文字盤のような仕上げにしていたり、ヒンジ部やカメラのレンズ周りなど、要所要所に金属感のあるパーツを配置して、異なる素材の組み合わせによる「複合的な魅力」(三好氏)を表現していたりと、質感の高さは同社のドコモ向け端末「SH902iS」や「DOLCE SL」にも通じる部分がある。

 また、表面の布目のような模様も質感の高さを表現する上で欠かせない要素だったが、「一時は製品化は無理なのではないかと考えたときもあった」(三好氏)と話すほど苦労した。

膨大なサンプルを作り実現したファブリック調の外装

 W41SHのファブリック調の外装は、金型にエッチング加工を施し、成型するプラスチックの表面に微細な凹凸を作ることで表現した。山と谷の間は70〜50ミクロンほどで、さらにパールやメタリックの塗装を施して相乗効果を持たせ、陰影が目立つようにしている。

PhotoPhoto 表面は布目のような質感をイメージしたデザインになっている。表面の突起は50〜70ミクロンほどの深さで、複雑な模様がパターン化されている(左)。6分割された金型を使うことで模様は側面にも配されている。金型の継ぎ目は、目を凝らしてみてもなかなか分からない(右)

 驚くべきは端末の側面にもパターンが入っていることだ。金型で成型する部品は、型から取る際に外れやすいよう、側面には加工を行わないのが一般的だ。W41SHの外装のように側面まで回り込んだ模様を表現すると、普通の手法では側面が引っかかってしまって、型から抜けない。

 「結局、金型を上下左右と前後の6方向に分割して抜くようにすることでようやく実現しました。型が分かれているので、継ぎ目がどうしても出てしまうのですが、これも一見分からないレベルに仕上げてあります」(三好氏)

 また、この凹凸をいかにきれいに見せるかにも、試行錯誤を繰り返した。

 「深すぎると溝に汚れがたまってしまいます。逆に浅すぎると、使っているうちに凹凸が消えていってしまう恐れもある。本当にたくさんのサンプルを作って評価を重ねました。汚れも、実際に口紅を付けて乾いた布でこすり、ちゃんと取れるかどうかといったことも検証しました」(中田氏)

 表面のパターンを、布目のように見せるのも容易ではなかった。最初はパターンをよく見ると「KDDI」や「au」の文字になっているといったアイデアもあったという。

 「ただ、文字だと小さくしても意外にはっきりと認識されてしまい、美しく模様のように仕上げるのが難しかった。布目をそのまま模様にしたようなものも作ってみましたが、そうすると逆に布っぽくなく平面的になってしまいました。結果的に、ある程度不均一なパターンを重ねていった方が複雑な見え方をしていいというところにたどり着くまで、ずいぶんと時間を要しました」(三好氏)

 こうして、指紋や手の脂も付きにくく、こすれた傷なども目立ちにくい、長く使ってもずっと見た目の印象が変わらないボディができあがった。


 最後に中田氏は、開発陣がW41SHに込めた思いをこう話した。

 「スペックなどと違って、カタログなどを見ても分かりにくい部分ですが、W41SHは一度使っていただけると“これはいいね”と思っていただける端末になっていると思います。次に買い換えるときにもシャープにしたいと思っていただけるような端末を目指しました。現在は対応していない新サービスもありますが、ユーザーの声などを反映しつつ、次のモデルも開発できればと思っています」

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