SO903iは着うたフルをはじめ、AAC/HE-AAC/Enhanced AAC/ATRAC3/MP3といった多彩なミュージックフォーマットに対応することが特徴のひとつ。ここまでのマルチコーデック対応を果たしながらも、ミュージックプレーヤーとしての軽快な操作性を維持するには相当の苦労があったという。
ソフトウェアを担当した佐藤氏は苦笑しながらもふり返る。「さまざまなコーデックに対応しつつ、しかも使いやすさを維持するのはかなり大変でしたね。しかも、外部メモリを利用すれば最大で5Gバイトまでの容量を持ちますから、メモリがいっぱいの状態でもストレスのない操作性を実現するには相当な努力が必要でした。多分、単体のオーディオプレーヤー(のソフトウェア)を作成するよりも大変だったと思います(笑)」
デザインについては、さまざまなコンテンツへ対応するために本体を大型化し、大画面液晶を搭載することまでは企画段階で決まったものの、細部についてデザイン担当の平野氏がこだわったのは「王道」であることだったそうだ。
AV機能が充実しているとはいえ、SO903iは携帯電話。複雑な機能をいかに複雑そうに見せないかにはデザイナーのセンスが問われる。基本的にSO903iは「開くと携帯電話/閉じるとミュージックプレーヤー」という一線を崩さぬようにデザインされており、閉じた状態での発着信やメールの送受信は行えないようになっている(関連記事:背面の液晶とボタン操作で何ができる?)。
「すべての機能が直感的に操作でき、普段は音楽を聴かない人が使っても違和感のないモノにしたかったんです。ですから、なるべく過度なデザインを施さないように注意しました」(平野氏)
個人的にSO903iで残念に感じたのが、WMAの未サポート。単にWMAファイルが利用できないというだけならばさほどのマイナスとは感じないが、NTTドコモも推進するナップスターが利用できないのは非常に残念。
「最初はWMAに対応させるという意見もありました。ただ、対応ビットレートの幅も含めて開発を進めていくうち、どうしても全部のコーデックに対応させるのは困難という結論になりました。技術的には可能ですので、今後の課題ですね」(白川氏)
当初はボタンのかわりに静電式パッドを使うなど先進的なアイディアも出されたそうだが、携帯電話としての「王道」であることを意識し、あえて搭載されなかった。また、音質を追求するユーザーのみを対象とするならば、ヘッドフォンは別売とするほうがベターともいえるが、「買ってすぐに楽しめるという利便性はなくしたくなかった」という考えからヘッドフォン/平型変換コネクタ/USBケーブルがパッケージに付属する構成となっている(ちなみに、本体メモリには4曲がプリセットされているので、購入してすぐに音楽ケータイとして楽しめる)。
「今後のソニー・エりクソン製端末の指針となるモデルを作り出せた自信はあります」白川氏は満足そうな笑みを浮かべた。
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