サービスを提供する側、つまりサービス/コンテンツ事業者の視点で未来の携帯を考えると、そこには「サービスの民主化」が起こると孫氏は考えている。
「これまでマーケティングやコミュニケーション、課金、決済といったものは大企業にしかできませんでしたが、モバイルによって中小企業やSOHO、そして最終的には個人レベルでも同じようなことができるようになっていく」(孫氏)
例えば地域の商店街のある床屋が、高校生向けに五分刈り500円キャンペーンを打つとする。その場合、今まではマーケティングツールとして利用できるのは新聞の折り込みチラシや地域密着型のフリーペーパーなどしかなかった。しかし携帯を使えば半径数百メートルの範囲にいる高校生だけに向けた告知が、非常に低価格で行えるようになる。GoogleのAdsenseやAdwordsは1クリック0.0x円という計算ができるので、これを用いて1万円分だけ広告を打つ、といったことも可能になるとの見通しを示した。これにより、現在の広告市場に含まれていない、潜在的なマーケティングができる可能性があるという。
また課金も0.0x円単位といった“マイクロペイメント”が可能になり、「非常に低価格なものや、半端な数のもの、余ったポイントなどを有効活用できるようなシステムができる」と話した。
最後に孫氏は、未来の携帯の具体的な方向性として、以下の4つのポイントを示した。
ツール群の集約については、異論はないだろう。すでにおサイフケータイや音楽ケータイ、ワンセグケータイのように、電話以外の機能が次々と携帯に統合されているし、ホテルのチェックインに携帯を用いたりする事例もすでにある(11月27日の記事参照)。孫氏は「いずれや車のキーなどにも携帯が使われるような日が来るかもしれない」と話す。
ネットワーク上のデジタル人格情報とは、今流行のSNSやフレンズリスト、メッセージング機能のステータス、アバター、プレゼンスプロバイダなどを指す。これらは、すでにネット上に広く公開されているものが多い。携帯電話は元来コミュニケーションツールではあったものの、「今までは知っている人(アドレス帳に載っている人や連絡先を知っている人)にしかかけられなかった」と孫氏。しかし今後は「人格情報をネットなどから検索して、気の合いそうな人などと知り合うきっかけになる」。こうしてコミュニケーションは既知の間でだけ行われるものから、未知のものとの遭遇を生むものへと変わっていくという。
では、最後のソリューションの提供インタフェースになるとはどういうことだろうか。孫氏は笑いなからこう話した。
「例えば“ちょっと食事をしたい”と思ったとき携帯を開くと、いろいろな人からの評判やレーティングを元に、周辺のお店をリコメンドしてくれたり、何か困ったことがあったときに携帯を開くと、解決する方法を示してくれたり。携帯は、例えば折りたたみ型の端末だとしたら、困ったときにぱかっと開けるデバイスになるんじゃないでしょうか。のび太君が困ったときに“ドラえも〜ん”と泣きつく感覚で、携帯を開く。そんなふうになっていくんじゃないかと思います」(孫氏)
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