“もっとも音がいい携帯”をめざして──「W43K」の挑戦開発者に聞く「W43K」(2/3 ページ)

» 2006年12月14日 17時29分 公開
[園部修,ITmedia]

めざしたのは「携帯電話の中でもっともいい音」

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 auの秋冬モデルでは、携帯端末の音質向上を図るため、多くの機種でヤマハの音源チップを採用した。また「DBEX」という、圧縮された音楽データで失われやすい高域や低域の音を補完し、音質を向上させる技術を搭載している。さらに機種別に音のチューニングまで行った(12月13日の記事参照)

 だがW43Kは、それらに加えて「BBE M3」という技術も搭載している。カーオーディオや薄型テレビなどでは定評のある音質改善技術だが、携帯電話でBBE M3を搭載したのはW43Kが初めてだ。BBE M3は、DBEXと同様に、圧縮された音楽データで失われがちな高域の修復や音の明瞭度の改善、周波数帯域の拡大といった効果が得られる、携帯電話用に開発された技術だ。

 「BBE M3は、数ある類似の技術の中でも、効果がしっかり出るので採用しました。処理量が少ないため、消費電力も低く、連続再生時間にもほとんど影響はありません。目指すところはDBEXと同じなのですが、ユーザーの選択の幅を広げるために用意しています。ほぼ標準機能として搭載されているDBEXだけでは差別化にならないというのも、BBE M3を搭載した理由です。ビットレートの低い着うたフルの音も、iPod(128kbpsのAAC)並みの音で聴けると思います。携帯電話の中ではもっともいい音が出せると自負しています」(川居氏)

 またW43Kには、イコライザにユーザー設定を2つ用意しているのもポイントだ。DBEXやBBE M3をオフにすると、イコライザによる調整が可能になる。ユーザー設定では7バンドの音を9段階に自由にカスタマイズできる。Normal、Pops、Rockといった、音楽に合わせたイコライザ設定を持つのはもはや当たり前だが、ユーザー設定が可能な機種は少ない。

PhotoPhotoPhoto W43Kに搭載されている高音質化機能「DBEX」や「BBE M3」を解除すると、イコライザによる音質の調整も利用可能になる。プリセットが7つあるほか、ユーザー自身で設定可能なOriginal1とOriginal2も用意。7つのバンドで9段階のカスタマイズができる

音楽携帯の“顔”としてのセンサーリングキー

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 単なる“音楽をフィーチャーした携帯”ではなく、これまでにない音楽携帯を目指すために、ウーファーの搭載や音質の向上に加えてもう1つ、「センサーリングキー」という特徴的な機能も用意している。このデバイスは、デザインを担当した播磨氏が考案した。

 「いわゆる音楽携帯の操作部分は、大抵上にディスプレイがあって、下に操作キーがある。ディスプレイと操作部が分かれているのです。でも携帯電話の音楽機能の“顔”って、それでいいのか、携帯の音楽機能は、もっとシンプルでスマートで使いやすいものにならないかと、常々考えていました。そんな時に思い浮かんだのがセンサーリングキーのアイデアです」(播磨氏)

 このセンサーリングキーは、操作キーと有機ELディスプレイとタッチセンサー、それに着信や音楽に合わせて光るLEDが融合されており、曲の選択から再生/停止、曲送り/曲戻し、楽曲名やアーティスト名の参照といった、音楽にまつわる操作がすべて1つの場所で行えるのが特徴だ。このデバイスを形にできたことで、ユーザーは煩雑なキー操作を想像しないですみ、デザイン的にもシンプルにまとめることができた。

 「こうできないかな、と思っていたことをなんとか具体化することができました。有機ELディスプレイ部の形状は、円形のほか正方形や菱形なども検討しましたが、機能性とデザイン性を両立させるためには、十字キーなどを連想させる円形が象徴的でいいということになりました。充電台も円形なので、円形で統一感が出せることも考慮しています。表面はミラーっぽくするアイデアもありましたが、W41Kの有機ELディスプレイが、ボディカラーによっては見にくかったりしたこともあって、今回は見やすさ重視で薄いハーフミラー処理としました。ただ、キーのスイッチと有機EL、タッチセンサー、LEDがこの小さな円形の場所に全部入っているので、内部機構はすごいことになっています」(播磨氏)

 センサーリングキーは、指でなぞればいいことが直感的に分かるよう、円に沿う形でリング表面に溝を入れ、“なぞりたくなるデザイン”を目指した。ただセンサーは右半分と左半分に分かれており、iPodなどを操作する感覚で円形になぞってしまうと、半分を超えたところから逆向きの操作に変わってしまう。iPodを使い慣れている人は違和感を覚えるかもしれないが、これには「メリットもある」と川居氏は言う。

 「センサーリングキーは中央にディスプレイがあるので、円を描く動作だとディスプレイが隠れてしまう場合があります。しかし半円動作であれば、右利きの人は右側、左利きの人は左側だけで操作することになるので、常に画面を見ながら操作ができるわけです。また、センサーリングキーにはFeliCaロックの解除機能もあるのですが、金庫の鍵を開けるようなイメージでロックをクイック解除できるのも特徴です」(川居氏)

 FeliCaロックの解除は、センサーリングキーの上下左右ボタンの押し込みと、右回転、左回転の操作を最大4つまで組み合わせた“解除コード”を入力することで行える。川居氏が“金庫の鍵”と表現したように、「右に2回、左に2回」といった操作でロックが解除できるわけだ。

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