なぜ今、「E90 Communicator」なのか──Nokiaのバサラ氏に聞くモバイルエンタープライズ戦略3GSM World Congress 2007

» 2007年02月15日 16時10分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 Nokiaブースでひときわ注目を集めているのが「E90 Communicator」。Eseriesとして初のCommunicatorであるとともに、高速通信規格のHSDPAに対応した端末であることから、デモ機の周囲には人だかりが絶えない状態が続いている。

 NokiaはEseriesのラインナップを強化することで、モバイルエンタープライズを次のレベルに引き上げたい考えだ(2月13日)。同社でモバイルソフトウェア・セールス&マーケティング副社長を務めるアンティ・バサラ氏に、今後のモバイルエンタープライズ戦略について聞いた。

Photo Nokiaでモバイルソフトウェア・セールス&マーケティング副社長を務めるアンティ・バサラ氏(左)Communicatorの日本市場への投入は未定だという。最新のEseries3機種(右)。左から「Nokia E90 Communicator」「Nokia E61i」「Nokia E65」

ITmedia ついにEseriesから待望のCommunicatorが登場しました。今後の法人市場に向けた戦略を聞かせてください。

バサラ氏 今回、われわれは“Eseriesの第2のウェーブ(波)”として3モデルの端末を投入しました。これらの新製品から、Eseriesの今後の方向性が垣間見られると思います。これからは「モバイルオフィス」「メッセージング」「ビジネススマートフォン」の3つのカテゴリーで法人市場にアプローチします。

 まず、モバイルオフィスから説明しましょう。モバイルオフィスは企業ユーザー向け端末のハイエンドモデルに位置付けられ、端末の価格は高くてもさまざまな機能を利用したいというビジネスユーザーがターゲットです。E90 Communicatorはこのカテゴリーの端末になります。E90 CommunicatorはWordやExcelの閲覧/編集など、Microsoftのオフィス製品に対応し、電子メールも各種の規格をサポートしました。Webブラウザは、大きな画面に最適化されたものを搭載し、HSDPAによる高速無線通信を利用できます。あらゆる機能を1つ詰め込んだ端末といえるでしょう。

 次がメッセージングです。電子メールなどのメッセージング用途に最適化されたフォームファクターで、文字入力を容易に行えます。新機種では、「Nokia E61i」がこのカテゴリーに入ります。

 ビジネススマートフォンは、企業ユーザー向けのローエンドにあたり、スマートフォンを必要とするビジネスユーザーのニーズに応えます。“音声通話を主に利用しながら電子メールも使う”というビジネスパーソンに最適です。新製品の中では「Nokia E65」がこれに当てはまります。

 このようにカテゴリーを揃えることで、ユーザーにフォームファクターや色、機能などさまざまな選択肢を提供します。プラットフォームもS60に統一することで、アプリケーション開発者に配慮しました。開発者は1つのアプリを開発すれば、そのアプリが全Eseries上で動くわけです。これはIT管理者にもメリットをもたらすでしょう。デバイス管理やセキュリティなどの面で、Eseriesはすべて同じように扱えるので管理が容易になります。

ITmedia モバイルエンタープライズ市場がなかなか立ち上がらないというモバイル市場関係者の指摘がありますが、課題をどのように捉えていますか。

バサラ氏 障害の1つにコストがありますが、これは端末のコストではありません。端末のコストは全所有コストの約15%を占めるに過ぎず、残りはサービスとサポートです。

 サービスはPBXとの統合や、場合によってはVoIP over WLANなどで必要となるサービスプロバイダへのコストです。サポートは、端末の実装・管理、ユーザーのトレーニング、ヘルプなどに分けられます。Nokiaでは、デバイス管理、セキュリティなどの機能を強化することでサポートコストを軽減できるよう配慮しています。

ITmedia EseriesはプラットフォームをS60で統一するということですが、プラットフォーム戦略をどのように進める計画ですか。

バサラ氏 Nokiaは、モバイル業界最大の開発者コミュニティを誇るS60のほかに、Series 80、Series 40などのプラットフォームを持っています。これまでのCommunicatorはSeries 80をベースとしていましたが、今回の新端末ではS60を採用しています。今後、Series 80をベースとした新しい端末はNokiaからはリリースされません。ただしサポートはユーザーが存在する限り継続します。

 EseriesでプラットフォームをS60に統一した理由は、“異なるプラットフォームは管理者の負担増につながる”というユーザーの声を尊重したからです。一方で、S60のコミュニティは大きく、開発者がS60向けにアプリケーションを開発すれば最大のリーチを得られるという狙いもあります。

ITmedia モバイルエンタープライズ分野では、メーカー、OS、プラットフォームとも熾烈なシェア争いが展開されています。こうした中にあってS60は、どの程度のシェアを獲得しているのでしょう。

バサラ氏 端末のシェアを見ると、北米では1位がResearch In Motion(RIM)、2位がPalm、われわれは3位につけています。欧州・アジアでは、1位がRIM、2位がNokiaです。

 現在、エンタープライズの観点から見ると、プラットフォームはSymbian/S60とWindows Mobileの2つといえるでしょう。RIMは電子メールに特化しており、われわれのようにオープンなプラットフォームとはいえません。業界アナリストなども同じ意見です。

ITmedia 会期中、PCとモバイルデバイス間の連携をサポートする「Intellisync Mobile Suite 8.0」をリリースしました。最新版の強化点について教えてください。

バサラ氏 Intellisync Mobile Suiteの最新版はメジャーアップグレードとなります。S60、UIQ、Windows、Palm、MIDP2.0など全デバイスのプラットフォームをサポートし、機種にして100機種に対応することになります。ユーザーエクスペリエンスも改善を図り、すべてのデバイスプラットフォームでユーザーインタフェースを統一しました。

 「Pro」と「Base」の2つのライセンスモデルを提供するので、通信オペレーターや企業の立場から見たメリットとしては、実装コストの効率化が挙げられます。現在、モバイル電子メールの実装が進まない理由の1つに、実装コストがあり、ユーザー数に応じたライセンス料のProを提供することで小規模オフィスでも実装しやすくなると思います。

 またファイアウォール内での実装ソリューションとホスティングの2つのオプションを提供することで、企業システム内にも導入できますし、通信オペレーターは顧客企業や個人ユーザーにサービスとして提供できます。

ITmedia Eseriesは全機種でWiFiをサポートする戦略ですが、企業におけるWiFiのニーズは高いのでしょうか。またWiMAXのサポートはいつごろを予定していますか。

バサラ氏 WiMAX対応の端末は、2008年頃になるでしょう。遅くとも2009年には投入します。Nokiaから最初のWiMAX端末が登場したあとに、EseriesでもWiMAX対応端末を投入することになります。

 無線に関するNokiaの戦略のポイントは、市場のニーズに合わせることです。企業は社内や構内で提供する無線アクセスとして、WiFiはコスト効果の高い無線技術だと評価しており“社内ではWiFi、それ以外ではセルラー”というのがトレンドです。WiMAXがこの流れを変えるかどうかは分かりませんが、WiMAXは屋外でも利用される可能性があります。

ITmedia モバイルインターネットの時代が到来しつつありますが、業界のプレイヤーは変わるのでしょうか。また通信オペレータの役割は今後、どう変化すると見ていますか。

バサラ氏 インターネットは1つしかありません。その上にコンテンツやサービスがあり、そこにどうやってアクセスするかが違うわけです。PCを使って固定ブロードバンドからアクセスするのか、携帯電話を使って無線ブロードバンドからアクセスするのか。どの通信オペレーターもデータ利用を増やそうとしていますが、固定の世界は今や定額制が主流です。そしてモバイルも同じ流れをたどるでしょう。

 オペレーターは今後、サービスの質や帯域などで差別化を図ることになるのではないでしょうか。データの容量で課金するのではなく、クオリティや帯域に応じて課金するようなモデルになるのかもしれません。

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