KDDIとデジタルハリウッドが主催する「EZアワード4」の授賞式が、3月31日にKDDIデザイニングスタジオで行われた。今回で4回目となるEZアワード4のテーマは「BLACK」。3分以内の映像を制作する「ショートムービー」部門、ブラックプロダクトをイメージさせる「グラフィック」部門、ブラックジョークを設定した一般投稿部門の3部門で作品を募集し、応募総数約1130作品の中から入賞作品が決定した。
一般投稿部門は携帯電話からの投稿ということもあり、全部門最多の759作品が集まった。準グランプリの「微妙な気持ち」は“税金がいつの間にか免除されていた”という短文。作者のステン氏が欠席したことを受け、審査員の長井秀和氏は「受賞したのに作者が来ていないのが、ある意味ブラック?」と笑わせつつ、「ブラックで自虐的な感じがいい。ことばの使い方、コンパクトにまとまったシンプルさが素晴らしい」と、その内容をたたえた。
グランプリ作品となった「自己分析」は、作者であるダート氏の実体験に基づいて作られたという作品。長井氏は「“ちょっと気付き始めた”、という自覚症状がうまく表現されている。この状況をユーモアにできるところが凄い」とコメント。
177作品が集まったグラフィック部門では、審査員としてhoneyee.comの藤原ヒロシ氏(音楽プロデューサー)、清水浩文氏(SOPH.co,ltd代表)、中村ヒロキ氏(
グランプリはtoi氏の「ディアスト」が受賞。「ごみ袋をイメージし、街中に置いてあるゴミがキレイに見えればいいな」という想いで制作したという。藤原氏は「コンセプトが面白い。ごみ袋は半透明だから、デザインすると楽しそう」と受賞理由を話した。
最後は、194作品が集まったショートムービー部門。審査員は映画監督・脚本家・俳優の佐藤佐吉氏、映像作家の真島理一郎氏そして長井秀和氏が務めた。まずは佐藤佐吉賞として、ちゃんぐ氏の「ネット調理家電」が発表された。チャットし続けないとスイッチが落ちてしまうので、嫌でもチャットしないと食事ができないという家電の作品。ちゃんぐ氏は「これはジョークではなく、本当に実在する家電製品。ジョークではないけどブラックジョーク(がテーマのコンテスト)で賞をいただけたのが嬉しい。出会い系家電を3年前から作っていて、なんとか販売にこぎつけたい」と、今後の意気込みを語った。
真島理一郎賞に選ばれたのは、上原由起子氏の「Juggling」。「キャラクターがぬいぐるみということで表情がない分、感情を表すのに苦労しました」と上原氏。真島氏は「かわいいものと残酷なものの組み合わせはブラックジョークの常套手段ですが、それがうまく表現されていました。腕とシッポが切れるタイミングが絶妙」とコメント。
長井秀和賞に選ばれたサワイフミヤ氏の「Black Ball1,2」は、鉄球が主人公に間髪入れず当たっていくという痛快かつ痛烈な内容。長井氏は「映像を見て声を上げることはあまりないんですが、見たときにハッと声を上げてしまいました。ダメージフェイスの主人公も好感度が高く、キャラクターの可愛さもあいまって素晴らしい出来」と絶賛。
準グランプリに選ばれたアヤテクノ氏の「ベジタぶー」は、せっかく痩せたのに、結局食べられてしまう子ブタの悲しい話。真島氏は「ブラックというところまでもう一息。痩せたけど、なぜ連れてかれるのかというオチが欲しかった」と要望を出しつつも、「寂しい感じのブラックさがドナドナを思わせる」と話した。「非常に好きなタイプの作品」だという佐藤氏は「ダイエットして痩せたのに食べちゃいましたという(部分の詳細が分かる)ネタがあれば100点満点」とアドバイス。
グランプリに選ばれたのは、寺田めぐみ氏の「実験」。寺田氏は「普段からブラックユーモアや風刺的な作品を作っているので、自分にピッタリなコンテストで賞をいただけるのは嬉しい」と喜びを語った。真島氏は「一番ブラックというテーマにピッタリ来る作品。サラリーマンの表情が全くない、シンプルなアニメーションの中で残酷さがすごく可愛く表現されている。技術よりもアイデアで勝負したところが個人的に好きでした」と評価し、「首が飛んだり内臓が飛び出たり、もうちょっと残酷な部分があってもこのキャラクターならいけそう」と補足。佐藤氏は「内容を見る以前に5人並んでる絵だけで、“何かあるな”と思わせてくれた。ほかの作品がCGや3DCG満載の中で、あえて白黒の線だけで勝負してきているのが素晴らしい」とたたえた。
受賞作品の発表後には、KDDI執行役員 コンテンツ・メディア事業本部長の高橋誠氏と、デジタルハリウッド大学大学院学長の杉山知之氏があいさつし締めくくった。高橋氏は「ブラックという非常に難しいテーマでしたが、皆さん果敢に挑戦してくれました。昨年はクリエイターズカフェでブランドコラボのTシャツを販売したように、今後もビジネスにつながるような場を提供していきたい」と話した。
杉山氏は「1000人くらい集まって作るCG作品や映画もありますが、たった1人でも世界に感動を与えられるという作家の時代になりました。今は“ブラック”がぴったりと当てはまる世相。そんな中で自分たちの好きなものを発表し、多くの人に感動や幸せな気持ちや考えさせるものを与えることは、素晴らしい生き方だと思う」とクリエーターたちをたたえた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.