SIMロックや販売奨励金の是非、MVNOの展開など、今後のモバイルビジネスのあり方を議論する総務省主催の「モバイルビジネス研究会」が4月6日に開催された。第5回の会合にはイー・モバイルとマイクロソフト、ぐるなび、三井物産、ACCESSの5社の代表がオブザーバとして参加し、モバイルビジネスについての意見を述べた。
オブザーバによるプレゼンテーションが今回で終了することもあり、MVNOについては、より活発な議論が交わされた。
最初に登場したイー・モバイルの千本倖生会長は、MVNOを促進させるには、3つの条件が必要だと述べた。1つ目は通話料金などの卸売料金を約款化すべきという点だ。「我々の試算では現状、ドコモが3分45円であるならば、卸売価格は3分15円程度が妥当だと考えている。通話料金は秒単位の課金、データ通信は定額制が望ましい」とした。
さらにコンテンツと端末はオープン化すべきとし、「昨年10月に番号ポータビリティが導入されたが、それだけでは不十分。さらにコンテンツも移行できるMCP(Mobile Content Portability)や、メールアドレスを継続して利用できるMMP(Mobile Mail Portability)も導入すべき。端末はWindows Mobileといった国際的な仕様を採用することで、開発費を下げるのが望ましい」という考えを示した。
マイクロソフト・最高技術責任者補佐の楠正憲氏は、販売奨励金やSIMロック解除について、「即座に廃止した場合は業界全体に与える影響が大きい」と慎重な姿勢。当面は割賦販売や販売奨励金を含まない料金プランを並行して提供することで、段階的に販売奨励金を縮小させることを提案した。中長期的な改革として、第4世代など次世代方式の展開時期を目途に、SIMロック規制を導入するのが望ましいと説明した。
端末メーカーの国際競争力低下については「(米Apple Computerの)iPhoneには東芝のHDD、日本製のタッチパネルが搭載される可能性だってある。何をもって『国際競争力』というのかが曖昧。個別企業の自助努力に委ねるべきである」と訴えた。
コンテンツプロバイダの立場として意見を述べたのが、ぐるなびの福島常浩取締役。「各事業者で端末の仕様が違うために、コンテンツの検証作業には億単位のコストがかかっている。コンテンツ開発側としては、PCと同等の標準環境が実現されることが望ましい」と、コンテンツプロバイダの現状を訴えた。
しかしその一方で、「SIMロック解除は、現行のシステムからの移行による検証作業が膨大になる。参入障壁を高くする可能性がある」と、早急なSIMロック解除は好ましくないと言う見解を示した。
三井物産の土肥茂氏は、端末の流通事業としての立場から意見を述べた。「三井物産では、日本に近いインセンティブモデルを導入しているオーストラリアで流通事業を手がけている。オーストラリアでは、通信事業者と一体となって、販売だけでなく、在庫の管理や商品ライフの管理も行っている」と海外の販売事例を紹介した。
ACCESSの楢崎浩一執行役員からは、ソフトウェア開発の現状が明かされた。ACCESSでは、端末メーカーの負担を低減するために、端末に必要とされる機能や仕組みを取り入れた、ALP(ACCESS Linux Platform)というソフトウェア開発プラットフォームを提供している。ほかにも、すでに国内外でリソースを共有化している同社の動向を説明した上で、「端末メーカーなどは厳しい環境に置かれているため、モバイルビジネスを継続させて行くにはリソースの共有、プレーヤー同士の可能な限りの協調が必要になってくる。協調することで競争力が生まれてくる」という見方を示し、ACCESSとしてはこうした動きに貢献したいと述べた。
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