第1回 NTTドコモ 辻村清行氏──「ドコモ2.0」に込めた本当の意味石川温・神尾寿の「モバイル業界の向かう先」(2/2 ページ)

» 2007年06月01日 09時27分 公開
[房野麻子(聞き手:石川温、神尾寿),ITmedia]
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これからはモノだけでなくサービスも売る

神尾 私たちはメディアに関わる立場ですが、最近、読者との距離を少し感じることがあるんです。新しいサービスや端末について、多くの一般ユーザーが興味を持ってくれているのだろうか。使いたいと思ってくれるているのでしょうか。そこに不安を感じます。携帯電話の進化が、人々のライフスタイルや価値観、社会を大きく変えているんだという“実感”が、次第に強くは感じられなくなってきているのです。携帯電話の技術やサービスは、日々進化している。それなのにユーザーが、その変化に引きつけられていない。興味を持たない人が増え始めている。ドコモはこの点について、どう考えますか。

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辻村 難しい問題ですね。現在の我々のオペレーションのやり方は、ドコモショップを中心にいろいろなものを売っていく方法です。今までは基本的に“もの売り”に近かったわけです。したがって、販売奨励金を出して、最終的に安く買っていただくという方法を取ってきました。おそらく今後は、それに加えてサービスを売っていく。つまり端末を売るだけでなくサービスを売る形になっていくと思います。

 もちろん、これまでサービスを売っていなかったわけではないですが、今後はもっとサービスに重点を置いていくということです。例えば「携帯でSuicaを使いたいんだけど、どうしたらいいですか」とか、「飛行機のWebチェックインをしたいのだけど、どうしたらいいですか」という疑問や質問に対して、どう対応できるかというようなことです。それはオペレーショナルな部分もあるし、端末のユーザビリティも、もっと進化させていかなくてはいけない。これはドコモ2.0を本当に成功させるための大きな課題ですね。

神尾 サービスが高度化するにつれて、使いこなせなかったり、初期設定や操作が煩雑だと感じるユーザーは増えていますよね。それが新サービス、ひいては携帯電話の進化に興味を失わせる1つの要因だと考えています。これについてはユーザーインタフェース(UI)とサポート体制を改善するというお話でしたが、その部分が、ドコモだけでなく業界全体で“足りない”部分じゃないかと思います。いいサービスや端末を作っているのに、すべてのユーザーが“使える”ようになっていないんです。

辻村 使えるようにしていかなくちゃいけないですね。その一方で僕は、人間というのは基本的にいろいろな適応力があると思っているんです。だから一概にリテラシーの問題ということで整理するのではなくて、しきい値をどのくらい低くするかという我々の努力が、基本的には受け入れられるだろうと思うんです。面白い話があって、プッシュトークを使っているおじいちゃんもいるんですよ。

石川 初耳です(笑)

辻村 若者がプッシュトークをなかなか使ってくれない時代に、ですよ。つまり孫と話したいんです。でも学校の終わる時間に個別にメールや電話をするとなると、なかなかつかまらない。だからプッシュトークをかけて一斉に呼び出しをかけて、話せる孫と話すというわけです。孫と話をしたいという要望が、プッシュトークというリテラシーを超えているわけです。だから、僕はあまり難しく考えなくてもいいかもしれないと思っているんです。もちろん、我々は徹底的に努力しなくちゃいけませんけれど。

 例えば、上りの通信速度が高速になると、端末から映像をアップロードすることも可能になります。すると、いろいろなところでいろいろな情報が取れるようになります。例えば、どこかの道路で事故が起こったときの渋滞の状況だとか、電車が遅れたときの駅の混雑の状況だとか、なんというか本当にパーソナライズした個別の情報が取れるわけです。それはGoogleの「鳥の目」とは全然違うわけです。例えば、電車が遅れた場合に、どのくらい遅れているのかとか、どのくらい混雑しているのかという情報は貴重な情報ですよね。それを携帯でダウンロードできるというのは、結構いいですよね。誰かがアップロードしてくれて、そこのストレージサービスを使ってダウンロードする、みたいなことが自由にできるようになってくる。

 考えてみてください。待ち合わせの時間に遅れるかもしれないというときに、道路がどのくらい込んでいるのか、あるいは電車がどのくらい遅れているのかという情報は必死に欲しがるじゃないですか。そういうときに人間はリテラシーを超えるだろうと思うんです。で、1回使えばそんなに難しくないな、って思ってくれるんじゃないかと。

神尾 今までのサービスやコンテンツは、提供者がいて、上意下達のように一方通行的に提供されて、その中からヒットしたものがムーブメントになるという形でした。でも今のお話をうかがっていると、今後はいろんなところにニーズがあって、それがだんだんとボトムアップ的に立ち上がってくる、というイメージになってくるんでしょうか。

辻村 おっしゃるとおりだと思います。今まで常に持ち歩けるPCやカメラはあまりなかった。もちろん、デジタルカメラは持っているでしょうが、常に持っているわけではないですよね。ところが、携帯はポケットの中に入って、起きている時間はほとんど持っている、そういう状況が現実にあるわけです。その威力はもう一度考えてみる必要があると思いますね。そこに大きな変革が起こる可能性はあると思うんです。

神尾 これまで携帯電話のアップリンク(上り方向の通信)というと、メールを送るのと、ブログをやったりSNSに書き込みをしたりというくらいだったわけですが、こういった上りの部分もどんどん広がってくるということですか。

辻村 広がってくると思います。

神尾 そうすると、“上り”の部分にドコモ2.0のカギの1つがありそうですね

辻村 たくさんのうちの1つですけれどね。本質的には、カメラであり、ネットワークに通じ、かつCPUがあって、画像処理ができる端末を、手のひらに持っているということなんです。

ITmedia それを認識してもらいたいということですね。

辻村 そして活用してもらいたい。みなさんの日常の不満や不都合さを解決する手段に携帯がなってくるといいなと思うんです。

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