大西氏の言う「定番のなかのさりげない遊び心」とは何か。
外観デザインを再度眺めてみる。金属質のボディとスクエアな形状の王道デザインに対し、ワンプッシュオープンボタンで端末を開くと、がらりと違うイメージの配色でダイヤルキーがある。黒基調のインディゴシルバーの内側は濃いピンク、プラチナホワイトはブラウン、ジュエルゴールドは薄いピンクを用いるといった感じだ。
メニューインタフェースや待受画面など、内面のソフトウェアにもシックな外観イメージからがらりと異なる演出を施す。線だけで表現するモノクロームのアニメーションや花、クラシック時計など、見た目はシンプル。しかし時間ごと、季節やシーズンごとに、その時々にしか見られない、しかもおそらく購入した“自分”が楽しめるイベントが多く隠されている。
「例えば季節によるアニメーションイベントは、その日が近づいてくるに従って出現率が上がってくるようにチューニングしてあります。目の肥えたオトナのユーザーがターゲットだからこそ、飽きさせない演出として、毎回驚きを感じてもらえるような演出を用意しました」(大坪氏)
そのアニメーションの種類は実に1845パターンにも及ぶという。
こうしたさりげない内面の遊び心と同時に、オトナを目指す上で外せなかった要素が“上質感”だ。例えばパネルにアルミなどの金属素材を使用することは、想定ターゲットが決まった開発当初から構想されていた。
「アルミパネルの採用は、金属素材の持つ樹脂素材とは異なる高級感と、今回の端末の目指すイメージが合致した結果です。そのため塗装などによる、いわゆる“金属っぽい”ではなく、“ホンモノ”を採用したかったのです。“ホンモノ”で行こうということは、開発のかなり早い段階から決まりました」(大西氏)
本物の金属素材を使用することで、見た目だけでなく、触れるとひんやりする独特の触感なども得られる。
「持ったときの“ひんやり”とした質感がまず違いますし、キラリと反射する感じも金属ならではのものがあります。そうした手にしたときに感じる質感をいかに演出できるか。それが大きなテーマでしたね」(大坪氏)
「今回は基本色をかなりこだわって、長期に渡って議論しました。しかし、ようやく色が決まったと思ったら、その色が金属では出せないということが判明したこともありました」(戸村氏)
最近流行する、携帯への金属素材の採用。上質感の演出はただ金属を使えばよいということではないようだ。
「携帯はパーツごとにいろいろな素材を使っています。金属パネルのほか、携帯は無線機ということで電波を通すために一部分に樹脂素材も必要です。そのほか、少し柔らかいイヤフォン端子カバーなどもあります。それぞれの材質へ単に同じ色を塗ればいいというわけではなく、素材ごとに調色が必要です。これがばらばらだと台無しになってしまいますから。金属素材を採用した分、その色あわせには大変苦労しました」(大坪氏)
そのほか、金属パネルの上にべたっと塗料を塗ってしまうのではせっかくの金属素材が生かされない。そのためW52Pは、「アルマイト染色」という手法で着色されている。この手法は、塗装やメッキなどと異なり、色の剥離など──いわゆる“塗装のはげ”が起こらず、耐久性に優れるメリットがある。ちなみにプラチナホワイトは特に「金属感のある白」の表現が困難だったという。
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