「お待たせしました」──かくしてW53CAは“EXILIMケータイ”になった荻窪圭が聞く「EXILIMケータイ W53CA」(2/2 ページ)

» 2007年08月03日 23時31分 公開
[荻窪圭,ITmedia]
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EXILIMシリーズにはない28ミリの広角レンズ

 カシオ製端末では初めての採用となる、35ミリカメラ換算で28ミリという広角レンズを採用したのも驚きだ。本家のEXILIMシリーズには、28ミリの画角で撮影できるモデルはない。

 28ミリにこだわった理由を本間氏は「携帯カメラの利用シーンはデジカメに比べてスナップショットが多いんです。常に持ち歩いているので、カラオケボックスのような狭い場所で撮ることが多いし、3〜4人で“自分撮り”もする。それにはより広い画角をカバーする28ミリが必要だと考えました」と言う。28ミリは、ユーザーが写真を撮る場面を熟慮し、必然的に出てきたレンズスペックというわけだ。

 しかしレンズは広角になればなるほど、周辺部には歪みが発生しやすくなり、周辺光量落ちといった問題も発生する。それをレンズだけで光学的に補おうとすると大きなレンズが必要になるのだが、W53CAではそれをデジタル画像処理で補っている。

9点マルチAF、AEB、ナイトビジョンなど注目の新機能を搭載

 カメラの性能が向上したことで、今までのカシオ端末にはなかった新たな機能も多数追加した。代表的なものとしては、9点マルチAF、AEB、そしてナイトビジョンが挙げられる。

 9点マルチAFは、画面中央部の9つのAFポイントでピントをチェックし、もっとも適した位置にピントを合わせるという、EXILIMシリーズではおなじみの技術。従来の端末は中央部でだけピントを見ていたので、手前の人物ではなく背景にピントが合ってしまうケースも多かった。W53CAではAFの精度と速度を上げており、快適に使える。

 AEBはオートブラケット撮影のことで、露出を変えながら連続で3枚の写真が撮れる機能。ケータイのカメラにこの機能を搭載したのは、おそらく初めてではないかと本間氏は言う。自動的に暗め、適正、明るめと3枚の写真を撮影してくれるので、その中から一番いい露出で撮れたものが選べるというわけだ。

 ナイトビジョンは本家EXILIMにはない機能。隣り合った4つの画素を混合して1つの画素を作ることで、感度を上げる技術を活用しており、暗い場所でもきれいな写真が撮れる。記録される画像は1Mサイズになるが、感度を上げても画質が劣化しないメリットがある。

EXILIMの“電源を入れたらすぐ撮れる”も継承

 EXILIMには撮影ボタンを押すと撮影モードで、再生ボタンを押すと再生モードで起動する「ダイレクトon」機能がある。その「撮りたいときにすぐ撮れる」は、W53CAでも実現た。ディスプレイを反転させると自動的にカメラモードになり、[マナー]キーで再生、シャッターキーで撮影モードが起動する。

 「『電源を入れたらすぐ撮れる』をどう実現するか、いろいろ工夫を重ねました。その結果が、このスタイルでした」(本間氏)

Photo ディスプレイを表にして端末を折りたたむとカメラモードの選択画面が現れる。ここでシャッターキーを押せば撮影モード、[マナー]キーを押せば再生モードで起動する。EXILIMの「電源を入れたらすぐ撮れる」操作性を提供している

 また、ディスプレイについても一工夫している。ディスプレイを表にして折りたたむと、ディスプレイの輝度が向上し、昼間でも見やすくなるのだ。反転時はデジカメのファインダーとして最適な画面の明るさに、それ以外はケータイとして使うのに適した明るさに自動的に調整する仕組みになっている。

“薄くてスタイリッシュ”そして“カメラらしく”が命題だったデザイン

 このように、W53CAのコンセプトが固まっていくにつれ、デザインも“EXILIM”の名にふさわしいものが必要になってきた。最も重要だったのは「EXILIMとうたうからには薄型スタイリッシュでなければならない」(山本氏)ということ。

 最新の小型カメラモジュールをベースに、厚さ18.9ミリという驚異の薄さを実現するためのデザインが始まった。相当な苦労があったと思われるが、担当した井戸氏は「デザインする立場からすると、こういうコンセプチュアルなモデルの方が楽しいですね。私自身、EXILIMの初号機のデザインにかかわっていたので、思い入れもありました」と語る。

 「EXILIMという名称を付けると決定した時点で、画質や外観を含めてEXILIMにふさわしくする必要があります。同じカメラユニットを使っても、作り方によっては厚くもなりますから、ユニットの薄さを生かすためにデザインしました」(井戸氏)

 W53CAの開発に携わる前はEXILIMのデザインを担当していたという花房氏は、「EXILIMケータイなので、やはりまずは“カメラ”なんです」とそのこだわりを話した。ケータイのカメラがある面は通常は「裏面」とされるが、今回は裏面を“顔”と位置づけ、そこから作り込んでいったという。さらにカメラ面がすっきりするよう、バッテリーカバーのラインやネジ穴の位置まで気を配った。カメラとしての使い勝手にもこだわり、操作系のボタンはディスプレイ側に若干傾いており、シャッターキーも無理を言って大きくしてもらった。

PhotoPhoto W53CAの“顔”となる裏面は、デジカメのように見えるよう、細かな部分にまでこだわって作り込まれている。シャッターキーやボタンは、押しやすい向きに若干傾けてある

 「撮られる側にも、ケータイではなくカメラとして認識してもらいたいという意図があります。相手に向けても失礼だと感じさせない、というくらいのところまでカメラらしくできればと考えデザインしました」(花房氏)

 充電台や化粧箱も、EXILIM風のデザインにするなど、ディテールまで非常に凝っている。

PhotoPhoto 付属の充電台はもちろんデジカメのEXILIMとそっくり。端末の化粧箱も、オレンジと白のauカラーではなくEXILIMとデザインをそろえている

EXILIMテーマの壁紙やメニューも用意

 カメラ以外にも、EXILIMをテーマにしたデザインが用意されている。

 1つは待受画面のFlashだ。“Bonite”やカシオ端末ではおなじみのアデリーペンギンに加え、W53CAには「EXILIM」をテーマにしたものを用意した。

 「この待受Flashは、EXILIMの世界観を表現しようと思ってデザインしました。EXILIMシリーズはデジカメとしては歴史がありますが、ケータイとしては初めてなので、クールでスタイリッシュ、そしてミニマムというイメージを表現してます。過去のEXILIMの歴史をスタイリッシュに表現できればということで、テーマカラーの赤と黒と白で構成し、ディスプレイを開くたびにEXILIMの代表的な機種をかたどったワイヤーフレームと基本スペックを表示します」(花房氏)

 でも実は、歴代EXILIMに混じって「EXILIMではない隠し機種が1つだけ入っている」と花房氏。W53CAを買った人は探してみるといいだろう。花房氏いわく、「長く使っているといつか見ることができる」。

「お待たせしました」

 最後に本間氏は「久しぶりのカメラコンセプトモデルなので、『お待たせしました』とお客様に伝えたい」と話した。山本氏も「やっとカメラ企画がきた。これは腕のみせどころだ」と思ったという。

 かくしてEXILIMケータイ W53CAはできあがったのである。

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