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» 2007年08月30日 09時49分 公開

「モバイルビジネス研究会」第9回会合:ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、ウィルコム、イー・モバイルのトップが勢ぞろい (2/2)

[石川温,ITmedia]
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研究会の趣旨については基本的に賛同──ウィルコム喜久川社長

Photo ウィルコムの喜久川政樹社長

 一方、ウィルコムの喜久川社長は、同社が取り組んでいるW-SIMや定額制、オープンプラットフォーム戦略、PHSの海外展開を改めて説明。割賦販売制度など、すでに総務省の報告書案に盛り込まれている内容を導入済みであることから「モバイルビジネス研究会の趣旨について基本的に賛同する」(喜久川社長)という立場を示した。


日本の携帯料金はまだまだ高く、規制緩和を推進すべき──イー・モバイル ガン社長

Photo イー・モバイルのエリック・ガン社長

 そして最後に登場したのが、13年ぶりの新規参入を果たした携帯事業者、イー・モバイルのガン社長だ。同氏は冒頭から「日本の携帯電話料金はまだまだ高い」と先制攻撃し、その原因として、高額な接続料金、周波数の割り当て、MVNOの参入の遅れ、垂直統合モデル、販売奨励金、SIMロックという6つの問題があると指摘した。

 ガン氏は「日本の携帯電話の通話料は1分40円となっている。アメリカは8円、香港は5円。日本はこの10年間、料金は変わらず、通話時間も減少している。しかし、アメリカは10年で1分33円から8円になり、通話時間も6倍になった。それに合わせて利益率も拡大している」と海外での事例を説明。日本の携帯の通話料が高いのは、背景としてNTTドコモやKDDIが設定してる接続料金が高すぎるという原因があり、低廉化すべきであると力説した。

 「NTTドコモやKDDIが設定している接続料金は、NTT固定電話の8倍となっている。接続料金が低廉化すれば、利用者料金の低廉化を促進できる」(ガン氏)

 MVNOの促進に関しては「現在、MVNOとして参入するためにはMNOと相対で交渉する必要がある。すでに実績がある場合は、基本料金や通話料、データ通信料金などを約款化すべき」と提案。NTTドコモやKDDIとは明確に異なるスタンスをとっている。料金設定は「支配的事業者は、低廉なMVNO向け卸売り料金を設定すべき」として、第1段階は3分33.6円、第2段階では3分15円を実現することを提案した。

 プラットフォームのオープン化にも言及し、「ドコモを解約してもiモードやiモードメールが使えれば、消費者にとってはメリットになるはず」として、固定通信のように、インフラとサービスを分離すべきであるとの考えを表明した。

 このほか「日本のADSLは世界で一番速く、一番安い。交換機などにおいて、規制緩和が実現したために成功している。携帯電話事業では、そのあたりでまったく規制緩和が考えられていない。鉄塔を共有化するなどネットワークのオープン化を図るべきだ」といった、新規参入事業者という立場からの意見が目立った。

端末代金と通信料金の切り分け、“分離プラン”以外の選択肢とは

 各社が一通り意見を表明し終わると、研究会の構成員が各社の社長に質問する形で意見交換が行われた。

 まず、口火を切ったのは、モバイルビジネス研究会の座長を務める齋藤忠夫氏だ。同氏は「端末の価格が不透明であることの解決策として提示した“分離プラン”は、端末と通信料金を見えるようにして、それぞれを払ってもらうようにするものであり、各社とも賛成であるように見えた。NTTドコモからは分離プラン以外もあり得るという意見があったが、ほかにどんな知恵があるのか」と質問した。

 ドコモの中村氏は「割賦方式もあり得るのではないか」とコメント。一方KDDIの小野寺氏は「いろいろ検討している段階。公開の場で話せる内容ではない」と明言を避けた。

 すでに割賦販売を導入しているソフトバンクモバイルの孫社長は「割賦販売も1つの方法。いずれにせよ、どういう方法が望ましいとか、賛成、反対という議論は不要なのではないか。事業者が競争の中で創意工夫をすればいい。自動車を売るときに一括払いでの購入は許さん、分割払いにせよなどと強制するものではない。一括も分割も販売会社の自由にすべき」と話し、分離プランの導入を強制的に行うのは反対の姿勢を改めて示した。

800MHz帯の周波数を持つドコモ・KDDIの競争優位性

 甲南大学経済学部教授の佐藤治正氏は、鉄塔の共有化の現状について質問。これに対してドコモの中村氏は「ドコモ中央では国立公園内など、すでに100カ所ぐらいで共有している。鉄塔を建設する際は、基本的に自分の設備のことしか考えておらず、他社の設備のことまで考慮されていない」と答えた。

 KDDIの小野寺氏も「当社も共同でやっているところはやっている。他社に対して、技術的にやれるものはやっている。しかし、共有化を強要するのは難しいと思う」と話し、かつて、(ボーダフォンの)グリーン社長と私で鉄塔保有会社をつくって基地局建設を計画したが、結局『うちはここに欲しい』『いや、うちはここを優先して欲しい』という意見がぶつかってしまい実現しなかったというエピソードを紹介した。「地方での単独鉄塔なら共有は可能だが、都心ではビルの屋上などに建設しており、スペースや重量の問題、ビルオーナーとの契約の問題などももあって、現実的には難しい」(小野寺氏)と、過去の経験を踏まえた上で「共有化の強要は難しい」という見解を述べた。

 この質問を受けてソフトバンクモバイルの孫氏は「800MHz帯の周波数は電波がよく届くので競争上優位だ。鉄塔の共有化は、ドコモさんが言っている100カ所で相乗りをしているというレベルではなく、(韓国で実現されている)50%程度の共有化ができるのかどうかが問題。(800MHzを持っていない)ハンデキャップを改善するのが最善だが、それが難しい現状では次善の策として、鉄塔の共有化を進めてほしい。エリアの穴が空いているところはローミングでもカバーできるようにしてほしい。これは公正な競争をする上でも重要」と、周波数割り当てで不利な同社の立場を改めて説明した。

 また孫氏は「競争を促進する妨げになっているのは、番号ポータビリティ制度でメールアドレスを持ち運べない点。事業者をまたがってやるなら、メールアドレスのユニバーサル化をやるべき。一番急ぐ共通化はそこにある」と、番号ポータビリティの仕様改善も求めた。

「日本はなぜGSMを導入しなかったのか」を議論しても始まらない

 齋藤座長は「今のモバイル業界は10年間の積み重ねによってできており、それを直すのは大変なことだ。例えばWebアクセスに関して、導入する前に標準化を行うという議論はなかったのだろうか。GSMの世界では標準化されているが、日本ではARIBなどで規格を決めて共通化するといったことができなかった。日本では永久に共通化はできないものなのか。果たしてそれでいいのか」と、各社に標準化に対する意見も求めた。

 ドコモの中村氏は「携帯電話はこの数年間、PCの進化を追ってきた。プラットフォームの共通化し進めているし、問題意識はある。端末価格を安くすることには我々も取り組んでいる」と現状を説明した。

 一方、KDDIの小野寺氏は「なぜ、日本はGSMを採用しなかったのかという議論に行き着くが、いまさらそんなことを語っても仕方がない。KDDIがCDMAを始めるとき、端末メーカーに対しては、当社に納めるだけでなく、北米市場も狙ってほしいと言ってきたし、実際、1社は米国でトップブランドになったこともある。我々としては国際標準を導入し続けていた」と、決して日本ローカルの規格に固執していたわけでも、世界標準の導入に異を唱えていたわけでもないと主張した。

 また同氏は「プラットフォームというのはどこを指しているのか。システムという意味ではGSMに対するものはCDMAということか。先生がいっているようなGSMは交換機とインタフェースがすべて規格化されているが、CDMAはそこまでいっていない。そういうプラットフォームをきっちりするためには、3GPPや3GPP2で、どこまで仕様を織り込めるのかということになる。端末のプラットフォームは、OS部分であればメーカーの担当になる。アプリケーションの部分では、iモードやEZweb、Yahoo!ケータイなど、各社が独自の工夫をしてきている」と、日本において標準化を進めるにはかなり困難であるとした。

 ソフトバンクモバイルの孫氏からは、新たな標準化づくりに対して、明確に反対の声が上げられた。

 「確かに日本でもGSMをやっておくべきだった。しかし、現状、3Gでは世界のスタンダードに準拠しようと動いている。実際、ソフトバンクモバイルでも、ノキアやサムスン、HTCなど海外メーカーの端末も導入している。彼らのボリューム効果を取り入れた端末を売っている。しかし、日本のユーザーは、ワンセグが入っていたり、おサイフケータイだったりしないと買ってくれない。日本のユーザーに端末を売ろうと思ったら、左ハンドルの自動車を右ハンドルに変えるように、改変が必要になる」(孫氏)

 世界標準を導入することが、ユーザーのメリットになるわけではないというわけだ。そして孫氏は改めて方向性を強制されることに異を唱えた。

 「日本メーカーが海外に進出することはできる。そこに制限はない。すでに海外で端末を出しているメーカーもある。しかし、日本独自のハードルを作るのは、余計なお世話だ。そんなことをしたら、また海外メーカーから参入障壁ができたと言われてしまう。研究会で議論してもいいが、強制は勘弁してほしい。価格、端末は毛が抜けるほど努力している。押しつけないでほしい」(孫氏)


 今回は5キャリアの社長がそれぞれの立場で意見を述べたわけだが、携帯電話の既存3社はいずれも「すでに自由競争をしているのだから、余計な規制や強要はしないでほしい」と主張する点が共通していた。すでに総務省の報告書案に挙げられた内容を導入しているウィルコムは発言が少なく、来年に音声サービスの開始を予定しているイー・モバイルは、接続料金など音声通話事業に向けた発言が目立っていた。

 次回、第10回の会合は9月中旬に開催される。

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