ソフトバンクは8月8日、2008年3月期第1四半期の決算を発表した。既報の通り、売上高6630億円、営業利益787億円、経常利益512億円と、前年同期比(ソフトバンクモバイルの2007年3月期第1四半期の実績は5月1日から6月末までの2カ月分のみ計上)で大幅な増加を実現。ソフトバンクモバイルの携帯電話事業が順調に収益に寄与しているほか、携帯以外の分野でも事業が好転しているという。
会見の冒頭で、ソフトバンク社長の孫正義氏は、2006年4月のボーダフォン買収から1年強を経た今、「携帯電話事業を基幹の事業に据えてやっていけるという手応えを、徐々に感じてきている」と控えめに好調さをアピールした。
ソフトバンクモバイルは5月、6月、7月の3カ月間、電気通信事業者協会(TCA)が発表する携帯電話契約数の純増シェアで連続1位を獲得しており(8月7日の記事参照)、誰の目にもその勢いは明らかだ。しかしこの日の孫氏は謙虚な発言を繰り返した。
「競争なので、ずっと1位で行けるとは当然思っていない。勝つときもあれば負けるときもある。しかし、急激に赤字に転落するようなことはないだろう。健全にやっていけるのではないかという手応えを感じつつある」(孫氏)
そして同氏は、今後も地道に努力をしていく姿勢を強調する。
「他社もさまざまな手を考え、さまざまな努力をされると思うので、決して我々も安泰という状況ではない。しかし、一生懸命頑張っていけば、着実に少しずつ事業の基盤を強化していくことができると感じ始めている」(孫氏)
こうした発言からは、3カ月連続で大きく伸びた純増数に甘んじることなく、手綱を緩めずに携帯事業を推進していくという同氏の決意が感じられた。
ソフトバンクモバイルの業績は、契約数が増加していることもあって非常に好調だ。直近の7月の純増数は22万5000件で、純増シェアは45%。ここ数カ月の大幅な純増はボーダフォン時代やJ-フォン時代を含めても「このような状況は初めて」(孫氏)だという。
特にプリペイド契約が減り、3G契約が増えていることを指摘し、「あまり儲からないプリペイド契約の純減をのぞいた純増数は25万を超えており、大変喜ばしい状況」(孫氏)とした。3G端末へのシフトも急速に進んでおり、買収時は20数%だった3G比率は、7月末時点で59.1%に向上している。
こうした順調な推移の背景にあるのが、この1年間で推進してきた「4つのコミットメント」の達成だ。ソフトバンクがボーダフォンを買収した直後から、ネットワーク、端末、コンテンツ、マーケティングの4つの分野を中心に“立て直し”策を打ってきたが、ここに来てこれらの施策が実を結んできている。
特に、ボーダフォン買収以来力を入れて改善してきたネットワークの“つながりやすさ”は、公約の4万6000基地局を目指して1年間で2万局以上の基地局を建設。2006年4月の時点で2万1000局だった基地局は、2007年6月末時点で3万9022局が開局済みで、8月1日には目標の4万6000局を突破した(8月1日の記事参照)。ユーザーのネットワーク満足度は、1年前を100とすると約27%高くなっている。
孫氏は、1年間でこれだけの3Gの基地局を作ったのは、世界最短記録ではないかと話し、「社内では半分冗談、半分本気でギネスに記録を申請してはどうかと言っている」という。ちなみにKDDIが全国に設置している基地局は、800MHz帯という、2GHz帯よりも遮蔽物の陰などに回り込みやすく、広範囲に届きやすい周波数を利用していることもあって、その数は2万を切る程度だと言われている。孫氏はソフトバンクが「KDDIが十数年かけて建設してきた数とほぼ同じだけの基地局を、1年で増やした」と豪語した。
孫氏自身も、ボーダフォンを買収し、20年近く使ってきたドコモの携帯をボーダフォンに切り替えたときは、電話がつながらなかったらどうしようかと心配したという。実際、去年の今頃は「つながらない場所も結構あった」(孫氏)。しかし、最近はほとんど不自由しないところまで来たと話す。
「短期間で一気に基地局を建設するのは、土地の確保から近隣住民の了承、工事請負業者の確保など、さまざまなハードルがあり、本当に苦労した。最初は歯がゆい思いをしたが、だいぶつながりやすくなったと思う」(孫氏)
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