ドコモとソフトバンクモバイルは、「フェムトセル」の実験を進めているが、KDDIではそのような話は聞かない。同社の小野寺社長は12月19日の定例記者会見にて、「問題点を知っているから消極的」とコメントした。
フェムトセルとは、半径数十メートル程度と非常に小さいセル(携帯電話の基地局がカバーするエリア)のこと。一般的な携帯電話の基地局が半径数キロメートル、PHSが半径数百メートルをカバーするのに対して、コードレスホンや無線LAN程度の到達距離となる。
これまでの基地局と比べて小さく軽くできるため、設置場所の制約が少なくなる。具体的には電波が届きにくいビル内や地下街、住居内に設置でき、きめ細かいエリア整備が可能になると期待されている。
ドコモは専用のIP網にフェムトセル対応基地局を接続する実験を7月に開始。秋頃には、運用を開始すると発表した。ソフトバンクモバイルは、フェムトセル基地局と携帯電話ネットワークとの接続にはFTTHやADSLを使用し、トラフィックはインターネットを流すという方法で実験を進めている。
積極的にフェムトセルを進めるドコモとソフトバンクモバイルだが、KDDIは「研究はしているが、フェムトセルの問題点を知っているから消極的」(小野寺氏)と話す。
KDDIが採用しているCDMA2000方式も、ドコモとソフトバンクモバイルが採用するW-CDMAも、1つの端末で複数の基地局と通信ができる技術「レイク受信」を採用している。干渉に強かったり、ハンドオーバーがスムーズにできるといった利点がある。小野寺氏は、「現在のレイク受信は3つまで。技術的には無限にできるが、端末の価格や処理能力を考えるとそれはできない。このような制限があるので、勝手にあちこちに置かれたフェムトセルではたくさんの電波を拾ってしまい干渉が出てくる」と話した。基地局を増やした際にも問題になったようで「基地局をたくさん置けばいいというものではない」と振り返った。
法的な問題も指摘する。日本国内において違法電波が発信できる機器は「製造も販売も罰せられない。使わなければ捕まらない」という状態。「“違法な機器の製造や販売を認めない”という法整備が必要」だと提言する。またフェムトセルの機器を販売した場合、「改造する人たちが出ると思う。パワーアンプをつけただけで、出力が簡単に上げられる」として、先に触れた干渉の問題がさらに拡大することを危惧した。
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