ITmedia おサイフケータイは、使える場所が広がってきましたね。
神尾 おサイフケータイの利用シーンが広がったわけじゃなくて、FeliCaの利用シーンが広がっただけなんですけどね。交通分野と流通小売り分野でFeliCa対応は大きく進みましたから、結果として、おサイフケータイも使いやすくなった。だけど、例えば交通分野ではモバイルSuicaの後に続くサービスは登場していませんし、利用促進は引き続き努力が必要です。
石川 モバイルSuicaは成功しているといっていいんですかね?
神尾 PASMOとの相互利用開始後、ユーザーは大きく増えましたけど、まだ「火がついた」とは言えないでしょうね。ポテンシャルは高いのですが。
石川 会員数はまだ60数万人くらいですよね。当初、半年で100万人にするとかいっていましたけれど。
神尾 モバイルSuicaは、来年(2008年)が注目だと思っているんですよ。なんでかというと、モバイルSuicaの方がお得になってきたからです。今でもビューカードとモバイルSuicaの組み合わせはポイントが3倍もらえてお得なのですが、来年(2008年)には新幹線の9%割引が始まります。そういった「お得さ」の部分がもっと認知されれば、モバイルSuicaはもっと普及すると思うんです。ただ、気がかりなのはJR東日本が宣伝があまりうまくないというところですね。
石川 今年(2007年)、PASMOが始まりましたけど、品切れになって大変でしたよね。Suicaを持っていた人が、PASMOも買い求めたというのを見ると、一般の人たちに情報がちゃんと届いていないと感じました。2つのサービスを1枚で使えるのがメリットだったにもかかわらず、認知度が低くて、あんなことになってしまった。そういうことを考えると、企業としてもっと努力しなくてはいけないし、我々も分かりやすく伝えなくてはいけないなと思ったんですが、実際はどうなんですか?
神尾 あれは、知らなかったというよりは、むしろ知っていたからPASMOに変えたんです。私鉄沿線の人たちは、今までJRに乗ることもあるのでSuicaを持っていたんですよ。それがPASMO開始で、PASMOに“買い直した”んです。特に2007年前半は私鉄各社やメトロが、クレジットカードとオートチャージで熱心に拡販しましたので、「Suicaは持っているけれど、沿線(事業者)のPASMOを買うか」になったわけです。
石川 そんなもんですか。
神尾 PASMOにする方が、私鉄沿線に住んでいる人、特にクレジットカードを持っている人はお得ですから。確かに、私鉄はPASMO、JRはSuicaしか使えないと勘違いして買った人もゼロではないと思いますけれど。
石川 今「一枚で使えます」ということを、やたらと宣伝しているんですよ。それをみていると、勘違いしている人もいたのかなと感じたんですけどね。
神尾 初期にはいたでしょうが、いずれにせよ「買い直し」・「買い増し」需要を読み違えていたんだと思います。
あと来年(2008年)で見ると、注目しているのは「iD」です。今年(2007年)、クレジットカード各社のEdyチャージのポイント付与条件が変わって、クレジットカードからのチャージポイントが付かなくなっていますよね。そのせいでANA VISAカードユーザーのiDが伸びるだろうな、と注目しています。来年は、DCMXとANA VISAがiDの牽引役になりそうで、特にANAユーザーは利用率が高いので期待できるかなあ、と。
石川 僕もANA JCBを使っているんですが、考えなくちゃいけないなと思っています。
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