2008年はモバイルWiMAX、3.9G、4Gへ向けた種まきが重要に2007年の携帯業界を振り返る(4)(1/4 ページ)

» 2007年12月31日 17時00分 公開
[房野麻子,ITmedia]

新しい販売制度で本当に得をしたのは?

ITmedia 第1回で石川さんが「総務省に振り回された1年」とおっしゃっていましたが、その総務省の主催したモバイルビジネス研究会の答申によって、新しい販売方式と料金体系が始まりました。これについては、どのようにご覧になっていますか?

石川温氏(以下敬称略) KDDI、ドコモ両者とも、ウリにしたい料金プランははっきりしているので、1つにすればいいじゃない、という気がしましたね。ドコモは9割5分バリューコースが選ばれていると言っています。だったらバリューコースだけでいいじゃん、ということですよ。

 例えば、ケータイにあまり興味がない人で、とりあえず店頭に行ってケータイを買おうとしたら、2つの買い方があるわけです。「石川さん、どっちがいいんですかね」って聞く人がいるわけですよ。そのときに、「カタログを見れば分かる通りで、これだけスペースを押さえているバリューコースにすればいいんですよ」と言っても、なかなか分かってもらえないんです。一般メディアにしても、2つプランがあれば公平に取り上げますよ。変に2つにせずに、一本化した方がユーザーにとってもわかりやすく、買いやすくて、いいんじゃないのかな、と思っているんですけどね。

Photo 神尾寿氏

神尾寿氏(以下敬称略) ドコモのベーシックコースがなぜあるかというと、バリューコースの割賦の審査に落ちた場合の救済策という位置づけが強いですね。

ITmedia この人には割賦で売れません、というときのためですね。

神尾 そう。割賦なので与信が必要なんです。まれに与信できない人がいるんですね。ベーシックコースがないと、バリューコースの一括払いでしか買えなくなるんですよ。それ以外にも、バリューコースの一括払いは高い、割賦支払いは嫌な人向けということもあるでしょうが、いずれにせよ救済策的な位置づけですね。

石川 携帯ライターは「こんな人にこのプランがお勧め」という原稿を書かされることがあるんですが、ライター泣かせのプランですよね。まあ、そういった抜け道は用意しつつも、はっきりとバリューコースで売ります、といった方がいいんじゃないかなあ。

ITmedia au(KDDI)は逆に、「シンプルコース)(分離プラン)の方がおまけという位置づけですよね。こちらは「フルサポートコース」へ一本化するのは難しそうですが。

石川 ドコモの場合は今後、バリューコースへ1本化とまではいかないまでも、それをずっと訴求していくことは可能でしょう。でも、auの場合はどうするんでしょうね。総務省のいうように、2010年までには分離プランにしなきゃいけない、ということだと、緩やかにシンプルコースに移行させるのか、魅力的なシンプルコースを新たに作るのかで悩ましくないですかね。

神尾 確実に悩ましいというか、不利ですよね。ここで変わればみんなと一緒に変われたのに、auだけ1〜2年後に再び端末販売方式を変えるとなると、分かりづらいし、また商機を逃しますよ。フルサポートコースだって、ポイント充当の仕組みが理解されずに苦労しているわけですから。

石川 ポイントは分かりにくいですね。

神尾 毎月の利用額に応じて還元率を変えていますからね。自分のポイントの付与率がどう変わるかなんて、最初の段階でシミュレートできないじゃないですか。フルサポートコースは全体的に分かりにくいですし、それがユーザーに「今までより損をしている」気分にさせてしまっている。auが考える「公平性重視」で販売方式を複雑化した結果、多くの人が不信感や不満感を持つ内容になってしまった。

Photo 石川温氏

石川 そう考えると、ドコモのバリューコースが一番分かりやすいですよね。ソフトバンクもなんだかんだいって、分かりにくいじゃないですか。割賦販売の金額がある一方で、スーパーボーナス特別割引が付いて、端末によってその金額も違って、と。そう考えると、ドコモはうまいことソフトバンクのマネをして、おいしいところを持っていったなあ、と思いますね。

神尾 「変えなきゃいけないんだったら変えるか」と一気に変えましたからね。あれは正しい。

石川 たぶん、ソフトバンクのことを色々研究して、わかりにくいところを潰した上でのバリューコースだと思いますね。

神尾 しかも、ドコモにとっても、バリューコースは大きなメリットがあるんですよ。なぜなら、今回の新販売方式で販売が伸びているのが、家電量販店とドコモショップなんです。逆に、二次代理店以降、いわゆる併売店は販売数が落ちている。ドコモは今年(2007年)から来年(2008年)にかけて販売チャネルの再編を行い、流通コストの圧縮を図って収益構造を強化するのですけれども、その取り組みにバリューコースは追い風になっているのです。

石川 誰にとってのバリューかといって、ドコモにとって最もバリューだと思いますよ。ドコモの経営にとって価値がある。

神尾 ユーザーにとってのバリューでもあり、ドコモの事業基盤を強化するバリューでもある。このふたつを両立させる販売方式になっているのがすごい。 ソフトバンクモバイルの新スーパーボーナス、総務省の「分離プラン」導入への働きかけなど、外的要因をうまく利用して、ドコモは販売チャネルの再編と効率化・合理化をする仕組みを作ったんです。しかも抵抗勢力に対しては言い訳が立つ形で。

石川 ドコモの中村(維夫)社長は必殺仕事人ですよ。

ITmedia 中村社長は財務出身の方ですよね。

神尾 そうですね。事務畑出身の方ですね。来年はドコモが一社化しますが、地域会社との融合と効率化が進むと、どんどん骨太の組織になって強くなりますよ。

石川 本当にそれは感じますね。

神尾 足踏みしているように見えたこの3年間、ドコモがまいた種がかなり実ってきたんですよ。そして、たぶん来年以降も収穫期は続きます。

ITmedia ソフトバンクモバイルの新スーパーボーナスに関してはどうでしょう。モバイルビジネス研究会では、あの形のままでいいとは言っていませんが。

神尾 一番問題視されているのは、新スーパーボーナスの特別割引ですね。料金プランとの連動領域が大きいから。

石川 結局通信費と一緒になっちゃっているので、違うんじゃないの? という話はしていますね。

ITmedia 具体的な話はまだ聞こえてきませんが。

石川 年明けすぐに発表があったら、どうしようとビクビクしてますよ(笑)

神尾 今年の始めみたいに(笑) ただ、いずれは改訂が必要でしょうね。その際に、ユーザーのメリットと、ソフトバンクモバイルのメリットをうまく両立させられるか。手腕が問われるところです。

石川 ソフトバンクモバイルの広報に聞いたら、「ウチは6日まで休みだから来年は大丈夫」って言っていましたよ(笑)

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