W61SHのデザインのコンセプトは「オーセンティックモダン」だという。オーセンティックとは本物感、本流感を意味する。「オーセンティックモダンは、言葉としては成立していないように思えるかもしれませんが、“もともとマッチしていないもの(=本物感とモダン)が見事に融合している様子”を表しています」(谷氏)
W61SHの“本物感”は、背面に採用したステンレスパネルで表現されている。ステンレスパネルの部分はデザイン的に2分割されていて、左側にはヘアライン加工、右側には鏡面加工が施されている。
「1枚のステンレスパネル上でヘアラインと鏡面をまっすぐに分けるのは、技術的に非常に難しいのですが、斬新なデザインを実現できました」と谷氏。また、1枚のパネル上に分割されたようなデザインを構成することで、投影面積を実際よりも小さく見せる効果もあるという。これは「数値以上のコンパクトさを与えることをねらった」と谷氏はいう。
ちなみに十字キーと決定キーにも、縦と横のヘアライン加工が施されているが、こちらは全体が4分割され、中央でヘアラインの目を変えてある。十字キー部のヘアラインの色はボディカラーによって異なっている。
一方“モダン”を表す要素として注目したいのが、時計、バッテリー残量、電波状態、各種アニメーションなどを表示するLEDディスプレイだ。「ステンレスの部分とあわせて、しっかりとグラフィカルな構成ができるようアプローチしました」(谷氏)
LEDを採用したのは、「デザイン上も違和感なく、大きくキレイに表示できるため」(谷氏)。確かに、通常のサブディスプレイよりもLEDディスプレイのほうが、時計(時刻)を大きく表示できるメリットがある。
LEDで表示できるアニメーションは90種類をプリセットしており、デフォルトでは90種類の中からランダムに表示されるが、「ヒューマン」「アニマルパートナー」「レトロゲーム」など、ジャンルを指定することもできる。なお、メーカーサイトから追加のLEDアニメーションデータを配信する予定は今のところないようだ。
このLEDディスプレイには、天気予報を表示する機能もある。これはEZニュースフラッシュの天気予報と連動しており、晴れ、曇り、雨、雪、晴れ時々曇、雨のち雪などの予報を表示してくれる。
LEDディスプレイの点灯時間はデフォルトの5秒に加え、2秒と10秒を選べるが、常時点灯はできない。ただし充電中は常時点灯させる設定があり、アニメーション+時計という形で表示される。
なかなか面白いLEDディスプレイだが、着信時やメール受信時には、ここに相手の名前や電話番号などを表示することはできるのだろうか。谷氏によると、「相手の名前は表示されないが、相手とグループによってLEDのアニメーションを変えることはできる」という。これは同じ相手でも、電話・Eメール・Cメールで設定を分けられる。
「LEDディスプレイは一番苦労した」と谷氏。「筐体の塗装の加減が少し変わっただけでもLEDの見え方がだいぶ変わるし、ほかに本体色や素材のバランスによっても見え方は変わるので、調整に苦労しました」(谷氏)
サブディスプレイには有機ELを採用する案もあったそうだが、ディスプレイの枠が残ってしまう点がデザイン的にマイナスになることから見送られた。「LEDディスプレイは、普段はなにもない美しい筐体から時計が浮かび上がるのが魅力です。また、時計を大きく見せたいというのも(LEDを採用した)大きな理由です」(谷氏)
auのシャープ端末は、auケータイの中では後発ながら使いやすさには定評がある。W61SHでは、こうした使い勝手やユーザーインタフェース(UI)にも磨きがかけられている。
まず、カメラを使って名刺を読み取り、情報をアドレス帳に登録できる「名刺リーダー」がau端末向けとしては初めて採用された。基本的な仕様や認識精度、英字の名刺や縦書きの名刺を読み込める点は、他キャリア向けのシャープ端末と同じだという。ただW61SHオリジナルの機能として、読み込んだ情報をコピー&ペーストする機能を用意した(ソフトバンクモバイルの端末も類似の機能を搭載している)。
日本語入力システムはW52SHのケータイShoin5からケータイShoin6にバージョンアップし、入力した名詞に続く言葉を表示する連携予測変換機能が強化された。さらに、かな入力から数字を変換する際に、「10時」「10日」「10月」など、数字+単位がセットで変換候補に表示されるようになっている。かな入力で英字を変換すると、次回からはかなを打つと、(変換した)英字が候補に表れる仕様も追加された。細かい点だが、案外入力する機会の多い芸能人の名前の語彙数も増えている。
ダイヤルキーは「爪の長い方は、指の腹でどこにキーがあるかを探りながら、キー面を見ずに入力する人が多いというリサーチ結果も出ているので、ウェーブ状にしました」と谷氏。ただし、波型でありながらもあまり強調しすぎないよう配慮したという。「キー面は、“美しく”“使いやすく”をテーマに、光の反射でキラキラ光って見えるようにしました」(谷氏)。キー表面のフォントは、ピュアホワイトとクールブラックはやや細め、ビビッドピンクのみ太めのフォントを採用している。
ちょっと変わった機能として「フェイク着信」も採用された。サイドのカメラキーを押すと着信音が鳴り、あたかも電話がかかってきたかのように装えるものだ。「着信音が鳴ったあとにキーを押すと、フェイク着信の通話画面になるほか、背面のLEDも通話中の状態になるので、夜道を歩く女性が、背後に人の気配を感じて怖い思いをしたときなどに役立つのではないでしょうか」(谷氏)
このフェイク着信が優れているのは、マナーモード時でも着信音を鳴らせることだ。ただし誤ってサイドキーを押してしまうこともあるので、出荷時はフェイク着信機能はオフになっている。フェイク着信時に鳴るメロディの音量は一定だが、着うたなどほかのメロディにも変更できる。ちなみにこのフェイク着信は、auの春モデルの共通機能になるという。
「通話中の画面から110番したり、自分の好きな番号を入力して電話できるので、フェイク通話中に緊急連絡することも可能です」(谷氏)
このほかUIの改善として注目したいのが、横画面表示できるコンテンツが増えた点だ。フル画面・ワイド・カラーの横画面コミックを携帯電話では初めて採用する。「横のワイド画面用にコミックを作り直しました。集英社さんの協力のもと、さらに作品を増やしていく予定です。携帯電話でコミックを読むという文化がやっと定着したので、サイクロイドボディのW61SHなら、横画面とコンテンツの組み合わせの1つとして訴求できると考えています」(谷氏)
横画面のゲームにも対応し「2008 リアルサッカー」の体験版をプリセットしている。「横画面のゲームはサイクロイドスタイルと相性がよいので、ゲームコンテンツも訴求していきたいですね。今後メーカーサイトのSH@ezから追加の横画面ゲームを配信できるよう、ゲームメーカーと検討しています」(谷氏)
このほかワンセグ、PCサイトビューアー、LISMO ビデオクリップ、EZチャンネルプラス、カメラ撮影、データフォルダやmicroSDに保存した写真、動画の再生も横画面で利用できる。ただしソフトバンクモバイルの「912SH」や「920SH」のように、すべての画面を横向きに表示することはできない。これはau端末の仕様上難しいようで、「今後の検討課題」(谷氏)としている。
「横画面に対応した機能やコンテンツは、ほかのAQUOSケータイと比べると限定されていますが、PCサイトビューアー、ビデオクリップ、ワンセグ、カメラ、データフォルダなど、横で見たいというニーズが強い機能はしっかり対応しています」(谷氏)
W61SHでは、EZケータイアレンジを用い、カラーバリエーションごとに異なる待受画面やメニュー画面が設定されている。これは最近のケータイでは珍しい仕様ではないが、EZケータイアレンジのテーマごとに異なるメニューが採用されているのが大きな特徴だ。
例えば「スタンダード」は従来のメニューと同じだが、「Music Lover」では「LISMO Music Search」「うたとも」「au Records」など音楽系のメニューが、「Happy Holidays」ではフォト、ワンセグ、音楽、おサイフケータイなど休日を意識したメニューが多く表示される。また、UIを全面的に見直したため、第1階層だけでなく第2階層以降の仕様もテーマごとに異なっている。
auケータイのメインメニューは4×3(12個)の表示が主流だが、W61SHでは、3×3(9個)のメニューも用意する。これは「簡単に使ってもらうため」(谷氏)だという。
「『Pretty』は、簡単だけど基本機能は押さえたいという人向けのメニュー。『カメラ』でなく『フォト』を入れたのは、フォトだけを優先的に使いたい人が多いと考えたためです。デフォルトで入っている機能はすべてのメニューのいずれかの階層から選べるので、差はどこにどの機能が入っているか、という点だけです」(谷氏)
EZケータイアレンジは7種類をプリセットしており、その中の1種類として、auのシャープ端末ではおなじみの「えすえいち村」コンテンツも用意されている。W61SHでは待受画面とメインメニューに加え、デコレーションテンプレート、フォトフレーム、ワンセグ着せ替えパネルも「えすえいち村」のコンテンツに変更できるようになった。
機能面では、複数の機能を切り替えて使える「Task bar」、待受画面から数字を入力してカレンダーや電卓などを呼び出せる「クイックメニュー」、待受画面で数字キーを長押しして機能を呼び出せる「ショートカットメニュー」も継承している。ショートカットメニューには名刺リーダーも登録可能だ。また、「機能によって異なるが、キーレスポンスはW52SHよりも若干速くなっている」(谷氏)という。
スリムでコンパクトなサイズ、シャープの最新液晶デバイスで視聴できるワンセグ、ステンレスパネルとLEDディスプレイが織り成す斬新なデザイン、使い勝手にこだわった基本機能──。W61SHは、最新のトレンドを押さえたワンセグケータイとして、幅広いユーザーに訴求できるモデルに仕上がっている。他社のAQUOSケータイほど派手なスペックではないが、使うほどに“持つ喜び”を感じられる1台だといえる。
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