中国人観光客を狙え――長崎・浜んまち商店街、iD、Edy、銀聯を導入

» 2008年02月04日 12時24分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
浜んまち商店街で行われたセレモニー。長崎県副知事や長崎市長、三井住友カード、ビットワレット、ドコモ九州の要職者が出席した

 長崎浜んまち商店街振興組合連合会は2月1日、FeliCa決済の「iD」「Edy」、および中国で広く普及する決済方式「銀聯(ぎんれん)」の取り扱いを開始した。長崎市浜町周辺の商店街では各店舗で共用端末を導入し、iD、Edy、銀聯の3方式による決済が可能になる。決済端末の設置台数は約300台。Edy・iD・銀聯の3方式を商店街が大規模導入するのは全国初の試みとなる。

 商店街のFeliCa決済導入は、過去にも愛媛県松山市の道後温泉街や名古屋大須商店街、宮城県仙台市の中心6商店街、静岡県静岡市中央商店街など多数の事例がある。しかし、これらはEdyやiDなど複数あるFeliCa決済方式のうち、特定の1つに対応したもの。一方、浜んまち商店街では、iD・Edyの両方に対応したマルチタイプのリーダー/ライターを導入し、1台の端末で2方式に対応した。

 さらに今回の決済方式導入で注目となるのが、銀聯への対応である。銀聯は中国で広く普及した決済方式で、中国国内の発行枚数は約13億枚。中国人にとって最もポピュラーなカードとなっている(参照記事)。銀聯への対応は、東京など都市部の大手百貨店や家電量販店で進んでいるが、地方の商店街で大規模対応するのはこれが初めてのケースだ。

中国で発行されている銀聯カード。発行枚数13億枚を超えており、中国人にとって最も一般的な決済カードだ(左)。長崎では2月7日から21日まで「長崎ランタンフェスティバル」が街を挙げて開催される。浜んまち商店街はその中心部として、多くのランタンが飾られていた。ランタンフェスティバルは、もとは長崎中華街発祥のお祭りであり、その光景には中国との交流の深さが感じられた(右)

銀聯を導入すると、なぜ中国人観光客のメリットになるのか

長崎浜んまち商店街振興組合連合会理事長の石丸忠重氏
長崎中華人民共和国領事館総領事の滕安軍氏

 iD・Edy・銀聯の導入に合わせて行われたセレモニーでは、長崎浜んまち商店街振興組合連合会の理事長 石丸忠重氏が「今回のシステムは全国でも3本の指に入る大規模なもの」と強調。最新の決済方式であるiD・Edyへの対応や、これらを通じておサイフケータイが商店街で利用可能になった点をアピールしたほか、中国人観光客が増加する中で銀聯への対応は重要と話した。

 「(新たな決済方式には)まずは浜んまち商店街から対応しますが、今後は近隣の商店街や、新地の中華街などとも連携し、(iD・Edy・銀聯対応を)広げていきたい」(石丸氏)

 浜んまち商店街の銀聯対応については、中国側も歓迎している。セレモニーで挨拶に立った長崎中華人民共和国領事館総領事の滕安軍氏は、「銀聯は中国で最も利用者の多いカード。これに(浜んまち商店街が)対応することは中国の観光客にとって非常に喜ばしいこと」と話す。

 「銀聯の導入は、中国からの観光客の利便性が大きく向上します。これは長崎の観光や国際性にとって錦に花を添えることになり、地元商店街の経済振興に繋がるでしょう。

 翻ってみれば、長崎は(新地の中華街などで)中国との歴史的な関係が古く、地理的にも上海と近い日本の都市になります。中国では近年の経済発展により海外旅行者が増え、昨年は(海外旅行者が)4000万人に達しました。まだ日本を訪れる中国人は約97万人と少ないですが、銀聯導入のように中国人旅行者の利便性が向上していけば、この数字はもっと増えていくと思います」(滕氏)

 中国では政府が人民元や外貨に海外持ち出し制限をかけているため、中国人が海外旅行で高額な買い物をするのは不便な環境にある。しかし、海外旅行先で店舗が銀聯に対応していれば、デビッドカード支払いが利用でき、貴重な持ち出し現金を使わずに買い物ができることになる。これは日本を訪れる中国人観光客にとって大きなメリットであり、店舗側は売り上げ拡大の効果が見込めるという。

iD、Edyを軸におサイフケータイの利用促進も

 銀聯と並んで、今回の新決済方式導入で期待されているのが、FeliCa決済のiDとEdyだ。こちらは観光客だけでなく、地元住民への普及と利用促進も狙っている。アクワイアラ側の期待も高く、iDを推進する三井住友カードからは常務執行役員の太田修司氏、Edyを推進するビットワレットからは代表取締役専務 兼 マーケティング本部長の奥出勉氏がセレモニーに参加。大規模導入となる浜んまち商店街を足がかりに、長崎および九州全域への展開に期待感を表した。

 「Edyでいえば、(コンビニの)ファミリーマートやローソンで九州全県への展開ができています。しかし、FeliCa決済の普及・利用促進で重要な『密度』で考えますと、浜んまち商店街のような(消費活動の)中心エリアで大規模導入されるメリットは大きい。また、今回は三井住友カードの決済スキームに、iDと相乗りさせていただく形でEdy導入をしました。他のFeliCa決済との共用化・協業はさらに広げていきたい」(ビットワレット奥出氏)

 さらに今回のiDとEdyの大規模導入を支援しているのがNTTドコモ九州である。「おサイフケータイの利用促進で見れば、iDとEdyどちらも加盟店が増えることは歓迎すべき状況です。長崎ではすでに(モバイル長崎スマートカードで)バスでおサイフケータイが利用できましたが、今後はショッピングでも利用可能な場所が増えます。長崎でのおサイフケータイ利用促進を、さらに積極的に行っていきたいと考えています」(ドコモ九州長崎支店長の末茂雄氏)

今回のシステム導入ではNTTドコモ九州も協力。同社ソリューション開発部ビジネス開拓担当の池田大輔氏が、おサイフケータイやiDについて説明を行った

 中国の経済発展とともに「銀聯」の注目度は年々上がってきており、一方でFeliCa決済のiDやEdyの全国での普及には拍車がかかっている。しかし、この3つが1つの決済端末で利用可能になり、大規模導入されるケースは珍しい。今回の浜んまち商店街の取り組みは、新たな決済サービスの広がりを象徴する事例と言えそうだ。

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