なかなか見えてこない、携帯端末向けマルチメディア放送サービスの具体的な姿「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」第7回会合

» 2008年02月05日 20時53分 公開
[石川温,ITmedia]
Photo 携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会

 総務省は2月4日、2008年最初の「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」を開催した。第7回目となる今回は、2007年12月20日に開催した第6回までの議論を振り返り、フリーディスカッションが行われた。

 この懇談会は、2011年に停波する地上波アナログテレビ放送の空き周波数帯の活用方法やその利用の際のビジネスモデル、社会的役割、それらをふまえた制度的、技術的課題を検討していく会合だ。今回は制度関連の事項を振り返り、論点の整理を行った。

 これまでの懇談会では、放送局や携帯電話キャリア、消費者団体などからさまざまな意見が主張されてきた。今回からはこれらを踏まえ、改めてマルチメディア放送サービスがどうあるべきかを検討した。

 制度面を整備するにあたり、まず必要となるのが「どのような放送に周波数を割り当てるか」という議論だ。いまのところ、デジタル化を検討しなくてはならない現行のアナログFM放送や、マルチメディア放送といったメディアが割り当ての対象とされている。

 また、法制度上の位置づけとして「基幹的メディア」か「非基幹的メディア」かという議論も欠かせない。基幹的メディアであれば、現在の地上波放送と同様に、災害情報など国民生活に必要不可欠な情報を提供しなくてはならないからだ。

 さらに放送対象地域として、衛星放送のように「全国」レベルで行うのか、地上波放送のように「県域(関東、中京、近畿圏は広域)」なのか、コミュニティFMレベルの「地町村」単位でいいのかという点も議論する余地がある。ほかにも、マスメディア集中排除原則の適用や、ハードとソフトを一致型で行うのか、分離させるのかといったことも考慮しなくてはならない。

 こうした部分を議論するのが今回の会合の目的だ。

 総務省の事務局から基本的視点が説明された後、構成員からは多種多様な意見が述べられた。

 黒川和美座長代理からは「チャンネルを増やしても、受け手側の時間の総量が決まっているので、聴取率が獲れず、結局はゼロサムゲームになってしまう。今は全国型の雑誌は売れないが、リクルートの情報誌『ホットペッパー』のように、ローカルなコミュニティ向けの雑誌は受けている。千葉、柏、立川、相模原、町田、相模大野といった地域では、夜間人口が100万人もいる。こんな地域が(関東には)11カ所もある。このようなエリアで、地域密着型のラジオ放送ができれば、かなり面白いのではないか。しかも半径10キロで、それらの地域が重なることはないので、電波の有効利用もできるはずだ」と、地域密着型放送の可能性が示された。

 伊東晋氏からは「狭い地域を対象にしたコミュニティ放送、ラジオの高度化、ケータイ向けのサーバー型サービスの3つが考えられる。しかし、すべてを実現するのは難しいだろう」との意見が述べられた。

 免許の割り当てに対しては、具体的な方法が意見として述べられた。

 吉田望氏は「VHFのローバンド(90M〜108MHz)をラジオに割り当て、ハイバンド(170M〜222MHz)を多チャンネルに割り当てる。2つのなかにも何かしらの互換性を入れる。帯域を自由に対応できるような仕組みを入れたほうがいい」という。

 伊東氏はまた「VHFローバンドはデジタルラジオとコミュニティ放送をデジタルラジオにするサービスの位置づけは、現行の放送サービスを基本にしたもの。VHFハイバンドは、ビデオを中心としたマルチメディアで全国対象に。可能な限り自由度の高いものにするが、一定のしばりは必要だろう」との意見も述べた。

 ただ、多くの構成員からは、携帯向けマルチメディア放送の方式を早期決定することに対して、慎重論が続出した。

 吉田望氏は「いま、(テレビは)アナログからデジタルに置き換わってきたが、予想以上に時間がかかるということが分かってきた。完全移行の時期が遅れる可能もある。セカンドデジタルというか、デジタルの魅力を生かした規格を考える時期がくるのではないか。制度についても、周波数毎に割り振るのでは難しい。広告産業も衰退しているので、新しい広告ビジネスを模索する必要があるだろう」と話す。

 北俊一氏も「制度のなかでも複数の選択肢がある。この組み合わせを決めて議論する必要がある。基本的な視点、何を実現すべきなのか。国際競争力と地域の活性は、どちらが優先させるのか。まずはこれらの解を求める必要があるだろう。ゴール、すなわち目指すところが決まらずに議論はできない。バラバラのゴールを見据えたままに、議論しても仕方ない」と、もっと具体的な到達点を決めることが先だと主張した。

 また、国際競争力の問題にしても、伊東氏は「希望する方式が世界を席巻するかといえば、それは難しいだろう。(日本の“ワンセグ”技術であるISDB-Tは)ブラジルでは放送が始まり、アジアでも拡がる可能性はある。しかし、日本で開発した方式を世界に持って行こうとしているが、ケータイのサービスとは違う」との見方を示した。

 「ケータイのように当該事業者として閉じている場合は、別の技術でも相互接続ができていればいい。しかし、放送はいろいろな端末で受けられなくてはいけない。結局は1つに統合されていくのをいいと見るか、悪いと見るか。DVDの統一もうまくいかなかったが、結果的には市場競争で目処がついた。2つの方式が混在すると、消費者の買い控えが起こり、市場に出回りにくくなる。携帯電話キャリアなら独自方式でもいいが、放送の場合はそうはいかない」(伊東氏)


 第8回目の会合は、2月18日に開催される予定だ。引き続き構成員による議論を経て、今後は取りまとめ作業に入る予定。ただ、構成員の間でも、携帯端末向けマルチメディア放送サービスの具体的な姿が見えていないのが実態だ。取りまとめにはもうしばらく時間がかかることも予想される。

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