携帯販売員向けの新検定試験、“ケータイソムリエ”に実効力はあるのか:神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

» 2008年02月06日 11時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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“ケータイソムリエ”に実効力はあるのか

 キャリアと販売会社は、販売員の資質向上のためにさまざまな取り組みをしている。すでに導入されている各キャリアの資格制度はよく考え抜かれたものであり、これが「(キャリアの)“特定のサービス”の情報や“特定の機種などの操作”」を審査項目から除外するという総務省方針案の新たな検定試験よりも劣るとは考えにくい。しかし、総務省によると、方針案はあくまで「新たな公益法人かNPOが、新たに作る検定試験のみが(総務省の)後援の対象と考えている。今ある各キャリアの資格制度を後押しする考えはない」(総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 事業政策課)。

 しかし、仮に総務省が後援する新たな検定試験ができたとしても、それが現行の資格制度以下の内容でしかなければ、販売員の負担をいたずらに増すだけだろう。キャリアや販売会社はもちろん、ユーザーにとっても、販売員の無意味な負担増はマイナスにしかならない。

 ユーザーの利益のために、販売員の検定試験を総務省が後押しする。このスタートライン自体は正しいが、総務省の考える方針案に、現行制度以上の“ユーザーの利益拡大”という実効力があるのだろうか。筆者にはそうは思えない。今回の方針案が行き着く先は、販売員やユーザーにとって無意味な形で、検定試験や公益法人を作るだけになりはしないか。

現行の資格制度を生かす仕組みは考えられないか

 むろん、携帯電話のサービスや端末が高度化する中で、販売員の資質向上の重要性は今後さらに増してくる。また、“消費者の選択肢を増やす”観点から、キャリアの垣根を越えた知識の獲得も必要になってくるだろう。繰り返しになるが、総務省が販売員の検定試験や資格を後援する、というスタートラインそのものは間違っていない。

 問題なのは、各キャリアの現行資格制度を無視して、新たな検定試験を作ろうというアプローチの仕方なのだ。キャリアの個別性を引き算していけば、検定試験の内容は消費者が本来もとめる情報と乖離し、実効力がなくなる。それではキャリアも金銭的な支援ができず、販売員は負担ばかりが増えて、自らの地位向上や収入拡大につながらない役立たずの検定になってしまうだろう。

 筆者は今後の販売員資格制度について、各キャリアが実施する現行制度を生かす方向で、基礎的な部分は全キャリアで共通化を図るのが適切ではないかと考えている。総務省でも「(各キャリアの)現行の資格制度ではなく、各キャリアが共同で設立・運営する組織が実施する検定試験ならば、今回の方針案の後援対象になりうる」(総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 事業政策課)という見解だ。現行の仕組みを無駄にせず、キャリア・販売会社・販売員の3者の負担にならずに、ユーザーにとってプラスになる新たな検定試験や資格制度は考えられないものだろうか。


 携帯電話ショップの販売員は、多くのユーザーに携帯電話の魅力を伝える重要な役割を担っている。新たなサービスや端末、お得な料金プランも、販売員が正しく・分かりやすく紹介しなければ、ユーザーに知ってもらうことができない。販売員は、携帯電話業界とユーザーのどちらにとっても大切な人たちだと筆者は思う。

 だからこそ、販売員が正しく評価されて、能力が高められる環境を作ることはとても大切だ。検定試験や資格制度を安易に作り、実効性はないのに負担ばかり増すような状況にしてはいけない。

 総務省の方針案は、2月8日まで意見募集(パブリックコメント)を受け付けている。どれだけのキャリアや販売会社が意見提出をするかは不分明だが、その議論は、今ある現実をしっかりと見据えて、慎重かつ建設的に行われるべきだ。

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