2007年4月に発足したNokia Siemens Networks(フィンランド)は、モバイル2位、固定3位の通信インフラベンダーとなった。この業界は、先日もNECが仏Alcatel-Lucentと合弁会社設立計画を明らかにするなど、いまだに再編が進んでいる。
スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2008」で、Nokia Siemens Networksの戦略 事業開発部門戦略/プランニングトップのKai Konola氏に合併からこれまでの経過、LTE(Long Term Evolution)やWiMAXといった次世代通信事業の動向について話を聞いた。
ITmedia Nokia Siemens Networksが生まれて1年が経過しようとしています。現状を改めて教えてください。
Konola氏 合併の目的はまず、グローバルにリーチすること、そしてスケールとビジネスボリュームの獲得でした。合併を発表した2006年夏から2007年初めまでは、統合のためのプランニングに費やしました。その後、そのプランニングを実行に移しています。
合併におけるシナジー効果の一部として、人員削減があります。スタート当初、社員は6万人でしたが、2007年末までに4200人を削減しました。最終的に合計9000人の人員削減を予定しています。2007年は人事や財務など会社機能の統合も進め、土台を築けた年だったといえます。
特に重視したのは文化的な部分です。社風の違いなどをカバーするため、Webベースのセッションを開き、Nokia Siemens Networksのバリューやフォーカスについてを社員にざっくばらんにアイデアを交換してもらいました。
ITmedia 顧客側から混乱はありましたか?
Konola氏 1年前の「3GSM World Congress 2007」で我々は、ロゴやブランディング、製品体系を発表しました。
製品のオーバーラップが少なかったので、混乱も少なかったと思います。モバイル分野は少し重なりがあったので、継続するもの/打ち切るものを決め、開発中の製品や機能についても2010年までの計画を決めました。その結果、よい製品ポートフォリオができたと自負しています。顧客にも理解してもらっています。
ITmedia では次に、LTEの現状と動向を教えてください。
Konola氏 LTEは下り最大転送速度が150M〜170Mbpsを実現すると言われる高速通信技術で、すでに業界団体の3GPPで仕様が固まっています。当初の速度は100Mbpsほどだと思われますが、それでも携帯端末で利用するにしてはかなりのものです。速度だけではなく、接続遅延(レイテンシ)の短縮も特徴で、その値は約10ミリ秒と言われています。全体としてのパフォーマンスが高度化した技術です。
Nokia Siemens Networksでは、無線からコアネットワークまで幅広くLTEへの対応を推進しています。
顧客では、例えば日本ではNTTドコモがあり、Nokia Siemensはパナソニックとともに参加しています。米国ではVerizonもLTEパイロットを示唆していますね。LTEの商用サービス開始はまだ少し先でしょうが、2009年にパイロットがはじまり、2010年にマス向けの商用サービスが始まることになると思います。我々はここでよいポジショニングにあると思っています。
LTEの実装は、システムアーキテクチャと無線インタフェースの2つを見る必要があります。システムアーキテクチャ側では「Internet HSPA」として、HSDPAでLTEに移行可能なシステムをすでに提供しています。無線インタフェース側では、W-CDMA/HSDPAに対応した「Flexi Multimode Base Station」を2008年第3四半期に提供する予定です。その後、ソフトウェアのアップグレードだけでLTEを実装可能にします。
つまり、HSDPAからLTEに移行するオペレーターは、投資した資産を確保しながら新しい技術にアップグレードできると言えます。
ITmedia アプリケーション側ではどうでしょうか?
Konola氏 こちらはIPTVソリューションに力を入れています。しかしIPTVは動きがやや遅く、マス市場に向けてはまだ離陸していません。この課題の1つが相互運用性で、「Open IPTV Forum」などの団体も立ち上がっています。通信業界では、特に「相互運用性」が重要です。例えばSMSは、相互運用性が確保されると一気に広がりました。
LTEやIPTVなどの新しい技術の推進も大切ですが、ほかにも課題はたくさんあります。インドや中国などでGSMは、いまだにボリュームを増やしています。例えば携帯新興国では毎月5000万人が新たに加入しているという数字もあるほどです。そのため、既存システムのパフォーマンス向上など、目立たないが重要な取り組みも当然、行っています。
ITmedia では、WiMAXの取り組みはいかがでしょう。
Konola氏 WiMAXでは、米Sprintと英国の新規参入テレコムの2社を顧客として公式に発表しています。IEEE 802.16eが2008年第2四半期に利用できるようになり、先のFlexi Base Stationでサポートする予定です。
WiMAXは、W-CDMAベースではないオペレーターや新興市場に進出しようとするオペレーターに魅力的な技術だと思っています。
ITmedia データ定額制を提供するオペレーターが世界的に増えています。また、Appleは「iPhone」でオペレーターを選択するという動きに出ました。これらをふまえて、今後のオペレーターの課題は何でしょうか?
Konola氏 オペレーターの多くは、さまざまなビジネスモデルの可能性を考えているようです。例えばネットワークとサービスを分離し、ネットワークを卸売りするなどです。ネットワークの卸売りはMVNOという形で実施されており、これまでのような垂直型ビジネスからの転換となりえます。
オペレーターはユーザー情報を持っており、ユーザーがどうネットワークを活用し、どこにいるのかも把握しています。この貴重な情報をサービスと連携させることで、タイムリーに情報やサービスを提供できます。今後、オペレーターは自社のネットワークを、自社およびサードパーティも含めた「サービスを活用できる資産」となるように変えていく動きが加速していくのではと思います。
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