2008年に開局55周年を迎える日本テレビが、現在取り組んでいる技術研究テーマを紹介する展示会「デジテク2008」を開催した。この展示会では、放送を送出するための技術や番組制作を支える技術、将来のメディア像を予見させる技術など、放送に関連する技術を幅広く展示しており、携帯電話関連の技術も披露された。
2月17日に開催された「東京マラソン」は、日本テレビが朝から夕方まで生中継を行った。番組内では日本テレビのアナウンサーやタレントが42.195キロを懸命に走っていたのが印象的だったが、その中継で活躍していたのが、ソニーの高画質リアルタイム映像伝送システム「ロケーションポーター」だ。
このシステムは、ビデオを持ったカメラマンが送信用のタブレットPCを背負い、映像をインターネット経由でテレビ局内の映像受信用デスクトップPCに送信するというもの。東京マラソンでは、このシステムを背負ったカメラマンがタレントと併走して映像を送っていた。
ビデオカメラで撮影された映像は、タブレットPCでエンコードされ、2台のFOMA「A2502 HIGH-SPEED」を経由して送信される。デモ環境では、352×240ピクセルの動画が15fps、500kbps程度で送信されていた。
FOMAを採用した理由については「いろいろな通信手段を試してみたが、FOMAが最も安定していた」からだと説明員。ただ、定額制の対象にはならないため、1時間送信すると1万円程度のパケット通信料がかかるという。中継時ではほかにも、カメラマンの位置を特定するためにau端末のGPS機能を使ったそうだ。
山間部や首都圏の受信状態の悪い場所では、テレビをデジタル化するにあたってCATV網を利用する地域も多い。説明員によれば「実際、全国の2割程度は通常の放送ではなく、CATVなどを使って受信する見込み」だという。
しかしCATV網を使うとなると、そもそも放送波を飛ばさなくなるので、当然のことながら、そのエリアではワンセグも視聴できなくなるのが難点だ。災害情報などの受信需要もあることから、ワンセグ放送は可能な限り広範囲で受信できるのが望ましいとされている。
そこで開発されたのが、13セグメントの放送波から、据え置きテレビ用の12セグメントの放送波を取り除き、ワンセグだけを切り出して送信できるシステムだ。これをCATVなどが普及している地域に配備することで、地方でもワンセグを視聴できるようになる。
「通常の13セグメント用のデジタル中継局を建設するよりも、ワンセグに特化した方がコスト的にもメリットが大きい」(説明員)
このシステムは、すでに富山県の五箇山地域で実験を行っているという。
ACCESSと日本テレビが共同研究の成果として発表したのが、8日分の電子番組表を送信する技術だ。現状のワンセグでは、最大10番組程度の電子番組表しか送信できないが、PCRパケット(信号処理の基準となる時刻情報)の空き領域を有効活用することで、最大8日先までの電子番組表を送れるようにした。
空き領域を活用するため、映像や音声のビットレートには影響を与えず、非対応の既存受信機にも悪影響を及ぼすことはないという。「今後、ワンセグの非サイマル放送が始まるので、ワンセグ番組も多様な番組編成が出てくる。そのためには欠かせない技術」(説明員)
シャープと共同で展示していたのが「読むワンセグ」。イー・モバイルの「EM・ONE」を用い、ワンセグの字幕を履歴で読めるようにするものだ。「ワンセグの字幕はパッと出て消えてしまうため、ちょっとよそ見をしてしまうと、見逃してしまうことが多い。履歴としてすべて表示できれば、きちんと番組の流れを追うことができる」(説明員)。一般的な携帯電話は、画面が小さいことから字幕をそのまま表示しておくのが難しい。大画面のEM・ONEだからこそ、両立できる機能といえそうだ。
2007年、NTTドコモと日本テレビがワンセグを使ったクーポンの配信実験を行った。ワンセグのデータ画面にアクセスすると、コカ・コーラのCmode対応自販機でジョージアの缶コーヒーがもらえるQRコードが配信されるというもので、今回のイベントでもそのデモを再現して紹介していた。
この配信方式は905iTVでさらに進化し、ドコモのP905iTVとSH905iTVではワンセグを見るだけで、トルカを自動的に受信できるようになっている。将来的には、コンビニのPOSレジなどでもワンセグから配信されたトルカクーポンを利用できるようになる見込みだという。
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