例えば「合コンで便利」――高機能を生かす“Cyber-shotケータイ”のバランス感覚開発陣に聞く「SO905iCS」(1/2 ページ)

» 2008年03月26日 23時00分 公開
[荻窪圭,ITmedia]
photo 「Cyber-shotケータイ SO905iCS」。ボディカラーはSILVER、PINK、WHITEの3色

 ケータイのカメラ機能が当たり前になって何年にもなるが、考えてみたら、デジカメの人気ブランドを持っていて、ケータイも手がけているメーカーってたった3社しかない。「EXILIM」のカシオ計算機と「Cyber-shot」のソニーと「LUMIX」のパナソニックである。

 その1つ、ソニーがとうとうやってくれた。ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの“Cyber-shotケータイ”「SO905iCS」である。なぜ今Cyber-shotなのか、どこがどうCyber-shotなのか、そのあたりを中心に開発者にインタビューしてきた。登場したのは商品企画の石田氏を筆頭に総勢7名。賑やかな取材でありました。

Cyber-shotケータイの誕生

photo 商品企画担当の石田氏

 日本ではSO905iCSが初のCyber-shotケータイだが、海外では2006年から登場している(2006年3月に記事参照)。デジカメ先進国である日本での登場がなぜこの時期になったのだろうか。石田氏は、「日本でも早く導入したかったが、Cyber-shotケータイに最適な撮像素子の登場とユーザーのニーズがマッチしたのがこのタイミングだったから」と話す。

 ではまず、その撮像素子の話から聞いていこう。

 石田氏がいう“最適な撮像素子”というのは、SO905iCSに搭載されたCMOSセンサー“Exmor”(エクスモア)のことだ。ソニーが開発したExmorは、デジタル一眼レフの「α700」で初めて採用された。ケータイ向けのExmorは、SO905iCSが最初の搭載機器、というかCyber-shotケータイのために開発されていたものだ。

 SO905iCSが搭載するExmorは、1/3.2インチサイズで画素数は有効510万画素。その特徴は「ノイズが出にくくて明るいセンサーで、ExmorだったからこそISO1600という高感度までサポートできました」(石田氏)というもの。確かに高感度時の画質はケータイカメラとしては秀逸。ノイズも抑えられているし黒の締まりもいい。

 画質については、「(ソニーの)Cyber-shot部隊と画質を確認する会合を何度か開き、さまざまななシーンで撮影した写真を評価しながら絵作りをしました。SO905iCSでは特に、プリント時だけでなく液晶ディスプレイ上の見栄えも重視したことでしょうか。緑や青空がきれいに写る、室内での人物がきれいに撮れるような絵作りになってます。ケータイはデジカメに比べてちょっと派手目な絵作りが好まれるからです」(石田氏)。

photophoto プロダクトマネジャーの今崎氏(左)とデバイス開発担当の大森氏(右)

 画質を担当したのが、デバイス開発の大森氏だ。「デジカメに比べるとCyber-shotケータイの撮像素子は小さいですから、小さいなりにいかに力を出し切るかがポイントでした。実地検証のために、ひたすら写真を撮りまくりました。それをいろいろな専門家に見ていただいて、フィードバックをもらい、それにマッチするようCyber-shot開発部隊と我々で評価しながら作り込んでいます」

 Exmorのもう1つの特徴が“速さ”だ。「(SO905iCSの)Exmorは1秒間で約7.5コマ撮れます。5MモードでBestPicが達成できたのはExmorだからこそ」(プロダクトマネジャーの今崎氏)という。BestPicとは、シャッターを1回押すと9枚の超高速撮影を行い、そこからうまく撮れた写真だけを選んで保存する機能だ(2006年12月の記事参照)

 約1秒間に9枚撮るので、ちょっとした表情の変化も捉えられる。これだけ速ければ9枚全部保存する機能を付ければ強力連写機能になるのだが、5Mサイズの写真を9枚保存するとなると処理に時間がかかるため、今回は搭載しなかったという。

光学3倍ズームのレンズユニットをどう収めるのか

 SO905iCSは、この5Mセンサーを搭載しつつ、同時に光学3倍ズームを実現した。

 この光学3倍ズームは「Cyber-shot T」シリーズと同じく、折り曲げ光学系を採用している。正面から入った光がミラーに当たって90度曲がり、各種レンズを通って底にある撮像素子に当たるという仕組み。最初に90度曲げることで、レンズをボディ内に縦に納めることができ、レンズが前に飛び出ず薄くできる。ズーミングは内部のレンズの動きで行う。

 薄いとはいえ、レンズ直径分のスペースは必要で、ケータイに組み込むには非常に困難だったようだ。今回のレンズユニットはケータイ専用に設計されたものだが、中には7枚のレンズが縦に入っている。

photophoto SO905iCSに使われているレンズユニット。ちなみに、「SO905i」のレンズユニットと比べて約4倍の大きさだという

photophoto 機構設計担当の寺山氏(左)とデザイナーの鈴木氏(右)

 機構設計担当の寺山氏は「レンズユニットのダミーを見て、最初は大きくてあぜんとしました」と笑う。体積的には従来のケータイ用レンズユニットの4〜5倍、縦横で2倍ずつあるという大きさだった。でも「次の段階で映像のデモがあり、そこでExmorで撮れたきれいな絵や、BestPicの高速連写を見て、これはすごいカメラだなと感じた」という。

 「これをケータイの中に納めるのはパズルを作るようなもの。SO905iCSはW-CDMAとGPS、GSMにも対応しているので各アンテナ用のスペースも必要ですし、ステレオスピーカーもある。非常に大変でした。ある程度進めたところで、『カッコよくならないか』と鈴木さんに渡したんです」(寺山氏)。

 鈴木氏はSO905iCSをデザインを担当した。「普通、ケータイのデザインをするときは液晶ディスプレイのある側から、もちろん縦向きで始めます。今回はCyber-shotということで、レンズのある側から横位置を中心にデザインを始めました」(鈴木氏)

 Cyber-shotらしさを醸し出すのはやはり下にスライドするレンズカバー。「レンズカバーはCyber-shot Tシリーズの象徴的なデザインランゲージなので、カバーの厚さをうまく使っていかに開けやすくするかを考えてます。背面のデザインが終わったら次は表面ですが、そのメインディスプレイ側も撮影時にカメラらしく使えるよう、キー配置やデザインを考えました」(鈴木氏)

photophotophoto Cyber-Shotケータイ(SO905iCS)とCyber-Shot(T100)の比較。

インタフェースもかなり近い。左2つがCyber-Shotケータイ(SO905iCS)、右側2つがCyber-Shot(T100)。クロスメディアバー(XMB)による操作メニューはもちろん、機能を表すアイコンも同じデザインだ

 例えば、本体を横にしてカメラのように構えると、Cyber-shot Tシリーズのズームレバーと同じ位置にズーム用のボタンが来るし、十字キーの役割もCyber-shotに準拠している。鈴木氏は「Cyber-shotケータイなので、ケータイの部分を重視しながら、新しいものができないかにこだわってます」と話した。

 「Cyber-shotライクな感触を追求して、シャッターキーも何度も作り直しました。側面もカメラとしての顔を重視したので、シャッターキーの周りに余計なものは付けていません。今までのケータイのカメラは、撮られている方も『ケータイで撮られている』と感じてしまうんです。カメラじゃなくてケータイだから、被写体が尊重されてない。でもこれはケータイには見えません。ちゃんとデジカメで撮られていると感じてもらえます」(寺山氏)

Cyber-Shotケータイで体験できる“ユーザー体験”とは?

photo 外部メモリスロットのカバーには突起が付いている。開けやすいよう指をかかりやすくしたものだが、もう1つ役割がある。外部メモリスロットがある側面はカメラとして横置きした際に底になる部分。この出っ張りがスタンドの役目をして、セルフシャッターを使って離れた場所から撮るときにボディを安定させるのだ

 さて石田氏が冒頭で話した「日本でも早く導入したかったが、Cyber-shotケータイに最適な撮像素子の登場とユーザーのニーズがマッチしたのがこのタイミングだったから」という言葉にあった“ユーザーのニーズ”。これがCyber-shotケータイを語る上で重要なもう1つのポイントだ。

 ユーザーは単に、ケータイに「高画素のカメラ機能」を望んでいたわけではない。ケータイがもっとも得意とするコミュニケーション機能とカメラ機能の融合を望んでいるのだ。

 「このモデルは“どういうユーザーにどういう体験を与えるか”という観点から作り込んでいってるのです。今はSNSやブログという写真をコミュニケーションツールとして使っている方が増えています。そこでもっときれいに撮りたい、写真を共有したいというニーズが出てきたのが、このタイミングだったのです」(石田氏)

 ではCyber-shotケータイは具体的に何を持ってきたのか。この辺が面白い。例えば女性向け。

 「ケータイのインカメラを鏡代わりに使う女性が多いので、インカメラもVGAクラスにアップしてます」(石田氏)

 インカメラを鏡代わりに使うというのは、言われてみると確かに便利かもしれない。

 さらにインカメラの性能を上げたことを利用し、プリクラ風の写真をとる「デコフォト」機能を搭載した。

 この機能を入れるために、「プリクラみたいな機能を入れたい」と思った石田氏が開発陣を10数人引き連れて実際に写真シールを撮りに行ったという。それで、インカメラを使って派手なフレームやスタンプを使ったプリクラ風の写真を撮る機能が作られた。デコフォトではガイダンスを声で行うが、その声も4パターン用意。つまり“わいわいと遊びながら楽しんで撮る”という機能だ。

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