これはPCなのかケータイなのか、それとも──「WILLCOM D4」が開拓しようとする新市場(1/2 ページ)

» 2008年04月15日 11時43分 公開
[岩城俊介,ITmedia]
photo 左からインテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏、シャープ 代表取締役副社長 の松本雅史氏、ウィルコム 代表取締役社長の喜久川政樹氏、マイクロソフト 執行役常務の佐分利ユージン氏

 2005年12月に「W-ZERO3」で国内でスマートフォンカテゴリの礎を築いたウィルコムは、“Ultra Mobile”という新カテゴリでさらに新たな市場を開拓しようとしている。

 ウィルコムとシャープ、マイクロソフト、インテルの4社は、共同でWindows Vista+Centrino Atom搭載の“モバイルコミュニケーションマシン”「WILLCOM D4」(ウィルコム ディーフォー)を発表した。液晶デバイスを含めた端末製造はシャープ、OSはマイクロソフトのWindows Vista(Home Premium SP1)、プラットフォームはインテルのCentrino Atom(Atom Z520 1.33GHz)、通信機能は無線LAN(IEEE 802.11b/g クレードル使用により有線LANも利用可能)とBluetooth(v2.0+EDR)、そしてウィルコムのPHS通信(W-OAM対応W-SIM)。「業界を代表する4社だから実現できた」(シャープの松本副社長)製品として登場する。

 4月2日に行われたインテルのCentrino Atomプラットフォーム発表会でウィルコム代表取締役社長の喜久川政樹氏が宣言した「近々、世界最速のタイミングで発売する──」なるAtom搭載機「WILLCOM D4」は、モバイルPCとして遜色ない仕様とケータイとしての通信機能を備えるハイスペックマシンだった。

 ウィルコムは2001年に定額データ通信を導入、2005年に国内で初めてWindows MobileをOSに用いる「W-ZERO3」を発売した「日本でスマートフォン市場を開拓した通信事業者」であり、国内スマートフォン市場シェアの69.2%を占める(2007年10月時点)。2008年4月現在はau以外のキャリアもスマートフォン市場に参入したためにシェアはやや落ちた(Advanced/W-ZERO3[es]発表時に示した、2006年時点のシェアは約86%)ものの、依然、スマートフォン市場では大きな存在感を示している。

 そして、2.5GHz帯免許を取得し、2009年3月にサービス開始を計画する「次世代PHS」の利用ももくろみ、携帯各社に通信速度が劣る状況も打破したい考えだ。喜久川氏は「次世代PHSをW-SIMのインタフェースのまま対応するかはまだ未定だが、WILLCOM D4でもなんらかの方法で(次世代PHSに)対応させたいと思っている」と述べた。

photophoto WILLCOM D4を手にする喜久川氏。「重さは470グラムなので500mlペットボトルの水をひとくち飲んだくらいです」「このような女性が持つバッグに入れるのと同じくらいですね。私が(このようなバッグを)持つとかなりシュールな絵になりますが(笑)」と笑いを誘う一幕も
photophoto Windows Vista Home Premium SP1、Centrino Atomプラットフォーム、5インチSXGA液晶などを備える「WILLCOM D4」

 「PCの世界は、さまざまなテクノロジーの進化が使用スタイルの多様化を生んだことで、デスクトップからモバイルの方向へ移ってきている。ウィルコムは逆に、音声端末やデータ通信端末からスマートフォンの新マーケットを作った。さらに新しいマーケットを開拓すべく、ウィルコムとシャープ、マイクロソフト、インテルの4社はその概念を融合し、超えるような“Ultra Mobile”というアプローチで製品を開発した。それが“WILLCOM D4”だ」(喜久川氏)

 ウィルコムはWILLCOM D4の想定ターゲットに、これまでスマートフォンやデータ通信端末で開拓したような20代から30代のビジネスコンシューマや法人ユーザーに加え、学生をはじめとするPCをプライベートで使用するユーザー層も視野に入れる。また、「UMPCに近いものなので“電話できないの?”と心配された。当然ウィルコムは電話の会社なので、D4を使って通話することははじめから想定して開発した」(喜久川氏)という。

photophoto 「PCの世界ではいろいろなテクノロジーの進化が使われ方の多様化を生み出し、モバイルの方向へ移ってきている。対してウィルコムは、逆に電話機やデータ通信カードを世に出し、スマートフォンの新マーケットを作った。その概念を超えるのが新しい“Ultra Mobile”というアプローチだ」(喜久川氏)という

「真のユビキタス社会を実現できる」端末として

photo シャープの松本氏「WILLCOM D4は、真のユビキタスネットワーク社会の実現に貢献できる機種だと確信して送り出せる端末」

 W-ZERO3シリーズに続き、液晶ディスプレイを含めた端末製造を担うシャープ。同社は設立100周年となる2012年に向け、1)世界ナンバーワンの液晶ディスプレイで「真のユビキタス社会」を実現 2)省エネ・創エネ機器を核にした、環境・健康事業で世界に貢献する というビジョンを打ち立てた。

 インフラの大きな変化に応じて進化を遂げる昨今の通信端末は「異なるカテゴリの機器とも連携し新しい価値を見いだす“デジタルコンバージェンス”の時代が到来してきている」とシャープ代表取締役副社長の松本雅史氏。映像、通信、情報など業界の垣根を越えて技術を融合する場合、それぞれの業界の枠にとらわれない方法が必要になる。WILLCOM D4は、そのようなホーム/オフィス/モバイル(クルマなども含む)いずれのシーンでもおのおののスタイルで利用できることを特徴とする。

 「業界を代表する4社だから実現できた機種。WILLCOM D4は“デジタルコンバージェンスそのもの”であり、真のユビキタスネットワーク社会の実現に貢献できる機種だと確信して送り出せる」(松本氏)

photophoto
photophoto シャープは、同社が持つ液晶技術を軸にトータルの製品群と見立て、映像、通信、情報、その垣根を越えて融合していくことにより新しい価値を提供していく考えを示す

 WILLCOM D4のような新たな市場を狙う端末は、個々の企業の持つ技術、例えば最先端のCPUや液晶技術、OSだけでは実現できない。端末に通信料金プランまで含めた新しいビジネスモデルとして構想することで、それが普及する引き金にもなる──これが4社の共通した考えだ。

 ウィルコム、シャープ、マイクロソフト、インテルの4社は、2005年にW-ZERO3でモバイルコンピューティングにおける新しい形を提案。2007年11月、業界の枠を超え、各社の持つ機器や技術、コンテンツサービスを相互に連携し、新しいデジタルライフスタイルの創造と利用シーンを提案する団体「ウィンドウズ デジタルライフスタイル コンソーシアム」(WDLC:マイクロソフト執行役専務の眞柄泰利氏が会長)も発足した。WDLCにはマイクロソフト、ウィルコム、シャープ、インテルを含めたハードウェア、ソフトウェア、通信事業者、コンテンツプロバイダら66社(2008年4月現在)が名を連ねる。

photophoto マイクロソフトの佐分利氏(左) インテルの吉田氏

 「現在、携帯性や利便性はもちろん、デザイン性も含めてモバイルコンピューティングを実現する端末への要求が高まってきていると感じるが、WILLCOM D4はこのニーズに合った1つの形だと確信している。WILLCOM D4は、WDLCの成果の1つで重要な第1歩。それを代表するようないい製品に仕上がったと思う」(マイクロソフト 執行役常務の佐分利ユージン氏)

 「昨今、生活の中でさまざまな形でインターネットが使われているが、モバイルインターネットの革命的な進化は“今日から、まさに始まる”と思う」(インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏)

 このように4社共同の発表としたことで、WILLCOM D4に対する意気込みがいっそう強く感じられる。

photophoto インテルの吉田氏が掲げるAtomプロセッサ。WILLCOM D4はAtom Z520 1.33GHzを搭載する
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